著者 | 藤岡換太郞 |
出版日 | 2014年10月20日 |
難易度 | 普通 |
オススメ度 | ー |
ページ数 | 約224ページ |
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本の概要
この本は、川が出来るメカニズムを解説するという内容で、全体が3部構成で出来ています。
第1部は、世界中に存在する謎多き川に関する解説です。
川は高いところから低いところに流れるという常識を破壊する標高4000メートルのヒマラヤ山脈を乗り越える脅威の川や、元々は近い川なのに途中から北と南に別れ途方もない距離を迂回し海に達する中国の黄河と揚子江 、アマゾンにある黒い川や白い川の色に関する秘密、海水で満たされた海の底を流れる不思議な川など、川に関する13の謎が語られます。
この1部は奇妙な川の紹介と同時に、川に関する基本的な用語や見方を説明する導入パートにもなっており、読むことで自然と川の基礎知識が学べる内容です。ただ、一つ一つの解説が体系的な学問というより断片的な雑学を読むような浅い手応えしかなく、深い理解には至りません。
第2部は、多摩川を源流まで遡 り、一滴の雨が地上に落ちそれがやがて川となり上流・中流・下流と下り海まで至る一連の流れを追うことで、川の誕生から終わりまでを体感するというコンセプトです。
これは1部で学んだことのおさらいにもなっており、多摩川の流れをひたすら追いかけることでこれまでの知識を総括するようなパートとなっています。
第3部は、1部と2部で学んだ川への知識を踏まえ、著者が唱える大胆な川への仮説が語られるというほとんど番外編のような内容です。
これは仮説が正しいかどうかということより、読者にこれくらい川へ興味を持ち自分なりの川に対する想像力を養って欲しいという著者の願いが込められた仮説作りのレクチャーのようものです。
ここで披露される、日本の天竜川の源流は実はロシアにあるのではないかという仮説はそもそもこの本を書くキッカケになったらしく、学者がどのように日々仮説を思い付き、その着想が本になるのか思考を追体験する楽しさもあります。
全体的に面白いは面白いものの、同じ著者が書いた『山はどうしてできるのか』や『三つの石で地球がわかる』を読んだ際の知的興奮に比べると遙かに物足りません。単に様々な本から寄せ集めた雑学を読まされるような薄さで、あまり川について理解が深まったという実感はありませんでした。
世界中の謎多き川を巡るミステリーツアー
この著者は地球科学を素人にも平易な言葉で解説してくれるため『山はどうしてできるのか』と『三つの石で地球がわかる』の2冊を読んでいますが、この本はそれらに比べるとイマイチでした。そうは言っても得られる知識は無数にあります。
この本で最も驚いたのが、川が大きく蛇行する場合、実は遙か地面の底にある大陸や島を形成する細かいプレート群が地形に影響を与えているケースがあることです。細かいプレートがくっつき巨大なプレートを形成するという話は『山はどうしてできるのか』にも何度も登場し、そのおかげで一度読んだだけでスムーズに内容が頭に入ってきました。
この、川や山といった目の前に見える地形を読み解こうとすると、地面の遙か下で活動するプレートの知識が必要になるという途方もないスケールは地球科学の醍醐味だと思います。
それ以外の川に関する記述も、他の本と同様に川という普段見慣れた光景に対し科学的な視点を持ち込むキッカケにはなります。しかし、とにかく全体的に細かい説明の歯切れが悪く痒い所に手が届きません。よく分からないとか、規模が大きすぎて調査できないといった若干投げやりなものもあり、肝心のもやもやが晴れません。分かるまで何度も読み直そうとしても理解できず、諦めて先に進むということがけっこうな頻度でありました。
川が理解できる本ではなく、川に関する調査・研究が圧倒的に不足していることが分かる本ですね
本全体の構成もあまり工夫がなく、標高4000メートルのヒマラヤ山脈を乗り越える川の謎など、一番興味を惹く謎の答えを最初にずらっと羅列してしまうので、最初は理解できなかったものが本を読み進めるうちに知識が自然と身に付き分かるようになるという知的興奮も無く、味気ないです。
多分、著者側に何が何でも伝えたいことがあるワケではなく、『山はどうしてできるのか』、(未読ですが)『海はどうしてできたのか』と来て今度は川でしょという程度の軽い動機で書かれたようにしか思えず、そこまで本から情熱を感じませんでした。
逆にこの著者の最初の一冊がこれだったら他の本には手を出さなかったと思うので、読む順番が後だったのは幸運だと思います。
最後に
川は水が大地に残す足跡のようなもので何万年前の足跡がそうそう地面に残っていないように川の流れも頻繁に変わり研究が極めて困難なことや、『山はどうしてできるのか』にも登場した巨大な大陸を形成する細かいプレートの接合部が川の流れに影響を与えることはじめ、有益な情報はいくつもありました。
しかし、全体的に借り物の知識で書いたような、何かの本の引用を延々読まされる味気なさが気になり、他の本に比べそこまで熱中することはありませんでした。
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