著者 | 佐々木俊尚 |
出版日 | 2022年1月28日 |
難易度 | 易しい |
オススメ度 | ☆ |
ページ数 | 約369ページ |
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本の概要
この本は、ジャーナリスト・作家である著者が、自身が日々実践する情報のインプット・テクニックを披露するビジネス書です。
優秀なスマホアプリやネットの有料サービスを駆使し、どのように質の高い情報をコンスタントに吸収するのか実用的な手法が紹介されています。
本以外のアナログメディアはほぼ排され、あらゆる情報をデジタル化してクラウド上で管理することに主眼が置かれている点が特徴です。
ライフハック的なテクニック集がメインで、自分に役立ちそうなテクニックを摘 むためのマニュアルのような内容なため、一冊の本としては読み応えは薄めです。
デジタル時代のインプット・マインドを学ぶ
この本は、ツイッターなどのSNSやフィードリーのようなRSSリーダー、Googleカレンダーやメモアプリなどを駆使し、日々の情報収集を効率化するという巷によくあるライフハック系のテクニックの寄せ集めのような本で、正直あまり目新しい情報はありませんでした。
それどころかミニマリスト的には一つのタスクに対して専用のアプリやらブラウザソフトを割り当てる煩雑なテクニックが多く好ましく思えません。
むしろこの本に書いてあるテクニックを実践したら効率が悪化しそうです
本の中で最も興味深かったのが、なぜ日々ネットはじめ多様なメディアで大量の情報に触れる必要があるのかという理由について、様々な専門家の視点を獲得するためとある点です。
各ジャンルの専門家の意見も、ドストエフスキーのような文豪が書いた古典文学でも、大事なことは視点の獲得であり情報それ自体ではないという考え方はその通りだと思います。
これは自分がオタクとして大切にしてきたインプット術とほぼ同じような考え方でした。
美しい映画を撮る映画監督がいたらその人の過去作を片っ端から見ることでその映画監督がどんなものに美を見出すのか、その感性を抽出し自分の脳内にその人と同じ回路を埋め込むことでその人と同じように世界が見えるようにするという、自分が何十年にもわたりひたすら繰り返してきたテクニックとまったく同じものであり、言わんとしていることがすんなり理解できます。
小説家、画家、漫画家、アニメーター、映像作家、ゲームデザイナー、作曲家と何百人分のクリエイターの美意識を自分の脳内に取り込むことで、自分一人だけの感性なら到底理解できないような対象にまで脳内の疑似クリエイター回路を駆使することで美を探り当てることが出来るようになります。
この専門家の視点の獲得という目的を欠いた情報収集はただ情報を右から左に流すだけの無意味な行為でしかなく、様々な専門家の日々のつぶやきに触れ続けることで専門家の視点を獲得し、専門家の目で世の中を観察できるようになることこそが情報収集の目的であるというこの本の主張は共感できました。
エンタメも同じで映画を何百本見ても何の意味もありません。クリエイターの美意識を吸収し自分の身体の一部に組み込むという意識のない作品視聴は全て時間の無駄です
おわりに
ライフハック系の本としてはイマイチですが、情報収集の目的は視点の獲得であり専門家の目を自身に取り込むために日々大量の情報に接する必要があるという考え方は腑に落ち、読んで損はありませんでした。
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