トレーラー
評価:95/100
ジャンル
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オープンワールド
アクションRPG
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発売日(日本国内)
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2015年5月21日
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開発(デベロッパー)
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CD Projekt Red
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開発国
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ポーランド
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ゲームエンジン
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REDengine 3
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短評
そつなく、抜かりなく、奇策を用いず、正攻法だけでRPGの王座にまで上り詰めた大傑作オープンワールドアクションRPG。
シリーズの核となる要素を大切に育み進歩させながら、流行りのシステムも取り入れ遊びやすさへの配慮も欠かさず、ハードなダークファンタジーに優雅さまでもが加わり、一切の隙がない完成度を誇る。
RPG界の優雅さを纏った成り上がり貴族
まず最初にプレイを開始した直後、見知ったはずのシリーズの驚異的な変貌ぶりに度肝を抜かれました。それは、グラフィックが綺麗になったとか、オープンワールドになってマップが広くなったなどという表面的な部分では片付けられないものでした。
一年前は訛りのきつい土臭い純朴な田舎者だったのに再会したら流暢な会話術を身に付けた社交界の花形貴族に化けていて、でも根は純朴のままというような、2まではそれほど備わっていなかった作品の格調高さ・優雅さが桁違いに増し、作品の肌触りがゴワゴワしていた1や2と異なり、上質なシルクのように滑らかになった点です。
1も2も完成度は高いものの野心的な部分が多く、やや癖があり捻ったシステムで一部の層を狙いすましたようなバランスに落ち着いていましたが、今作は万人を優雅さだけでねじ伏せられるほどの気品を獲得しており、作品の訴求力が数十倍くらいは跳ね上がりました。
それなのにも関わらず、1や2で丁寧に築き上げてきた独自性はまったく失っていません。結果、ウィッチャーシリーズの独自性は維持したまま、そこに訴求力だけが大幅にプラスされるという理想的とも思える仕上がり具合で、軽い奇跡を目の当たりにして目が眩むようです。
1や2を好むような一部の層に好かれていればいいという安易な妥協をせず、かといって自分たちが築き上げてきた作品の独自性を薄めることもせず。自信を持って癖を残しつつ幅広い層に訴えるための遊びやすさの追及にも手を抜かないという、両立困難な二つの事柄を成立させてしまった作り手の高い高い志に頭が下がります。
プロフェッショナルのモンスタースレイヤーを追体験させる試みが大成功
海外のハイファンタジーRPGは正直どれも大量の設定で世界観を補完していくだけの『指輪物語』もどきにしか見えず、ゲームとしての完成度が突出しているようなケースを除きさほど興味を惹かれることはありませんでした。
しかし、本作はありがちな指輪物語タイプのそれとは一線を画し、ウィッチャーという怪物退治専門のプロの描写を突き詰め、それをシステムにまで落とし込むことで他のハイファンタジーRPGから頭一つ飛び抜けることに成功しています。
歴史や地理のお勉強のごとくダラダラ長ったらしいドキュメントを読まされ意味が分からない固有名詞を暗記させられ世界観設定をマクロ的に補完して厚みを持たせるのではなく、聞き込みで得た情報や、遺体の検死、事件発生場所の調査でモンスターの痕跡を発見しそれを追跡し排除するプロフェッショナルとしての描写に力を入れることで、地を這うようなミクロの視点から自然に世界観を肌に擦り込んでいくというスタイルの徹底が心地いいです。
2は王殺しの犯人に仕立て上げられた主人公ゲラルトが自らの潔白を証明するため王殺しの真犯人を追跡するというかなり政治性が強くかつ自由度の少ない窮屈な作りでした。
しかし、広いオープンワールドでのびのびと怪物退治ができるようになったことでよりフリーランスの害獣駆除のプロとしての立ち位置が強化されるという、シリーズのオープンワールド化が非常にプラスに働いた好例だと思います。
政治とある程度距離を取ったことでモンスタースレイヤーとしてのウィッチャーの仕事を縛り付けていた枷から解放され、オープンワールドの世界でより活き活きとした放浪者としての在り方を手にすることができました。
戦略性があまりなく、オープンワールドが目的化しているだけのシリーズが多い中で、これほどオープンワールドになったことで秘めていたポテンシャルが解き放たれ魅力が飛躍的に向上した作品も珍しいと思います。
世界観の厚みを押しつけるのではなく、ウィッチャーとして報酬と引き替えに怪物を退治したり困っている人を助けたりとプロの仕事を淡々とこなすことで、自然とこの世界の中での自分の立ち位置を学び、世界を徐々に理解していけるという姿勢は、非常にこのシリーズらしいアプローチで感心させられます。
グウェントという発明
序盤ゲーム本編とはまったく関係ないところで苦労させられるのは尋常ではない中毒性を持ったミニゲームであるグウェントというカードゲームです。
このグウェントで用いるカードがお店で売っているため、序盤は2に比べてお金を入手しづらく、かつ武器や防具に耐久度が追加されたせいで頻繁に消耗した装備を修理するために出費を強いられるのに、グウェントが楽しすぎて、ほぼ全財産をカード購入代金に奪われ、金欠状態が続きます。
このグウェントが楽しすぎるため、メインクエストそっちのけでグウェントがプレイ可能なNPC(宿屋の主人や商人など)を探し回り、サブクエストもグウェント優先で、新しいカードを入手するためひたすらグウェント勝負を挑み続けるという状態が続き、物語の目的を見失うことが多々ありました。
ここまでシンプルなルール設定で駆け引きが楽しいと思えたカードゲームは『アイ・オブ・ジャッジメント』以来でした。『アイ・オブ・ジャッジメント』も朝から晩まで暇さえあればオンライン対戦に明け暮れていましたが、それクラスのカードゲームがミニゲームとして収録されているのかと思うとその豪華さに驚愕させられます。
2のサイコロポーカーというその名の通り、カードではなくサイコロの目でポーカーをするというミニゲームもお手軽で楽しかったですが、今作のグウェントはそれを完全に凌駕しています。
メインクエストで知り合いがピンチで現場に駆け付けなくてはならないという緊迫した場面の移動途中で未発見だった商人を見つけてしまい延々勝つまで何度も何度も勝負を挑み「危機に瀕した友人をほったらかしてなんでグウェントやってるんだろう・・・・・・」という罪悪感に苛まれたことが何度かありました。
システムの長所・短所
システム周りは基本的には2の延長線で、2をクリアしていればさほど困ることはないものの、細かい変更点も多く、慣れるのにはやや苦労しました。
まず、ウィッチャーシリーズの基本中の基本である霊薬やオイルの仕様が変化した点。武器に塗るオイルは制限時間制から回数制に変わった程度で、霊薬に比べるとほぼ2と変わらない感覚で使用が可能です。
後は、2で消費アイテムだった霊薬・爆薬(罠がなくなり罠の効果は爆薬に一元化)が補充制アイテム(オイルは無限に使いたい放題)となり、一度クラフトしてしまえば無くなることはなく、瞑想すれば勝手に特定のアイテムを消費して上限まで補充されるため、より残量を気にせず使いたい放題使えるようになりました。
大きく変わったのは霊薬周りで、2とは異なり、瞑想中でなくとも霊薬使用が常時可能という一作目に近いタイプに変更されました。
それプラス、2における霊薬と似たような中毒度(霊薬を使うと増加し、上限まで達すると新たに霊薬が使用できなくなるゲージ)を一定量占有するものの効果時間が非常に長く続く、変異抽出液という通常の霊薬とは異なる仕様のものが追加されました。その結果、丁度1と2の霊薬システムを足して2で割ったようなバランスに落ち着いています。
『ドラゴンエイジ(一作目)』のMPやスタミナを占有して効果を常時発動させ続ける持続系タレント(スペル)のように、中毒度を大幅に占有する変異抽出液を使用し、余った中毒度を用いて短期間効果を発揮する通常霊薬をやりくりするというスタイルになったことで、常に中毒度や使用中の霊薬に意識が向くようになりました。
中毒度の上限を上げれば上げるほど常時使用可能な変異抽出液の数が増えたり、戦闘中に通常霊薬を使いまくれたりと、ここは霊薬使用に良い意味で気を遣わされ好感触です。
その他良くなった点としては、2にはなかった『ボーダーランズ』か『ディアブロ3』の影響であろう武器・防具のレベル制の導入により、常に不完全な装備を現在のレベルに見合ったものに交換したいという欲求を抱かせる強力なインセンティブ要素が加わった点。
それと、霊薬やオイル、爆薬をクラフトでアップグレードしていけるため、素材探しに夢中になれる点。レベルアップした際に得られるアビリティポイントを発見しただけで無償で入手できる魅力的な場所をフィールドに設置することでオープンワールドの広いマップを探索する際のモチベーションを強化している点、などなど。

そして、何よりもグウェントのおかげでグウェントが可能なNPCを探すためマップ中をカードを求めて自然と探索させられ、2に比べるとメインクエスト以外のやり込み部分の遊びやすさが大幅に向上し、中毒性の高さは飛躍的に向上しました。
う~ん、霊薬の過剰摂取で頭がズキズキします
2に比べるとやや後退した戦闘の緊張感
やや気になったのは2と異なり霊薬や錬金術アビリティによって戦闘中のライフ回復が容易になってしまったことで、バトルがゴリ押し可能となり、2とは比べものにならないほど戦闘の難易度が下がった点。
今作には4段階の難易度があり、最初はノーマルくらいかなと思い下から二番目のストーリー&バトルという難易度を選んで進めていました。
しかし、あまりにもバトルが簡単すぎて歯応えがないため結局途中から最高難易度のデスマーチまで上げましたが、それでもまだ2の難易度ノーマルに届きすらせず、中盤以降はほぼ死亡することもなく、ラスボスもまったく苦戦すらせず勝ててしまい、拍子抜けさせられました(さすがにDLCをやると手こずりはします)。
今作は錬金術アビリティがあまりにも強力過ぎます。
変異抽出液を使用するとライフ上限を大幅に上げるものだったり、霊薬を使用すると種類に関わらず無条件で体力を回復してくれるものだったりと、錬金術アビリティを強化していくとライフ上限が上がり、それに付随して回復量も増加(%で回復するため、ライフ上限が上がると霊薬による回復量も比例して上昇)するため、システムに慣れさえすればよほどレベルが高い敵と遭遇でもしない限りは苦戦することはありません。
死にゲーに近かった2の緊張感は消え、ただひたすら霊薬で回復しながら攻撃していれば勝ててしまうバランスになってしまいました。
中毒度を変異抽出液と通常霊薬でやりくりするというシステムは面白く、バトルはスピーディで爽快感が向上し進化しているのに戦闘中の回復を容易にしたことでバランスが壊れ気味で、回復を制限していた2のほうが遥かに歯応えがあり一戦一戦に緊張感がありました。
アクション性が大幅に強化された爽快感のあるバトルを体験するとさすがに2のほうが良いとは思えませんが、2の一撃一撃が致命傷となる攻撃の重みが懐かしくもあります。
それに、敵が2に比べやたら固くなり、倒すまで何発も何発も攻撃を加え続けなければならなくなったのも戦闘がいちいち間延びして面倒でした。
不満あれこれ
今作最大の欠点はやはりオープンワールド化の重い代償であろうロードの長さです。軽く2の5~10倍くらいはロード時間が増えたため、ちょっと手前のセーブポイントからやり直そうとしただけで膨大な時間待たされ、常に苦痛が付きまといます。
とりあえず頻繁に行う同一エリア内のファストトラベルはロードが最低限なことで何とか我慢はできますが、どうしても手前のチェックポイントから手動でロードしたり、ロードが発生する別エリアへの移動など、煩わしいことを無意識的に避けようとして行動が制限されるのはいい気分はしません。
後は、ロードの長さに比べると些細なことですが、移動周りは距離が長い割には、移動そのものに快楽性を持たせるといった工夫がされていないため、やや単調に感じました。
今作はアイテムは重量制で持ちきれなくなったら店に売りに行かなければならなかったり、武器や防具に耐久度が設定されたため、頻繁に修理のため鍛冶屋に出向く必要があったり、そもそもおつかいクエストが多く街中あちこち走らされたりと、やたら滅多に移動を強いてくる割にあまり快適さが確保されていないため、移動が億劫に感じることが多いです。
いちいちファストトラベル地点から頻繁に訪れる店の場所が離されているのも、もしかしたら綺麗な景色や作り込んだ街並みを鑑賞して欲しくてあえて歩かせているのかと勘繰りたくなります。
最後に
マルチエンディングなど、ゲームの一つ一つの要素だけ取り出してみたら好みな部分はそれほどないのですが、全体として評価しようとした場合、あまりの隙のない高水準なまとまり具合に賞賛以外の選択肢がそもそも存在しないという、個人の嗜好に合う合わないを超越し、ただただ到達した完成度の高さだけに圧倒される大傑作。
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