評価:80/100
配信日 | 2019年12月20日 |
話数 | 全8話 |
国 | アメリカ |
映像配信サービス | ネットフリックス |
ドラマの概要
このドラマは、ポーランドの作家であるアンドレイ・サプコフスキが書いた小説版『ウィッチャー』を原作とするドラマのシーズン1です。ちなみに、同じくポーランドのゲーム会社であるCD projekt REDが開発したゲーム版とは一切関係ありません。
原作は未読です。
ゲラルト役のヘンリー・カヴィルは完全なハマリ役でアクションもゲーム版のスタイリッシュ路線ではなく、荒々しい暴力的なタッチで描かれるなど新鮮なウィッチャー体験が味わえます。
しかし、原作小説ファンをメインターゲットとして作ったような、極端に説明が省かれた作りで、しかも映画の『ダンケルク』のようなキャラクターごとに時間の流れが異なるというクセの強い構成と、ドラマ版から見始めるとやや理解し辛い厄介さもあります。
ウィッチャーシリーズを知っている前提のような、やや見る者を突き放すドラマ版
このドラマの第一印象は、映画志向で撮影や美術に凝りに凝っているため映像はキレイなのにテンポは悪くて一話一話が冗長で、いかにも眠気が付いて回るネットフリックスのオリジナルドラマといったものでした。
それに、映画のスパイダーマンで言うと『スパイダーマン ホームカミング』のような、ピーター・パーカーがどのような経緯でスパイダーマンになったのかはすでに知っている前提でスパイダーマンになる過程を省略するように、本作も原作ファンが見ることを想定しているのか、最低限ウィッチャー世界を理解するために必要な説明すら省いており、あまり親切な作りではありません。
ダンケルクな構成と、アメリカドラマ的な陰鬱な脚本
本作で最も癖が強い部分は映画の『ダンケルク』の丸パクリをしている構成で、ゲラルト、イェネファー、シリという、それぞれ三つの視点の時間の流れが異なり、それが最後には合流するという構造です。
ある人にとっては数十年の出来事と、ある人にとっては数時間や数日の出来事がほぼ同じ尺で同時進行で描かれるため、ダンケルクを見てこのスタイルに慣れていないとやや混乱します。
肝心のシナリオはいかにもウィッチャーらしい部分と、そうでない部分が混在しており驚きました。
ウィッチャーらしい部分は、善と悪の境界が曖昧で、登場人物ほぼ全員表と裏の顔を持ち、被害者だと思っていた側が実は加害者などウィッチャーシリーズを知っていれば予想がつくものです。
逆にあまりウィッチャーらしくないのは、ゲラルトはじめ主要人物が全員感情的に描かれ、ゲラルトがキレて暴れたり、機嫌が悪くて周りにいる人間に悪態をついたりといった部分で、このおかげでウィッチャーを見ているという安心感と、でも自分が知っているウィッチャーとは少し違うという緊張が同時に生じ刺激的でした。
特にゲラルトが非常に人間くさくセンシティブに描かれているのが新鮮で、うじうじ悩んだり、感情的になって大声で叫んだりといった、怪物退治の専門家であるウィッチャーとしてのゲラルトと、一人の心を持った人間としてのゲラルトという表と裏の顔があり、作品全体が人間の二面性を描くことを徹底しているなと感心させられました。
ただ、問題は主要人物が全員人間くさく描かれているせいで、『ウォーキングデッド』で何話も何話も話が進まず、ひたすら主要キャラが苦悩し続ける回が続くような、延々誰かが悩んでいる状態を見せられるので若干鬱陶しさも感じます。
自分のような、ウォーキングデッドで誰かがグダグダ、メソメソ悩み苦しむ様を延々見せられるのが苦痛に感じるタイプの人間には正直辛い場面もありました。
剣なんてほとんど飾りな美しすぎるヘンリー・カヴィルの肉弾アクション
ゲラルトを演じるヘンリー・カヴィルは、ほとんど完璧といっていいほどの存在感で、ゲラルトの逞 しさと、繊細さをこれ以上ないほど引き出し、作品の魅力を何割増しにするほどの貢献をしています。
ヘンリー・カヴィルはアクションをさせても一流で、体格的にもウィッチャーとしての貫禄抜群で何の不満もありませんでした。
アクションは、丁度ゲラルトを人間的に描こうとするアプローチと呼応するかのように、ゲーム版の3のような洗練された舞いのような動きをする殺陣ではなく、取っ組み合って泥臭く怪物と戦う荒々しいスタイルとなっており、非常に作風に合っていると思います。
ゲーム版の洗練されたアクションは血の滲むような修行の賜という、ウィッチャーとしてのプロフェッショナル感を出すためには非常に有効ですが、ドラマ版はゲラルトを人間くさく感情豊かに描くため、やや乱暴なアクションのほうがしっくりきます。
ヘンリー・カヴィルは剣を振っても、怪物と取っ組み合っても、何をやらせても絵になるので、ゲラルト役にはこの上ない最高のキャスティングでした(正直、イェネファーよりもゲラルトのほうが美しいです)。
不満あれこれ
まず、自分的に一番不満だったのがゲラルトの友人である吟遊詩人ヤスキエル(ダンディリオン)の存在や演技がやたら現代人ぽくて苦手だったこと。このキャラクターが登場する度に現実に引き戻されるので、もう少しファンタジーの世界に馴染むような演技をさせられないのかと不満でした。
現実に引き戻されるという点では、日本語吹き替え版でシリが「キモイ」というセリフを言うなど目を疑うような瞬間があり、もう少しファンタジーらしい古めかしい言葉選びを徹底して欲しかったです。
それに、まだスタッフがファンタジーを撮り慣れていないのか、ところどころ『ゲーム オブ スローンズ』だったらありえないような、とんでもなくヘタクソで興ざめするようなダサいショットやカメラワークがちらほら混じっており、映像の脇の甘さに対してやや不安も覚えました。
最後に
全体的にシーズン1はまだ様子見の段階で、正直このシーズンだけだと評価のしようがありません。
ただ、ヘンリー・カヴィルの美しさに見惚れるだけでも見る価値はあります。
ウィッチャーシリーズ
タイトル
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ハード
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