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【ホラー・ミステリー小説】繋がる、5つの怪異譚 |『どこの家にも怖いものはいる』| 三津田信三 | 感想 レビュー 書評

作品情報
著者 三津田信三
出版日 2014年8月10日
評価 80/100
オススメ度
ページ数 約349ページ

小説の概要

 
この作品は、別々の人物が体験したどこか共通点がある怪異や怪奇現象についての5つの怪異譚が語られ、その5つの出来事の繋がりが徐々に明らかになっていくというホラー・ミステリー小説です。
 
まったく別の人物が体験した恐怖の出来事が実は裏で繋がっているというアイデアは三津田信三作品の中では『のぞきめ』と非常に近く、『のぞきめ』を読んでいるとあまり驚きはありません。
 

正直『のぞきめ』をやや薄めたような感じです

 
一応は長篇小説ですが、実際は1つ1つのエピソードが短いためどちらかというと連作短篇に近い感触です。
 
相変わらず三津田信三作品なので面白さはお墨付きで読んでいて退屈ということはありませんが、どうしても1つ1つのエピソードが短くあっさりしているせいで怖さも謎解きの快感も控え目でした。
 

メタ視点が中途半端

 
この小説は、主婦が新居で体験した怪事件を記録した日記、謎の少年が怖ろしい怪異と遭遇した出来事が書かれたノート、過去に住んでいたアパートで体験した怪奇現象についての回想が記されたネットの書き込みなど、様々なメディアから蒐集しゅうしゅうした類似性が見受けられる5つのエピソードが徐々に繋がっていくというストーリーです。
 
これは、同じ作者の別々の人物から聞いた2つの怪談が実は裏で繋がっていたという『のぞきめ』と非常によく似たアイデアで、正直『のぞきめ』を読んでいると新鮮さは特にありません。
 

作者自らが登場して謎解きを披露するという点もほぼ同じです

 
さすがに、読者を一瞬で魅了するアイデア力に関しては隙なしである三津田信三作品なので、読み始めると止まらない中毒性はいつものことでした。
 
ただ、それぞれの話の繋がりを読者の想像に委ねてくれた『のぞきめ』に比べ、こちらは作者がエピソードごとの関連性をべらべらと語り続けるので正直説明くさくて好きになれません。
 
それと作者自身が自作に登場し探偵役を務めるのはいいとしても、本作はやたら作者の他作品に関する言及が多く、その小説を読んでいないと意味が分からないものや単純に不必要と感じる部分もあり、もっと本編の話に集中して欲しいと不満を感じることも多々あります。
 
メタ視点部分の中で一番不満だったのが、作者に怪異譚をもたらす知り合いの編集者に一つも面白味がないことです。
 
『のぞきめ』では作者に怪異譚を教えてくれる人物の一人はかなり癖がある油断ならない相手として描かれていたのでやり取りに程よい緊張感がありました。しかし、こちらではただの作者の熱心なファンの同業者といった立ち位置で人物像になんの特色もなく、最初と最後で人物に対する印象がひっくり返るような工夫もないため、この人とのやり取りは平板でした。
 
せめて多めにメタ視点を入れるなら、現実の作者周りのやり取りにも多少のサスペンス性や軽い謎解きくらいは入れてくれないとただメタ視点にしただけであまり効果的とも思えません。
 

ホラーやミステリーも中途半端

 
この『どこの家にも怖いものはいる』という小説は、さほどボリュームがないのにも関わらずエピソードが5つと多いため単純に1つ1つの出来事の印象が薄く、あまり話として深みがありません。
 
このエピソードを小分けにしてしまったことはどちらかというとマイナスで、特に5つの中で一番重要であるはずの怪異譚の大元となる話がただのその後の怪奇現象に対してこじつけのようになってしまっており、この話が5つの中で最も退屈という本末転倒さが残念でした。
 
そもそも、ホラーとしては粘つくような怖さが足りず、途中で格子の向こう側の世界に行こうとしたら失敗して頭が壁にめりこんでしまった部分などあっさり流してしまい、三津田信三作品にしては登場人物が勝手に怖がっているだけで読者までその恐怖が伝染してこず、どうしても物足りなさを感じます。
 
ミステリーとしての謎解きもイマイチで、これは『のぞきめ』を読んでいると余計そのような感想を抱きやすいと思います。なぜなら『のぞきめ』で最初からオープンにされている情報がこちらでは核心部分の謎として扱われており、読んでいて「謎ってその部分だったの?」ときょとんとする羽目になりました。
 
個人的に、何度も作中の怪異譚に登場する増えたり減ったりする部屋の謎に関しての解答が読みたかったのにそこはスルーされ、あまり興味がなかった箇所の謎解きに長々と時間が割かれるため、もやもやしたまま終わった感があります。
 
それに、いつもなら怪異の仕業と思っていた異常な現象が実は人為的なものだったというひねりがあるのに、本作に限っては怪奇現象は全て怪奇現象として処理され、その点もミステリーとしての謎解きの快感を損ねる原因の一つだと思います。
 
それ以外も、具体性に欠ける仮説の域を出ないような想像だけで謎を解いたことにされる箇所が目立つなど、ホラーとしてもミステリーとしても中途半端な出来でした。
 

おわりに

 
メディアが異なる5つの怪異譚が繋がっていくという、毎度ホラーとミステリーを融合させたアイデアで読者をメロメロにする三津田信三作品なのでつまらないということは一切ありません。
 
ただ、全体的にアイデアが剥き出しのままで肉付けが足りないためどうしても話に深みがなく、読み終わるとこんなものかという感想を抱きやすい弱点も他作品と共通しています。
 
特に本作は『のぞきめ』と根本のアイデアが似ており、しかも怖さも謎解きの快感もそれ以下なため、どうしても『のぞきめ』を薄めたような小説という印象が拭えませんでした。
 
 

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