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植物はなぜ薬を作るのか 著者:斉藤和季 〈レビュー・感想〉 植物は万能薬にあらず

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植物や薬へのイメージが変わる植物の啓蒙本

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 この本の内容は、植物が生成する薬の原料となる化学成分にはどのような種類があるのか、植物はそもそもなぜ薬として利用できる化学成分を体内で生成するよう進化するに至ったのかという解説。そして、そこから導き出される植物(自然)は人間に恵みを与えてくれるものという勝手な思い込みをひっくり返す、植物が外敵に対して備えた攻撃的な防衛機能こそが薬として有用な成分になるという事実が明らかになるというものです。
 
 この本は植物や薬へ漠然と抱いていたイメージが一変するほど刺激的ですが正直あまり読みやすくはありません。植物が体内で生成する科化学成分やその働きに対する堅めの説明が本の大半を占め、タイトルである『植物はなぜ薬を作るのか』という説明の核心部分は一章程度で済むほどあっさりめです。
 
 それでも、なぜ植物が人間が使用する薬の元となる化学成分を体内で生成するように進化したのかという話は目から鱗なほど面白く、ここだけでこの本を読んで心底良かったと思えるほどの内容でした。
 
 読んでいて最も心惹かれたのは、やはり薬の元となる成分というのは、そもそも植物が自分を捕食しようとする外敵から自己を防衛するために生成されている攻撃的な成分という部分です。
 
 一部の植物は、自身を捕食しようとする他の生物に対し防衛のため相手を殺す毒や、神経を麻痺させる成分、相手の細胞分裂を止めることで死に至らしめる成分を体内で生成し蓄えています。この成分を植物から抽出し人間に害が出ないよう改良し薬として利用すると、人間に害をなす細菌を殺す薬になったり、神経を麻痺させて痛みを和らげる麻酔になったり、がん細胞の分裂を阻止する抗がん薬になったりと、人間にとっての薬へと変貌を遂げます。
 
 つまり、薬として効果が高い化学成分を生成する植物というのは、自己防衛のために自身を傷つけようとする捕食者を苦しめたり殺したりする有毒な成分を体内で生成するよう進化を遂げた、毒性が強い植物が多いということ。
 
 この本を読むと、地に根を張り自ら移動する手段を捨てた植物は、長い時間をかけて体内で外敵に対する強力な毒性を持った化学成分を生成するように進化し、その成分を抽出すると今度は人間を害する病原菌などを殺す薬にもなるという、いかに薬というものが攻撃性に特化しているものなのかが分かります。
 
 抗がん薬が、がん細胞と同時に健康な細胞も区別せず分裂を止め殺してしまうように、薬を摂取しすぎると危ないというのはこういうことなのかと理解できました。
 
 植物が太古の昔から生存のため体内で生成し進化させてきた強力な毒を人間は自分たちの外敵を殺すために抽出して利用するという共存関係はやや恐ろしくもあり、この本を読むと植物(自然)が地球からの恵みであるかのような錯覚は消し飛んでしまいます。
 

最後に

 
 薬のこと以外も、植物にまつわる話は面白い物が多くあり、読む前と後で植物に対する見方が変わってしまうほどためになる一冊でした。