トレーラー
評価:80/100
ジャンル | オープンワールドステルスTPS |
発売日(日本国内) | 2014年6月26日 |
開発(デベロッパー) | Ubisoft Montreal |
開発国 | カナダ(UBIの本社はフランス) |
ゲームエンジン | Disrupt |
ゲームの概要
この作品は、UBIのオープンワールドアクションゲーム『ウォッチドッグス』シリーズの1作目です。
近未来のアメリカ、シカゴの街を舞台に、ハッキングを駆使し、デジタル機器やデジタル化されたインフラを目や手足の延長として使うというコンセプトが最大の特徴となっています。
『GTA(グランド セフト オート)』シリーズのフォロワータイトルながら、ハッキング要素を加えたことで差別化に成功し、このシリーズ独自の路線を打ち出せています。
ただ、全体的にいつものUBIらしく、ゲームの面白味は薄めで、ストーリーも淡々としており、ストレートに面白い作品ではありませんでした。
あらすじ
舞台は近未来のシカゴ。シカゴではブルーム社の供給するctOSによりインフラが管理され、あらゆるデジタルデバイスがctOSを介してオンラインの状態にあった。
凄腕のフィクサー(請負人。ハッカー、ドライバー、傭兵、殺し屋など、なんでも屋のような稼業)であるエイデン・ピアースは、とある仕事中に触れてはいけない情報にアクセスしてしまい何者かに姪の命を奪われてしまう。
エイデンは大切な姪を奪った何者かに復讐するためビジランテ(自警団)として立ち上がることを決意。エイデンが意図せず触れてしまったシカゴの街そのものを揺るがしかねないスキャンダルと、姪を死に至らしめた黒幕の正体を追う。
大がかりな仕掛けが施された未来都市シカゴ

本作は、ハッキング要素を抜いたゲーム部分は『GTA』シリーズに酷似している点が多く、ボタン配置もそっくりなため『GTA』シリーズをプレイしているとすんなり操作に馴染めます。
ただ、『GTA5』に比べると、街の作りをハッキングと連動させるためか、街全体のアップダウンが少なく平らで、道もそれほど入り組んでおらずやや単調でした。
景観も田舎のエリアに行けば自然も多いですが、道路沿いは基本はビルばかりで、坂道の多いロサンゼルスをモデルに作られている『GTA5』のようにただ車を何となく走らせているだけで景色が移り変り刺激的で楽しいという水準には達していません。
ゲームのアプローチとして驚いたのはNPCへのハッキング要素です。
すれ違う人々に対し少しだけ興味を引くような個人情報を一文表示させたり、別段ストーリー的には意味もない電話を盗聴させたりすることでプレイヤーに能動的にNPCの背景を想像させるというやり方は新鮮でした。
ベセスダのNPCに生活サイクルを設定するというやり方とはまた別方向のNPCへの感情移入のさせ方を確立しており、この点は好印象です。
加えて、NPCの挙動がそこそこ細かい上に、観光地に行けば観光客がいたりスラムの路地裏に行けば柄の悪そうな住人がたむろしていたりとその場所その時間とマッチしたNPCが目に入るのも自然でした。
NPCのリアクションで最も驚いたのが、徒歩移動中にハッキングのターゲッティングを間違ってスチームパイプを爆破させてしまったところ、周囲の人々が蒸気が噴き出る道路に向かって一斉に動画撮影のためかスマホをかざした事です。こんなに周囲の出来事に対して自然なリアクションを取るNPCを見たことが無かったため衝撃でした。
監視カメラ「俺の目を盗みやがったな!」

プレイ開始直後は本作に対する印象は最悪でした。
何をさせたいのか要領を得ないハッキングや、ひたすら終わらないパトカーとのチェイス。大して面白さが理解できないステルスに開始直後3~4時間くらいまでは眠気を堪えながらプレイするという酷いあり様でした。
それが、システムが肌に馴染んでくると印象がぐっと上向いてきます。
このゲームは、開始直後から監視カメラやギミック、警備員、都市のインフラへのハッキング、ファストトラベルポイントを解放するためのctOSタワー解除に、アイテムのクラフトにフォーカス(バレットタイムのようなスローモーション)、スキルツリー、意味不明な固有名詞の羅列と、とても処理できる量ではない情報の波状攻撃にさらされるため、なんのこっちゃわかりません。
ここは、もう少し情報整理をスマートに出来なかったのかと大いに不満です。
エイデンがビジランテとして立ち上がるべく修業を積むプロセスをチュートリアルとして追体験させるなどの工夫がないため、当初はエイデンという主人公とプレイヤーの認識に溝がありすぎて、素性の知れない主人公の不明瞭な行動を強制的に味わわされるだけで要領を得ず、苦痛すら伴います。
数時間プレイして、これは『攻殻機動隊』や『マルドゥックスクランブル』のようなハッキングで敵を出し抜く感覚を味わうステルスなのかと気付けてからは楽しさが増していきます。
ハッキングで監視カメラを視覚の延長として経由し、隠された死角にアクセスするパズル要素など、ハッキングをゲームに落とし込んでいるという構造が理解できると、俄然ハッキングに対して前のめりの興味が湧いてきます。
戦闘もハッカーが主人公という設定を生かし、全体を見渡せる優位な立ち位置から、ギミックやクラフトアイテムを使用してのほぼワンサイドゲーム的な翻弄と蹂躙の快感が味わえ、仕組みが分かると快感です。
うまく立ち回れば何十人敵がいようと軽々と殲滅させることもでき、他のステルスではあまり味わえない類の敵に対しての圧倒的な優位性を堪能できます。
不満あれこれ
最大の不満は、もはやUBIのオープンワールドでは定番中の定番であるゲーム全体のインセンティブ(報酬)の弱さです。
バリエーションが乏しいクラフトも、数が多いだけで入手する喜びがほぼ皆無な銃器も、大して解放したいとも思えない程度のスキルツリーも、毎回なぜここまでムダに盛り込むわりに何も面白くないのかほとほと疑問でした。
それと、システム周りに比べると些細ですが、主人公が一応シカゴの街から悪を一掃しようとしている割に、普通に住人を巻き込みまくり死者まで出るようなハッキングを平気でしたり、ただの警備員を殺害しまくったり、街の住人の銀行口座から金を盗みまくったりと、主人公の設定とシステムがやらせようとしていることがちぐはぐなのが終始ノイズでした。
特に意味もなく何の気なしに信号機をハッキングしたら車が衝突しNPCのドライバーが死体となってドアからはみ出ているのを見た時、「今やったことって主人公の姪がされたことと同じだよな・・・」と罪悪感でやるせない気持ちになりました。
NPCに感情移入させるような工夫をわざわざしておいて一方ではNPCをゴミの様に扱いもするというどっちつかずの態度はやや不快でした。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
新規IPとして作られたオープンワールドにしては堂々としていることや、ハッキングを用いるステルスや戦闘が斬新という点は評価できます。
それに、バンカーという都市伝説で語られる街中の全てのネットワークを掌握できる秘密基地のような施設を探すという展開は素直にワクワクします。
加えて、エイデンが姪を失ったトンネルをゲーム内で実際に走るというシチュエーションに今までゲームで感じたことのない緊張で冷や汗をかくという貴重な体験も出来ました。
しかし、UBIのゲームらしく相変わらずシナリオが薄く、モチベーションが常に低めという短所が極端で、結局体感としてはプラスマイナスゼロです。
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