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雀蜂(スズメバチ) 著者:貴志祐介 〈レビュー・感想〉  珍作パニックホラーコメディ

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評価:75/100

作品情報
著者 貴志祐介
発売日 2013年12月

短評

 
 大量のスズメバチが飛び交う山荘でコミカルなサバイバル劇が展開されるというアイデアはそこそこ魅力があるが、ヤケクソで作ったような雑さが目立ち、面白さや緊張感が長続きしてくれないという問題がある。
 
 ラストのオチもトンデモ展開で読後の後味はあまりよくはない。
 

短編だったら許されるも中編だと辛いオチ

 
 この小説は、そこそこ成功している小説家が人里離れた雪山の別荘(山荘)で目覚めるとなぜか室内には季節外れの大量のスズメバチがおり、その中を日用品を利用してサバイバルしていくというパニックホラー小説です。
 
 序盤はヒッチコックの『鳥』のような動物(もしくは昆虫)パニック映画のスズメバチ版みたいな設定で楽しいなと思いながら読み始めたのに、最後は悪い意味で星新一ショートショートみたいなキツネにつままれたような奇抜なオチになり釈然としない読後感にイマイチ納得がいきませんでした。
 
 同じ貴志祐介さんの『エンタテインメントの作り方』という本を読み直すと、この小説は一度最後まで書き上げてからオチに納得がいかず犯人を変えたと書かれており、それを踏まえるとおかしい部分にも納得がいきます。
 

 
 この小説は登場人物が数人(実質は主人公一人のみ)なので多分最初はwhyダニット系の犯人の動機がなんなのかというシンプルな話だったのを犯人そのものをひねった結果まとまりがなくなってしまったのだと思います。
 
 唐突すぎる印象を受ける冒頭のドッペルゲンガーが登場する夢の話など、ところどころ明らかに後付けで加えたであろう部分もあり、全体的に作り込みの甘さが目立ちます。
 
 それに設定の制約上、あまりスズメバチに大胆なことをさせられず、危機的状況がいくらなんでも地味すぎるという問題もあり、スズメバチの脅威にある程度慣れてしまう中盤くらいからはダレてしまい緊張感がありません。
 
 そもそも、ジャンル自体サバイバルホラー小説と言っても映画でいうとゾンビもののパロディである『バタリアン』みたいなコミカルなタッチが強めで、怖いというよりもドジな主人公の失敗で笑わせようとする場面が多く、読みやすい反面話が軽くなりすぎて読後に何も残らないという問題もあります(途中もろにバタリアン一作目の階段シーンのパロディみたいなことが起こる)。
 
 短編集の中の一作がこのノリとオチだったらまだ許せるものの、さすがに中編でこのヤケクソで作ったような完成度だと物足りません。
 

最後に

 
 まず99.9%ラストでガッカリするので、オチがキレイに纏まるミステリーではなく、スズメバチに追いかけ回されるコミカルタッチなサスペンスと割り切って読まないとキツイものがあります。