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【インドネシア映画】面白味は後退、派手さは前進 |『ザ・レイド GOKUDO』| レビュー 感想 評価

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トレーラー

評価:80/100

作品情報
公開日(日本) 2014年11月22日
上映時間

R15版 146分

R18版 150分

映画の概要

 
この作品は、イコ・ウワイス主演のインドネシア映画『ザ・レイド』の続編です。前作のような犯罪者の巣窟であるビル内のみに舞台を限定した特殊な設定ではなく、普通の映画となっています。
 
シチュエーションが屋内に集中し、話もシンプルでまとまりがあった前作に比べ、潜入捜査やギャング同士の人間ドラマなど、要素を盛り込みすぎて焦点がぼやけており、映画としての完成度は前作より大幅に劣ります。
 
しかし、相変わらず体を張った危険なアクションが連続するスリルに加え、予算が大幅に上がったど派手な屋外アクションも堪能でき、アクション映画としては及第点でした。
 

あらすじ

 
警察特殊部隊の隊員であるラマは、潜入捜査官だった兄がギャングによって殺害されたことをキッカケに、自身も潜入捜査官となることを決意する。
 
ギャングと繋がりのある警察幹部の汚職の証拠を見つけるため、ちょうど刑務所に服役中である地元ギャングのボスの息子ウチョと接触し親しくなれという作戦を命じられるラマ。
 
しかし、そのためには実際に犯罪を犯し囚人として刑務所に潜りこまなければならず、ラマは過酷な潜入捜査に身を投じる。
 

単調なドラマが幅を効かせる、やや退屈なストーリーパート

 
映画の前半部は、前作の建物内での展開をなぞるように限定された空間での格闘が続くものの、中盤以降は一気に開かれた街中でのアクションへと移行し、派手さが大幅に向上しました。
 
ただ、前作よりもアクションの派手さは増したものの、ストーリーラインがシンプルだった前作と比べ視点があっちこっちに飛びやや話がとっ散らかるという、良い意味でも悪い意味でもアクション映画の正統派続編ものの定番をなぞっており、見やすさは後退しています。
 
正直、話がやや混み合い気味な上に視点があちこち移動する群像劇スタイルの様な語り口は、アクション映画と食い合わせが悪くあまりうまくいっているとは思えません。
 
ドラマはそれ単体で持たせられるほどのものではなく、かつアクション映画なのに特にドラマ部分がアクションを強化するような役割も果たしていません
 

せっかく遠藤憲一が出演しているのに演出が下手すぎて演技力をまったく引き出せておらず役者が可哀想でした

 
全体的にドラマの薄さのため、アクションは凄いのに深みはなくあっさりな印象を受けてしまいます。
 
もう少し前作の仲間が次々と殺されていき徐々に復讐色が強まっていくような感情とアクションのリンクが欲しかったです。
 
ただ単にアクション的にやりたいことを優先し、それを薄いドラマの接着剤で繋いでいくだけなのにやたらドラマパートの尺が長く、やや退屈に感じました。
 

驚異の見本市的アクションシーン

 
今作はストーリーはイマイチなものの、アクション部分は前作同様に世界中のあらゆるジャンルのアクション映画の要素を凝縮したような、非常に作り手のアクションへのこだわりと自信を感じさせる凄まじさで、前作同様ここは圧倒されました。
 
この、アクションシーンの密度は畏怖の念すら覚えるほどです。
 
役者の動きどころか、カメラすら機動的で、役者に合わせカメラもアクションするため、役者とカメラマンのダブルアクションを堪能できます。
 
正直、全編カメラが揺れ動き続け、画面が貧乏揺すりをしているようでみっともないですが、それでもアクションシーンの迫力でお釣りがきます。
 
ただ、敵の殺し屋をコミカルに描いたせいで、主人公との対決において勝敗がどちらに転ぶのかといった緊張感が削がれてしまっているのはやや気になりました。
 
殺し屋のキャラ自体は非常に魅力的で見ているだけで楽しいのに、いかんせんおふざけが過ぎ、主人公のマジメでシリアスなトーンに比べると釣り合いが取れていません
 
その結果このふざけたキャラに負けるワケはないだろうという変な安心感を覚えてしまいます。
 
そのため、強敵に勝ったというカタルシスが前作のマッドドッグに比べると大幅に後退しており、アクションの物量でいったら遥かに今作が凌駕しているのに満足度はどうしても前作より低めです。
 

最後に

 
細かい文句は多々あるものの、アクション部分はそこらの凡百の映画を完全に凌駕しており、ここだけは安心して楽しめます。
 
 

 

 
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