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【ビジネス書】現代を生き抜くためのヒントが詰まった一冊 |『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』| 西野亮廣 | 書評 レビュー 感想

本の情報
著者 西野亮廣
発売日 2017年10月4日
難易度 易しい
オススメ度

本の概要

 
この本は、お笑い芸人であり絵本作家でもあるキングコングの西野亮廣さんのエッセイ形式で書かれたビジネス書です。
 
自身が作った『えんとつ町のプペル』という絵本をモデルケースとし、現代においてコンテンツを作る際にはどのようにお金を集め、それをどう広く売って収益を出すのかという方法論を語るという内容です。
 
著者が分業制の絵本作りや独演会のトークイベントで行ってきた、自分たちが作ったコンテンツをどのように多くの人に届けるのかという失敗エピソード込みの体験談は非常に刺激的でした。
 
ただ、冒頭は、書かれていることが前著である『魔法のコンパス』と重複する箇所が多くあり新作というよりは『魔法のコンパス』のアップグレード版といった内容なことや、一部主張が被っている割にページ数がやや少ないという不満もありますが、ブロガーとしては非常に得るものが多い良著でした。
 

冴え渡る自己分析芸

 
西野さんの本を読む魅力は何かと言ったら、もはや芸の域に達していると言っても過言ではない自己分析の面白さです。
 
芸人らしく失敗も思い違いも無知も全て赤裸々に告白するので誠実さが伝わり嫌味が一切ありません。
 
自己分析をキッカケに、自分の努力の方向性が本当に正しいのか疑い、間違っていれば言い訳せず即刻変える。そこから、コンテンツを作る際に常識とされる慣習へと疑いの目を広げ、ネット社会以前に作られた形骸化したルールは問答無用で変えてしまうという大胆さは読んでいて痛快です。
 
この努力の方向性が本当に正しいのか、自分が属する業界のやり方が時代遅れになっていないかと常に根本部分を疑うという姿勢が、あらゆる物作りにそのまま応用できる考え方で、タレントのエッセイ本としてでなくビジネス書としても通じる普遍性があります。
 
絵本を描く際にそれまでの絵本業界の常識を疑い、絵本の作り方そのものを変えてしまうという試みや、宣伝に既存のメディアを介さずSNS時代に相応しい口コミで話題作りをする作戦や、コストが掛かる流通に乗せず自身のファンにダイレクトに作品を届けるやり方など、全て体当たりで挑戦してきたことばかりで現場の空気がこと細かに伝わってきます。
 
ただ、前作の『魔法のコンパス』でも感じた、芸能人としてある程度名前や顔が売れているという状態を前提にしたテクニックが含まれ、無名の人間では真似できない試みも多くあります。それに実体験に基づく深い考察もあればその場の思い付きのような浅い論も見受けられ書かれていること全てが有用というわけでもありません。
 
しかし、それを差し引いても充分この本に書かれていることは有益であり、物を作ろうとかブログで何かを伝えたいと思う人は読んで絶対に損はないと思います。
 

デザイナー時代の到来

 
この本はクラウドファウンディングやSNSといった、現代のお金の集め方や口コミベースの宣伝の仕方、好感度ではなく個人の信用を高めることが重要というビジネス書的な側面が強いのと同時に、西野亮廣という一人の人間がどう自身の人生をデザインしているのかを端的に説明する名刺でもあり、普段メディアではほぼ見せないデザイナーとしての西野さんを発見することが出来ます。
 
この本そのものが芸能人として好感度を上げるためではなく、個人の信用を得るために機能するよう書かれているのも特徴で、芸能人のエッセイとしては破格な戦略性が窺えます。ファンが読むことはもちろん、ファンでない人に自分の考え方を丁寧に伝え、仲間を増やそうという意図もあり、これからのお笑い芸人は西野さんのような自分自身をデザインし売り込んでいける人でないと生き残っていけないなと思います。
 
この本を読んで改めて、個人がSNSでセルフプロデュースを当たり前のようにする時代において、ただのお笑い芸人やアイドルタレントよりもデザイナーの資質をより持つ人のほうが自分の人生プランをより魅力的に演出でき生存率がぐっと高まるなと思いました。
 

最後に

 
お笑い芸人が書いた本と侮って読まないと後悔するほど、これからの時代で大切になることが書かれた一冊でした。
 
キングコングの西野亮廣さんという人が普段どれほど新しい事に挑戦し続けているのか知ることができ、むしろ西野さんにマイナスの印象を持っている人にこそオススメです。
 
 

 

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