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【サイエンス】植物と数学のふしぎな関係 |『面白くて眠れなくなる植物学』| 感想 レビュー 書評

本の情報
著者 稲垣栄洋
出版日 2016年4月22日
難易度 普通
オススメ度 ☆☆
ページ数 約182ページ

本の概要

 
この本は、木や花、果物や野菜といった植物全般の雑学が紹介されています。
 
植物学らしく植物は数学的な法則で葉や花が作られるといった軽くアカデミックな話題から、カフェインは人間にとって毒物なため体に入ると毒への反応で緊張状態となり眠気覚ましになるといった日常の豆知識まで、植物に関する幅広い雑学が学べます。
 
ただ、植物学の本といっても子供が読むことも想定しているのか全体的に広く浅くの内容なので深く学びたい場合はさすがに物足りません。
 

数学とは美そのもの

 
この本を読もうと思ったキッカケは『ヒロシのぼっちキャンプ』という、お笑い芸人のヒロシが勝手気ままにソロキャンプを楽しむという番組にドハマりしたことでした。
 
『ヒロシのぼっちキャンプ』を見続けていてふと気付いたのは、いつの間にか樹木の美しさに魅了されていたことです。キャンプ番組なのにキャンプや料理よりも背後の木々の美しさのほうに惹かれ、なぜ木ってこれほどまでに長時間眺めても飽きないのかと興味が湧き、この本を読みました。
 
すると、いきなり冒頭で植物にはフィボナッチ数列という数学の法則が隠れており、フィボナッチ数列は最も美しい数学比率とされる黄金比と関係しているという説明がされゾクゾクしました。
 
自分は植物というより植物の中に隠れていた数学的な法則性を美しいと感じていたのだと気付き、なぜこれほど木に魅了されるのか理由の一端が分かったような気がします。
 
しかも、光合成のために光が満遍まんべんなく当たるような間隔で葉が生えた状態がフィボナッチ数列になるという話も衝撃でした。数学的な法則性に従うと、黄金比の美しさを獲得するだけでなく植物としての機能性を完璧に満たした状態になるという話は植物だけでなく数学に対する認識までガラリと変化します。
 

数学とはこれほど人間の美的感覚と密接に関係した学問だとは知りませんでした

 
それ以外も、植物にハート型の葉が多いのは、ハート型の形状が最も効率的に葉の面積を大きくすることができ光合成を行う際に有利など、植物に備わった数学的な特徴にまつわる話はどれもこれも刺激的です。
 
漠然と木ってなぜ美しいのだろうか?くらいの軽い気持ちで読んだらいきなり一冊目の本の冒頭で「植物は数学(フィボナッチ数列)で出来ているから黄金比が隠れている」と、答えらしいものに出会えたのは非常に幸運でした。
 

植物の中に創造主の影を見る

 
植物と数学の関係性とも通じるのが、植物がどのように環境に適応した進化を遂げたのかという話です。読めば読むほどまるで誰かがプログラミングしたとしか思えないほどデジタル的で、次第にSFを読んでいるような気分になります。
 
人間や動物のような大きな脳を持つ複雑な生き物と違い、植物は構造がシンプルゆえに数学が剥き出しなので、そこに何か得体の知れない意志のようなものすら見え隠れします。
 
神のような存在がいて数学を駆使して物質を創造したのか、もしくは数学そのものが神であり数式で出来た全ての物質に神は宿っているのかなど、植物の本を読んでいるだけなのに徐々に思考が宇宙規模に拡大していくので読めば読むほど植物の深淵に囚われそうになります。
 
優れた科学者の中に神を信じる人が大量にいるというのも、結局科学を突き詰めていくとどこかでこの宇宙に数学を仕込んだ存在は一体何なんだという難題にぶち当たるためなのだとこの本を読んでいて何となく分かりました。
 

本の中でこんなことは一切書かれていません。読んでいるとあまりにプログラムが仕込まれたような植物の生態から自然にそのような考えに至るだけです

おわりに

 
植物に関する雑学のような本なのに途中から数学とは何なんだろうとか、神とは数学なのだろうかと考えてしまうほど植物と数学の関係が魅力的で、すっかり植物の虜になりました。
 
この本自体は完全に初心者向けの優しい内容なのでもっともっとディープな植物と数学の関係性に関する本を読みたいと思います。
 
 

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