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【海外ドラマ】キャプテン・アメリカの魂を継ぐ者 |『ファルコン&ウィンターソルジャー』| MCU アベンジャーズ |ディズニープラス | 感想 レビュー 評価

トレーラー

評価:90/100
作品情報
配信日 2021年
話数 全6話
アメリカ
映像配信サービス ディズニープラス

ドラマの概要

 
このドラマは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の一作かつ、ディズニープラスのオリジナルドラマシリーズの一本です。
 
時系列は『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降なので、まず『エンドゲーム』というアベンジャーズシリーズでも最重要作品まで見ることが先決で、絶対にコチラを先に見てはいけませんこの先も『エンドゲーム』のネタバレを多く含みます)。
 
 
ストーリーは、サノスの起こした事件で5年間に渡って消えていた帰還者たちを手厚く保護する優遇策に反対し過激な行動に出る“フラッグ・スマッシャーズ”という組織が誕生し、ファルコンとウィンターソルジャーの二人が組織のリーダーを追い世界中を駆け回るという内容です。
 
消滅を免れた者と帰還者たち、白人ヒーローと黒人ヒーローなど、アメリカが国内に抱える移民や人種差別、分断の問題を『エンドゲーム』以降の世界に反映させる試みが功を奏し非常に高度な政治的寓話劇に仕上がっており、MCUで言うとキャプテン・アメリカの単独シリーズのような魅力があります。
 
他のMCU作品と同様に明らかに描写が欠けていて説明不足など、数多くの欠陥も見受けられますが、キャプテン・アメリカの後継者問題を軸に、キャプテン・アメリカとは何か、そもそもヒーローの役割とは何なのかという深い問いを投げかけてくるストーリーでドラマシリーズとは思えないメッセージの重さが特徴です。
 
アクションは映画レベルどころか並みの映画を完全に凌駕する超絶クオリティで、ストーリーも細かい不満はあっても切実なメッセージが胸に突き刺さってくる鋭い切れ味と、新生キャプテン・アメリカ誕生を描くドラマとしては文句なしの完成度でした。
 

映画を凌駕する圧巻のヒーローアクション

 
まずこのドラマを見て最初の衝撃は映画レベルどころかそれすら超えているアクションの迫力でした。
 
他のMCU作品で言うと『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』が最も近く、敵が変な宇宙人などではなく基本的に銃で武装した人間という高めのリアリティラインでミリタリー色やポリティカルサスペンス色が濃いと、個人的にヒーロー映画ではベストな路線です。
 

全MCU作品の中でも『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』が一番好きです

 
まさに自分が見たいポリティカルヒーローもののど真ん中で、宇宙人とかインフィニティ・ストーンとか、魔術師とかヘンテコなものが出てこず、ひたすらアメリカ国内の政治問題にのみ集中してくれるためMCU作品の中で久しぶりの大当たりでした。
 
余計な存在が皆無なおかげでファルコンもウィンターソルジャーもヒーローというより元軍人といった地に足着いた描かれ方をしており、戦闘もスタイリッシュさと命のやり取りをする重みがバランス良く配分され、爽快感と同時に確かな緊張もあります。
 
中でもファルコン関連の空中戦アクションはどれもスタイリッシュかつ見せ方が新鮮で、今まで見たファルコンのアクションでもダントツの出来でした。
 
アクロバティックな空中戦も、並走する二台のトラックの上での戦闘も翼を使った華麗な動きがカッコ良く、瞬時に翼を盾にして弾丸を弾く所作もバッチリ決まっているなど、全体的に翼を印象づけるアクションが豊富でファルコンというヒーローの持ち味がこれでもかと活かされていました。
 
ただ、キャプテン・アメリカの後継者を決めるという話なため敵が基本パワータイプの超人オンリーで、空中戦を得意とする敵がいればファルコンのアクションを最大限活かせたとも思います。
 

キャプテン・アメリカに恥じないメッセージ性

 
単純にアクションを堪能するドラマとしても文句なしですが、なんといっても本作の最大の魅力はポリティカル(政治的)ヒーローものとしての完成度でした。
 
特に最終話のファルコンがアメリカ国民全員に対して披露するスピーチは圧巻でした。ヒーローとは社会に対してどのような責任を負うのかという問題に対して非常に誠実な解答をしていると同時に、黒人であるファルコンが星条旗を背負うヒーローになるということの重圧に対する嘘偽りのない真実の言葉を述べることで現実のアメリカにおける人種差別問題とも深くリンクし、まるでキング牧師オバマ大統領のスピーチに聞き入るがごとく、フィクションを超えて歴史的な出来事を目撃するような説得力があり、見ていて涙が止まらなくなりました。
 
さらに言うと、直前に二代目キャプテン・アメリカが自分に都合のいいように事実を改変し嘘をつくシーンを入れておくことで、ここでファルコンが視聴者と一緒に見てきたアメリカという国が抱える悲惨な歴史や現在進行形の差別や迫害を全て踏まえた上で本音で語ることの重要性が増し「真実を語る人こそキャプテン・アメリカになるべきだ!!」という信頼がより強固になります。
 
この最終話のスピーチは間違いなく全MCU作品の中でもベスト級の場面で、マーベルって自分たちの黒人ヒーローと歴史的な黒人運動家や黒人政治家を重ねてしまうとかどれほど大胆なんだと度肝を抜かれました。
 
フィクションの中のヒーローが行うスピーチの内容が現実のアメリカの有り様と重なり、フィクションと現実の境界が揺らぎ歴史の一場面を目撃したような感覚を味わうと、物語の力って本当に凄いんだなと心の底から震えました。
 

MCUではお馴染みのガバガバ脚本の残念さ

 
最終話のファルコンのスピーチだけでこのドラマは傑作だと思いますが、問題は結局いつものMCUと同様に必要な描写が足りず飛び飛びに見える構成のずさんさです。
 
普通、映画なら尺の都合上省略しなければならないような細かい描写をふんだんに採用できるのがドラマの魅力だと思いますが、本作もMCUの映画と同様にとにかく一つ一つの出来事の説得力を高める工夫が抜け落ちており、最終話のスピーチ以外の場所は欠点ばかり目立ちます。
 
他作品のどうでもいい宇宙人の話などは適当でも構いませんが、ポリティカル・サスペンスで政治や経済、軍事や諜報、歴史や地政学の描写が雑だとそれだけで白けるので、ここはいつもの倍は細部に気合いを入れてくれないと物語に真の深みが出ません。
 

ただでさえ全宇宙の半分の生命が消失し5年後に帰還した後という無茶苦茶な設定なのだから、もう少し詳しい説明がないと物語にスムーズに入っていけません

 
リアリティの欠片もない犯罪組織に、なんとなくの雰囲気だけでふんわりとしたテロ、経歴が曖昧で実在感に乏しい登場人物たちは魅力が薄く、どうしてもファルコンやウィンターソルジャーといったすでにお馴染みのキャラクターに頼るだけで、そこは唯一残念でした。
 

最後に

 
ポリティカル・サスペンスとしては相変わらず脚本がずさんという不満はあるものの、ドラマの水準を完全に超えているアクションシーンや最終話のスピーチは本当に見応えがあり、これだけでも見る価値があると思います。
 
加えて、キャプテン・アメリカというMCUの中でも最重要ヒーローの後継者を選ぶという非常に重大な目的も果たせており、この点は事前の予想を遙かに超えて大満足でした。
 

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