トレーラー
評価:85/100
ジャンル | アクションRPG |
発売日(日本国内) | 2017年11月30日 |
開発(デベロッパー) | Deck13 Interactive |
開発国 | ドイツ |
ゲームエンジン | FLEDGE |
- ゲームの概要
- ダークソウルとは異なる方向性で完成度が高い成長要素
- うまく刺激として機能させ切れなかった部位破壊システム
- コズミックホラーテイストを部位破壊されてスカスカになった『デッドスペース』(一作目)のUSGイシムラを地図とロケーター(ナビゲーション)無しで歩かされるような探索部分
- 最後に
- 余談
ゲームの概要
この作品は、『ダークソウル』に影響を受けたソウルライクのアクションRPGです。
ソウルライクゲームとしては、強化外骨格を鍛えていくという本家とはひと味違う味付けがされており、このゲーム独自の魅力があります。
しかし、迷路のように複雑でストレスフルなマップや、目的地が分かりづらい不親切さ、作業になりがちな部位破壊システムと、不満もそこそこ多く、手放しで絶賛という完成度ではありませんでした。
ダークソウルとは異なる方向性で完成度が高い成長要素
本作は『ダークソウル』に強い影響を受けているソウルライクゲームなため、高難易度なことも含め基本部分はソウルシリーズとほとんど変わりません。
敵を倒すとテックスクラップというソウルシリーズでいうところのソウルの代わりとなる経験値とお金を兼ねるものを入手でき、それでEXO -リグという、映画の『エリジウム』(『第九地区』のパワードスーツまではいかない)や、『コールオブデューティ アドバンスドウォーフェア』のEXOスーツのような外骨格を強化していくというのが主な成長要素になります。
ただ、ダークソウルのようなレベルを上げステータスにポイントを振って強化していくオーソドックスな成長ではなく、EXO-リグのコアパワー(レベルに相当)を強化すると、強化した分の数値をインプラントという強化アイテムの装着コストや、ギア(アーマー)の装備コストとして使える、という完全装備依存な作りです。
よくあるソーシャルゲームで例えると部隊編成コスト上限がコアパワーで、コスト上限が上がれば上がるほど使用コストの高めな強力なキャラを大量に組み込めるようになっていく感じです。
このため、ステータスの成長のさせ方である程度戦い方が固定されてしまう『ダークソウル』に比べ、装備するインプラントを交換するだけでお手軽に戦闘方法をガラッと変えられるという本作独自の魅力があります。
『ダークソウル』におけるエスト瓶の役割をする回復機能もキレイにインプラントに一元化されており、どれくらいの量の回復インプラントを装備するのかもプレイヤーの判断に一任されます。
そのため、回復インプラントを大量にセットしてゴリ押ししてもいいし、スタミナとは別個に用意されたエネルギーゲージをやりくりしてテクニカルに戦ってもいいと戦い方は自由です。
ボス戦ごとに立ち回りを体に叩き込むのはもちろんのこと、それ以前にどんなインプラントで挑もうかセッティングの段階から考える楽しさも加わり、ここら辺はうまく本家とは異なる特色を出せており好感触でした。
ただ、自由に戦略を選べる代償か『ダークソウル』に比べるとボス戦の難易度がかなり低めに設定されており手応えは少なめです。
うまく刺激として機能させ切れなかった部位破壊システム
本作が成長要素と同じくらい力を入れているのが部位破壊システムです。
これは6つある敵の部位(頭・ボディ・右腕・左腕・右足・左足)に一定数のダメージを与えた状態でフィニッシュブローというエネルギーを消費するトドメの一撃を叩き込むことで、敵が装備しているギアのパーツを入手でき、装備が作成可能になるというものです。
部位破壊システム自体は他のゲームでもよく見かけるためそれほど新鮮味はありません。
ただ、部位ロックオン機能が細かかったり、武器の種類ごとに部位破壊時のフィニッシュブローが異なったりと、力の入れ具合が明らかに違うことがプレイしていると体感で伝わってきます。
足を部位破壊するためにはスライディング斬りなどの下段攻撃が有効とか、頭を攻撃するなら上段からの振り下ろし系の攻撃のほうが頭部にうまくヒットするなど、攻撃モーションが下から上へ斬り上げるのか上から下へ斬り下ろすのか注意しつつ、右腕を破壊したいなら右腕に当たるように側面に回り込むように立ち回るなど、ある程度考えながら攻撃しないとうまく狙った部位にダメージを与えられません。
と言っても、部位にロックオンして適当に攻撃していれば大体の場合は入手できるので、一度倒すと出現しなくなるような特殊な敵など、何がなんでも確実に入手したい部位があるという場合以外はそこまで念入りに攻撃の角度や高度を調整しなくても特に問題はない程度ではあります。
この部位破壊システムは慣れてくるとサクサク欲しいパーツが手に入り序盤はそこそこ楽しいのですが、問題は序盤~終盤まで入手できるギアにそこまで明確に性能差が無いことです。
なんなら序盤で入手できるギアのまま普通にクリアも可能で、とりあえず新しいギアを装備した敵と遭遇したら片っ端から部位破壊するものの、結局「この程度の性能なら今装備しているギアでいいや」となってしまい中盤以降はうまく機能しなくなります。
このようなシステムを軸にしたいなら、もっとステージが先に進むごとに段階的にギアを交換したくなるような、目に見えてギアの性能差が変わっていくバランス調整でないと効果が薄いと思います。
とりあえずクラフトやアップグレードに使う素材を確保するため頻繁に部位破壊はするものの、ほとんど同じギアをアップグレードして使い続けるだけなので、徐々に爽快さよりは素材集めのための作業感のほうが強まり途中で飽きました。
多分作り手の意図としては次から次に強力なギアに装備変更し使い捨てていくのではなく、プレイヤーの好みの戦い方に合わせ、その都度多用な選択肢の中から好みのギア(全部位を同種類のギアで固めるとかなり強力なセットボーナスが発生)を選ばせたいのだと思います。
ただ、インプラントがコアパワーの上昇(レベルアップ)ごとにテンポよく次から次に強力なものに交換したり、新しいスロットに装備を追加したりと成長の確かな手応えを提供し続けてくれるのに比べ、ギアはあまり良い循環を作れていません。
一応ギアはバトルで、インプラントは探索で、と入手方法を分けることで刺激が一カ所に固まらないようにうまく分散できてはいるものの、部位破壊して新しいギアの図面やクラフト素材を手に入れても特に嬉しくもないというバランスが深刻に感じました。
明らかにギアのほうが入手やアップグレードに手間が掛かるのに、そこら辺に余るほどたくさん落ちているインプラントのほうが強力なのはバランスがおかしいです。
結局ギアとインプラントの重要度や装備の交換間隔の設定の仕方が逆なんじゃないのかという疑問が終始晴れることがありませんでした。
コズミックホラーテイストを部位破壊されてスカスカになった『デッドスペース』(一作目)のUSGイシムラを地図とロケーター(ナビゲーション)無しで歩かされるような探索部分
本作最大の問題は探索部分の不親切さです。
最初のロケット部品のスクラップ置き場のようなステージは、狭めの屋内と解放的な屋外のメリハリが気持ちいい上に、ロケットの廃部品をうまくステージ構造に利用していたり、ショートカットの作りが気が利いていて発見すると嬉しかったりと、歩いているだけでワクワクして楽しめました。
しかし、問題はそれ以降のステージが工場や研究所・オフィスっぽい場所など、ことごとく景色が地味で想像力を刺激されず、魅力に乏しいこと。
本作をプレイしていてつくづくソウルライクゲームというのはレベルデザイン以前に舞台の景観というものが重要なのだということに気付かされました。
死にゲーなので当然何度も何度も同じ場所を繰り返し移動させられ続けるのに、こんな地味で退屈な景色ばかり連続すると気が滅入ってきます。
何十回も再挑戦することになったとしても鑑賞に耐え得る、美術強度の高い舞台を用意しないと、ソウルライクゲームの高い中毒性だけがひたすら前に出てしまい、中毒性が無味乾燥気味で刺々 しく感じます。
フロム・ソフトウェアは、世界トップクラスの圧倒的な美術センスでマイルドに中毒性を包み込みこの点をパーフェクトにクリアできているのに比べ、本作は最初のステージ以外は中毒性が中毒性のまま剥き出しなのでややプレイが重くなりがちです。
それに、プレイヤーをただただ迷子にするためだけに作られたとしか思えない、何度歩いても構造が頭に入ってこない縦に横にグチャグチャすぎるマップと、嫌がらせのごとくあらゆる箇所に大量に配置された敵(スクラップ集めしようとすると逆に便利)がストレスにしか感じません。
ソウルシリーズのように特徴的な敵を要所要所に目印代わりに配置して位置を見失わないようにするなど、地図がない代わりの丁寧な工夫がほぼ無く、それどころかわざと方向感覚を狂わせるためだけに不必要なまでにリフトで昇り降りさせたり、似たような敵配置ばかり(そもそも敵の種類が少なすぎて目印にしようもない)で混乱させたりと、制作者の悪意が透けて見えます。
さらに、次にどこに行けばいいのか最低限のアドバイスすらしてくれない凶悪な不親切さも相まって一周目を終えた際の本作への印象はかなり悪いものでした。
ただ、マップの構造が頭に入った状態で二周目をやると一周目の不満点が驚くほど気にならなくなり、逆に良い部分だけが浮き上がってくるので、多分最初から周回プレイを前提としてバランス調整をしているのだと思います。
インプラント装着スロット数が拡張され、武器やギアのアップグレード上限も引き上げられるため、二周目以降もモチベーションがまったく落ちませんでした。そこに体感で気付けると、一周目の不満もほぼ解消され、作品を冷静に判断出来るようになりました(一周目をクリアした直後はあまりにも迷い過ぎてストレスで半ばブチ切れていました)。
一周目はひたすら複雑極まりないマップで迷い続けるためややキツイですが、二周目以降は一周目とは比べ物にならないくらい本作のゲームとしてのポテンシャルの高さが堪能でき評価が大幅に向上します。
最後に
一周目クリアまで約25時間ほど。と言っても15時間くらいはどこに行けばいいのか分からず迷ってうろうろしていただけです。二周目はクリアまで約10時間強くらい(多分こっちが本来の適切なボリューム)。
これは、作り手の意図なのかどうか不明ですが、地味さがあまりにも突き抜けた結果、他のゲームでは味わえないほど体温が感じられない、プレイヤーを冷酷に突き放すのみの潤 い成分ゼロの乾き切ったソリッドな作風に仕上がっており、これはこれでもはや独自の魅力なのかもと思います。
後は、部位破壊システムの手間と報酬のバランスを改善し、全ステージが最初の舞台と同じくらい探索心を刺激するものだったら、もっともっと遥かに印象が上向きました。
余談
一周目の時点では気付けず、二周目でようやく理解できたのですが、ある場所である計画の賛成・反対を多数決しており、それがなぜ賛成多数になるのかという流れがほとんどブラックユーモアで、しかもこんな面白いアイデアをそれほど分かりやすく強調もしないので逆に感心させられました。
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