著者 | 貴志祐介 |
出版日 | 2013年12月 |
評価 | 70/100 |
オススメ度 | ー |
ページ数 | 約236ページ |
小説の概要
この作品は、小説家の主人公が人里離れた雪山の別荘(山荘)で季節外れのスズメバチに襲われるパニックホラー小説です。パニックホラーといっても怖さは控えめで、室内にある日用品を利用してスズメバチと戦う様をコミカルに描く、コメディのような作風です。
大量のスズメバチが飛び交う山荘でコミカルなサバイバル劇が展開されるというアイデアはそこそこ魅力的ですが、ヤケクソで作ったような荒さが目立ち、面白さや緊張感があまり長続きしないという欠点もあります。
ラストのオチもトンデモ展開なため、読後の後味は決してよくはありません。
短編だったら許されるも中編だと辛いバカバカしいオチ
この小説はヒッチコック映画『鳥』のような動物(もしくは昆虫)パニック映画のスズメバチ版みたいな内容かと思いきや、作風がかなりコミカルなので当初のイメージとはまったくの別物な作品でした。
パニックホラーといっても映画でいうとゾンビ映画のパロディである『バタリアン』みたいなタッチなため、怖いというよりもドジな主人公の失敗で笑わせようとする場面が多く、読みやすい反面話が軽すぎるという欠点もあります。
途中に『バタリアン』一作目の階段シーンのパロディみたいなことが起こった際は笑いました
しかも、最後は悪い意味で星新一ショートショートのようなキツネにつままれたような奇抜なオチが待ち受けるため、釈然としない読後感に納得がいきません。
同じ貴志祐介さんの『エンタテインメントの作り方』という本を読み直すと、この小説は一度最後まで書き上げてからオチに納得がいかず犯人を変えたと書かれており、それを踏まえるとおかしい部分にも納得がいきます。
この小説は登場人物が数人(実質は主人公一人のみ)なので多分最初は犯人がなぜこのような犯行に及んだのかというwhyダニット系の動機がキーとなるシンプルな話だったのを、犯人そのものの正体をひねった結果まとまりがなくなったのだと思います。
あまりにも唐突すぎる冒頭のドッペルゲンガーが登場する夢の話など、ところどころ明らかに後付けで加えたであろう部分が散見され、全体的に作りが安易な部分が目立ち、小説としての完成度は高くありません。
それに、スズメバチというあまり人間側の思い通りに動いても不自然な生き物を脅威とする設定の制約上、スズメバチ側に読者の予想を超えるような大胆な動きも加えられず、危機的状況がいくらなんでも地味すぎるという問題も発生しています。
そのため、スズメバチの脅威にある程度慣れてしまう中盤くらいからはダレてしまい緊張感がありません。
短編集の中の一作がこのノリとオチだったらまだ許せますが、さすがに中編でこのヤケクソで作ったような完成度だと不満しかありませんでした。
最後に
まず、読む人の99.9%がラストでガッカリするので、オチがキレイに纏まるミステリーではなく、スズメバチに追いかけ回されるコミカルタッチなサスペンスと割り切って読まないとキツイものがあります。
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