発光本棚

書評ブログ

発光本棚

【PS4・steam】近未来都市シカゴのインフラを操る快感 『WATCH DOGS(ウォッチ ドッグス)』 〈レビュー・感想〉

f:id:chitose0723:20191007185536j:plain

トレーラー

評価:80/100
作品情報
ジャンル オープンワールドステルスTPS
発売日(日本国内) 2014年6月26日
開発(デベロッパー) Ubisoft Montreal
開発国 カナダ(UBIの本社はフランス)
ゲームエンジン Disrupt

短評

 
 この作品は、近未来のシカゴを舞台に、ハッキングを駆使しあらゆるデジタル機器を目や手足の延長として使うオープンワールドアクションゲームです。
 
 ただ、コンセプトは良くても、全体的にUBIの美意識が前に出すぎて、ゲームとしての面白味は薄めで、ストーリーも淡々としており、ストレートに面白い作品ではありません。
 
 

f:id:chitose0723:20180410192431j:plain

あらすじ

 
 舞台は近未来のシカゴ。シカゴではブルーム社の供給するctOSによりインフラが管理され、あらゆるデジタルデバイスがctOSを介してオンラインの状態にあった。
 
 凄腕のフィクサー(請負人。ハッカー、ドライバー、傭兵、殺し屋など、なんでも屋のような稼業)であるエイデン・ピアースは、とある仕事中に触れてはいけない情報にアクセスしてしまい何者かに姪の命を奪われてしまう。
 
 エイデンは大切な姪を奪った何者かに復讐するためビジランテ(自警団)として立ち上がることを決意。エイデンが意図せず触れてしまったシカゴの街そのものを揺るがしかねないスキャンダルと、姪を死に至らしめた黒幕の正体を追う。
 

大がかりな仕掛けが施された未来都市シカゴ

 
 同じUBIのオープンワールドゲームである『アサシンクリード』はパルクールの楽しさを存分に発揮するため、昇るのが快感な高い建造物を置いたり、屋根から屋根へ飛び移れるような絶妙な距離感の建物配置をしたりと、街そのものをパルクール移動に特化させていました。
 
 本作も似たようなアプローチで、ハッキングの魅力を最大限引き出そうと、街中のインフラやギミック、NPCであるモブなど、様々な対象へのハッキング要素が散りばめられており、街そのものがゲームシステムを中心に構築されています。
 
 ハッキング要素を抜いたオープンワールド部分のプレイ感としては『グランドセフトオートⅤ』に酷似している点が非常に多く、ボタン配置もそっくりなため、GTAⅤをプレイしているとすんなり操作に馴染んでしまいます。
 
 ただ、街の作りをハッキングと連動させるためか、街全体のアップダウンが少なく平らで、道もそれほど入り組んでおらずやや単調でした。
 
 景観も田舎のエリアに行けば自然も多いですが、道路沿いは基本はビルばかりで、坂道の多いロサンゼルスをモデルに作られている『GTAⅤ』のようにただ車を何となく走らせているだけで景色が移り変り刺激的で楽しいという水準には達していません。
 
 

f:id:chitose0723:20180211224201j:plain

 
 ゲームのアプローチとして斬新だったのはNPCへのハッキング要素です。すれ違う人々に対し少しだけ興味を引くような個人情報を一文表示させたり、別段ストーリー的には意味もない電話を盗聴させたりすることでプレイヤーに能動的にNPCの背景を想像させるというやり方は、ベセスダのNPCに生活サイクルを設定するというやり方とはまた別のNPCへの感情移入のさせ方で新鮮でした。
 
 

f:id:chitose0723:20180211224022j:plain

 

f:id:chitose0723:20180211224048j:plain

 
 NPCの挙動がそこそこ細かい上に、観光地に行けば観光客がいたりスラムの路地裏に行けば柄の悪そうな住人がたむろしていたりとその場所その時間とマッチしたNPCが目に入るのも自然でした。
 
 NPCのリアクションで一番驚いたのが、徒歩移動中にハッキングのターゲッティングを間違ってスチームパイプを爆破させてしまったところ、周囲の人々が蒸気が噴き出る道路に向かって一斉に動画撮影のためかスマホをかざした事。こんなに周囲の出来事に対して自然なリアクションを取るNPCを見たことが無かったため感動しました。
 
 

f:id:chitose0723:20210416184023j:plain

 

f:id:chitose0723:20210416184043j:plain

監視カメラ「俺の目を盗みやがったな!」

f:id:chitose0723:20180211224000j:plain
 
 プレイ開始直後は本作に対する印象はよくありませんでした。何をさせたいのか要領を得ないハッキングや、ひたすら終わらないパトカーからの逃走劇。大して面白さが理解できないステルスに開始直後3~4時間くらいまでは眠気を堪えながらプレイするという酷いあり様でした。それが、システムが肌に馴染んでくると印象がぐっと上向いてきます。
 
 このゲームは、開始直後から監視カメラやギミック、警備員、都市のインフラへのハッキング、ファストトラベルポイントを解放するためのctOSタワー解除に、アイテムのクラフトにフォーカス(バレットタイムのようなスローモーション)、スキルツリー、意味不明な固有名詞の羅列と、とても処理できる量ではない情報の波状攻撃にさらされるため、最初はなんのこっちゃわかりません
 
 いくらなんでも情報整理がもう少しスマートにならなかったのかと不満が残ります。
 
 エイデンがビジランテとして立ち上がるべく修業を積むプロセスをチュートリアルとして追体験させるなどの工夫がないため、当初はエイデンという主人公とプレイヤーの認識に溝がありすぎて、素性の知れない主人公の不明瞭な行動を強制的に味わわされるだけで要領を得ず、かなりキツイものがありました。
 
 数時間プレイしてようやく「これは『攻殻機動隊』や『マルドゥックスクランブル』のようなハッキングで敵を出し抜く感覚を味わうステルスなのか!」と気付いてからは何とか楽しめるようになりました。
 
 ハッキングというやり様によってはどこまでも複雑に出来そうなアイデアをシンプルにゲームとして体感できるように、視覚の延長として監視カメラを巧みに経由し隠された死角にアクセスするパズル要素に落とし込んでいるのだと分かると俄然魅力が分かりました。
 
 戦闘も、全体を見渡せる優位な立ち位置からギミックやクラフトアイテムを使用してのほぼワンサイドゲーム的な翻弄と蹂躙の快感はたまりません。うまく立ち回れば何十人敵がいようと軽々と殲滅させることもでき、他のステルスではあまり味わえない類の敵に対しての圧倒的な優位性を堪能できます。
 
 ステルスもさることながら、わりと印象に残ったのはハッキングのターゲッティングシステムを応用した設置型の武器である粘着爆弾です。
 
 グレネードの要領で投げて壁や床にくっつけ、プレイヤーが任意のタイミングで爆発させられるという、他のゲームでいうとC4やリモコン爆弾などと同じようなタイプの武器です。普通のゲームだと設置型の武器を装備している状態で起爆スイッチを押さなければいけないところを、本作は他の銃火器や投擲武器を装備している状態でも設置状態の粘着爆弾にカーソルを合わせハッキングするだけで起爆させられます。そのため、他の武器との併用がラクチンで、この設置型の武器の起爆にハッキングシステムを用いるスタイルというのが他のゲームであまり味わったことがない快感でした。
 
 粘着爆弾は投擲した直後に空中でハッキングして起爆させることもできるため、そのままフラググレネード代わりにも使え、攻撃ボタンと投擲アイテム使用ボタンとハッキングボタンがそれぞれ別れているという珍しい仕様がうまく機能しています。
 
 しかし、ハッキングボタンで起爆させられる設置型武器は粘着爆弾のみで、なぜハッキングシステムと連動する武器のバリエーションが少ないのか疑問でした。
 

不満あれこれ

 
 最大の不満は、もはやUBIのオープンワールドでは定番中の定番であるゲーム全体のインセンティブ(報酬)の弱さです。バリエーションが乏しいクラフトも、数が多いだけで入手する喜びがほぼ皆無な銃器も、大して解放したいとも思えない程度のスキルツリーも、毎回なぜここまで盛り込むわりに何も面白くないのかほとほと疑問です。
 
 それと、システム周りに比べると些細ですが、主人公が一応シカゴの街から悪を一掃しようとしている割に、普通に住人を巻き込みまくり死者まで出るようなハッキングを平気でしたり、ただの警備員を殺害しまくったり、街の住人の銀行口座から金を盗みまくったりと、主人公の設定とシステムがやらせようとしていることがちぐはぐなのが終始ノイズでした。
 
 特に意味もなく何の気なしに信号機をハッキングしたら車が衝突しNPCのドライバーが死体となってドアからはみ出ているのを見た時、「今やったことって主人公の姪がされたことと同じだよな……」と罪悪感でやるせない気持ちになりました。
 
 NPCに感情移入させるような工夫をわざわざしておいて一方ではNPCをゴミの様に扱いもするというどっちつかずの態度はやや不快でした。
 

最後に

 
 クリアまで約20時間ほど。
 
 オープンワールドとして堂々としている点や、ハッキングを用いるステルスや戦闘が斬新という長所と、相変わらずシナリオが薄く、モチベーションが常に低めという短所が両極で、体感としてはプラスマイナスゼロでした。
 
 ただ、バンカーという都市伝説で語られる街中の全てのネットワークを掌握できる秘密基地のような施設を探すという展開はワクワクしました。
 
 それに、エイデンが姪を失ったトンネルをゲーム内で実際に走るというシチュエーションに今までゲームで感じたことのない緊張で冷や汗をかくという貴重なゲーム体験も味わえ概ね満足な出来です。
 
 
 
 
 
 
TOP