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ビジネス読書と教養読書の使い分け術 「外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術」 著者:山口周 〈書評・レビュー・感想〉

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本の情報
著者 山口周
出版日 2015年10月20日

本の概要

 
 この本は、ビジネスパーソンの読む本には、古典のビジネス書のように即仕事に役立つ本と、直接仕事には繋がらなくても自分の個性を形成する未来への投資として必要な教養書を読むという二種類の読書があるという内容のビジネス書です。
 
 二つの読書タイプの中でも、古典のビジネス書のほうは読み方の指南は特にされず、著者が強くオススメするビジネスパーソンなら絶対にこれだけは抑えておくべき名著が網羅されるのみで簡易的なブックガイドとして利用できます
 
 重要なのは自分の個性を形成する教養書の選び方・読み方のほうで、本屋での探し方や読んだ後に良かった箇所をどのようにデジタルデータ化して保存し検索機能を持たせるのかといった解説がされます。
 
 この、一見目的とは関係ない教養書を読むという行為により個性が形成されるという考え方はビジネスだけでなく趣味の分野にもそのまま応用できるため、ビジネスパーソンでなくとも学びの多い一冊です。
 

決して目先の金儲けに走らず、知のネットワークを築く

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 この本は、山口周さんが繰り返し主張する、行動をマニュアル化・ルーチン化せず偶然の出会いやフィーリングを大切にし、本来ビジネスとはまったく関係ないアートや教養にも時間や手間をかけ、自分独自の感性を磨くべきという持論が読書術という形で紹介されています。
 
 読書術と言っても、時間がない人が短時間で本を斜め読みしながら要点だけ抽出していく方法で、じっくり時間をかけ一冊の本を味わい尽くしたい自分とはまったく相容れず、この部分はあまり参考になりませんでした。
 
 それに、読んだ本をデジタルデータにしてノートアプリであるエバーノートに保存し検索機能を持たせるというテクニックも『情報は1冊のノートにまとめなさい』を簡略化したようなアイデアで、それほど目新しいとも思えません。
 

読んだ本の内容をPCに転記し検索できるようにするという工夫は10年以上前から実践していますが、時間と手間がかかって本当に面倒なのが難点です

 
 それ以外も、得た情報から枝葉の部分を切り落とし、どんなケースにも応用できるように抽象化しないとダメという話は『メモの魔力』に書かれていることとほぼ同様で、他のビジネス書と主張が被る箇所も多くあります。
 
 しかし、ビジネス書と教養書の読み方を明確に分けるべきというアイデアは初めて目にするもので、この本の中でもっとも為になりました
 
 実際に仕事に必須なビジネス書は本当に役に立つものだけを厳選し読み込むことで内容を丸暗記し、教養書は逆に役に立つかどうかは度外視しその時の気分で制約を設けず好きな本をのびのび読むべきという考えは、仕事のみならずそのまま趣味にも応用できる優れたアイデアだと思います。
 
 ここで言うビジネス書とは自分の仕事に役立つ実用に特化した本のことで、教養書とはそれ以外の全ての本を指し、別段歴史、政治、経済、アート、哲学といったリベラルアーツを扱うような堅い本のことではありません。
 
 自分のセンスに引っかかった本のみを好きに乱読することで、体がどんな知識を欲しているのか把握でき、しかも自分の感性に強く訴えてくる本だけを読むことで他人とはまったく異なる知のネットワークが脳内に形成され、それが自分自身の強烈な個性となり未来への投資になるという考え方は読んでいてワクワクします。
 
 言われてみると確かに自分とは比べものにならないほど賢いと思う人は情報の繋げ方に癖があることが多く、本来全く関係してない分野の知識を平気でくっつけてしまう突飛な発想に驚かされる場合が多々ありました。それは、この本に書かれているような自分独自の知のネットワーク構築を長い時間をかけて行っているからと考えると腑に落ちます。
 
 これはビジネスだけでなく趣味にでも何にでも応用可能な考え方で、この勉強法が学べただけでこの本を読んで良かったと思います。
 

最後に

 
 自分の場合、読書をしている際に時折「こんな実生活に何の役にも立たない本を読むことになんの意味があるのだろうか?」と悩み不安に駆られることがしばしばありますが、この本が主張する教養書は未来への投資であり短い期間でリターンを求めてはいけないという考えを知ることができ、幾分か心が軽くなりました。
 
 読書の際、過剰に意味を求めてしまい、せっかくの贅沢な読書タイムに不安がちらついてしまう人間にとってこの本は救いになります。