トレーラー
評価:65/100
ジャンル
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ステルス
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発売日(日本国内)
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2014年6月12日
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開発(デベロッパー)
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Eidos Montreal
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開発国
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カナダ
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ゲームエンジン
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Unreal Engine 3
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短評
ゲーム内のあらゆる要素にもう一押しが足りない凡庸ステルスゲーム。
基本は抑えているものの、それ以上の魅力が一つもなく悪くはないが良くもないという微妙なバランスに落ち着いている。
独自性が貧弱
本作はこのゲームをこのゲームたらしめる魅力の核となる様な部分が薄く弱く、どうしても相対的に他のステルスゲームに比べると魅力が乏しくアピール不足感が拭えません。
『アサシンクリード』の化け物じみたパルクールの快楽性や『デウスエクス』のレベルデザインと呼応して威力を発揮する完成度の高い成長システム。『メタルギアソリッド』のゲーム体験に高級感と味わい深い余韻を与える物語性などと比べ、独自性が貧弱でパッとしません。
物を盗む際の小気味いい演出やSE使い、闇に乗じるために灯りを消す瞬間など、プレイしていて楽しいと感じる瞬間はいくつもありました。
特に闇に乗じるために灯りを消すという感覚はプレイしていると暗さというアドバンテージがいかに重要かが自然と理解でき、周囲が明るいと不安で落ち着かなくなってくるほど魅力的です。
この暗闇に乗じるという部分は、自分が今どれくらい目立っているのかをざっくりした色(目立っていると白、隠れていると黒、など)で伝えるだけでなく、もっとメタルギアソリッド3の迷彩服や、4のオクトカム(段ボールも可)のようにプレイヤー側にカモフラージュの仕方の自由が与えられれば、敵から丸見えなのに接近されない限りは発見されないという心地よい緊張感を味わえるシステムに磨きがかかったはずです。
ですが、現状はシステムがどれも一過性の楽しさで止まってしまい、それがインセンティブ(報酬・刺激)として充分かと言われれば微妙で、ただ盗む物がそこにあるから盗む、ただ消せる灯りがそこにあるから消すという、ただその場で出来ることを受動的にこなしているだけで、ゲーム体験としては能動性が足りず、非常に薄いです。
物を盗みお金を貯めてアイテムを購入するという『バイオハザード4・5・6』や、『デッドスペース』の周回プレイスタイルにも似たやり込み要素もあるものの、これらのタイトルの様にやり込みたいと思わせるほどにはシステムに魅力がありません。
後、主人公は盗賊で物を盗むということが目的のはずなのに、なぜかさせられることといえばアサシンクリード的なマップ上は確認できるのに容易には辿り付けない場所への侵入ルート探しだったり、『トゥームレイダー』や『アンチャーテッド』のようなギミックを用いた遺跡の謎解きだったりと、盗賊というメインコンセプトからはやや逸脱したような内容のものが多く、ゲームデザインがややぼやけてしまっている印象すら受けます。
舞台となる街(シティ)の存在感の乏しさ
アクションゲームとしてそれほど操作性がいいわけでもなく、システム的にもパッとせず、ストーリーも退屈なため、せめて雰囲気ゲーとしての魅力を最低限は確保して欲しいものの、街に思い入れが生まれるような作りでないため、それも叶わず。
全体的に霧がかったロンドンチック?な雰囲気はそこそこうまく醸しているのに、いかんせんこの街に愛着を持つまでには至りません。
街に対して思い入れを持たせるような試みが物語的にもシステム的にも充分になされないため、ただ次のチャプターが開始するエリアに辿り着くまでの通り道か、たまに買い物に訪れる場所程度の存在感しかなく、せっかく雰囲気は出せているのにそれが「この街についてもっと知りたい」という欲求としては機能しませんでした。
街に対して思い入れを持つというプロセスをプレイヤーに丸投げするという策が裏目に出ています。
もう少し丁寧にこの街の政治情勢や、イデオロギーの対立構造などの世界観設定を自然と掘り下げていく様なストーリーテリングを心掛けてくれないと、この街、延いてはこの作品そのものへ興味が湧かず、プレイ開始直後の街への印象とクリアした後の印象、延いては作品への印象・評価が変化するほどの思い入れも生まれません。
オープンワールドに見せかけて細かくエリアが区切られているという構造上のややこしさも街に対しての印象を下げる要因となっており、このせいでただでさえ迷路のような構造の街なのに、さらにエリアごとの繋がりが飲み込み辛くなっています。
民家の窓を開けたらいきなりエリア移動してしまうなど、ぱっと見そこに入るとエリア移動するということが一切分からない箇所があるのも不親切でストレスが溜まります。
最後に
決して悪いゲームではないものの、常にプレイ中何かが足りず、しっくりこないそわそわするような据わりの悪さを感じ続ける困った感触の作品でした。
やればやるほど、いかにステルスゲームを魅力的に際立たせるためには核となるパンチの効いたシステム(アイデア)が重要になるのか考えさせられ、それはそれで有意義でした。
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