トレーラー
配信日 | 2019年7月26日 |
話数 | 全8話 |
評価 | 85/100 |
国 | アメリカ |
映像配信サービス | Amazonプライム・ビデオ |
ドラマの概要
このドラマは、同名タイトルのアメコミ(DCコミックス)を原作とするAmazonプライム限定のドラマシリーズです。
ストーリーは、大企業がスーパーヒーローたちを管理し独占的なヒーロービジネスで莫大な利益を上げる世界を舞台に、ヒーローに大切な人を奪われ復讐を誓った普通の人間チームである“ザ・ボーイズ”と、大企業の資本とメディアによる影響力、そして人間を超越した力を武器にドラッグ・脅迫・殺人とやりたい放題のヒーローたちとの戦いを描くコメディです。
原作がDCコミックスなのでDCの看板ヒーローであるスーパーマンやワンダーウーマンのパロディのようなヒーローが登場するだけでなく、ヒーローのスーパーパワーで人間の内臓や脳ミソがこれでもかと飛び散る残虐極まりない暴力描写や、ヒーローたちの変態セックス、一般人なんてただのゴミとしか思っていない倫理観が完全に欠如したヒーローたちの悪逆非道な振る舞いなど、コメディ要素が極限まで振り切っており完全に大人向けの内容となっています。
ヒーローが大企業に飼い慣らされビジネスの道具になり果てているという知的なアイデアや、DCコミックス原作なのにDCのヒーローたちをおちょくるような過激なパロディ要素など、この作品でないと堪能できない刺激に溢れており他のヒーローものとは一線を画する存在感があります。
ただ、設定や個々のアイデアは抜きん出て優れているのにストーリーそのものは非常に退屈で、見ていて眠くなることが何度もありました。
ヒーローの皮を被ったヴィランたち
このドラマは、原作がDCのアメコミだと知らずてっきりAmazonプライム用に作られたオリジナルドラマだと勘違いして見始めたため、最初は同じくヒーローパロディ要素があるDCコミックスの『ウォッチメン』っぽいという感想を抱きました。
『ウォッチメン』が好きな人は絶対に楽しめると思います
『ウォッチメン』はアメリカ政府がベトナム戦争に勝つためヒーローを兵器として利用したり、ウォーターゲート事件を告発しようとするワシントンポストの記者をヒーローに抹殺させたりと、実際のアメリカの歴史にヒーローを絡ませるという手法だったのに対し、この『ザ・ボーイズ』は芸能人やアスリート、宗教(キリスト教原理主義)の伝道師など、より身近な題材にヒーローを重ね、それらを全てブラックな笑いで業界ごと茶化すという手法が新鮮でした。
ただ『ザ・ボーイズ』というドラマで最も印象的だったのはそのような芸能人やアスリート、宗教的カリスマとヒーローを重ねておちょくるような知的な業界批判部分よりむしろちょっと引いてしまうくらい過激なコメディ部分です。
見る前はせいぜい同じくヒーローパロディ(マーベル)の『デッドプール』くらいのブラックさだと想像していたら、それの数倍から数十倍ほど過激なものを見せられ、良い意味で予想を裏切られました。
あまりにも低俗さが突き抜けすぎて声を出して笑う場面だらけな上に、こんなことをして方々 からクレームがこないのか本気で心配になるくらいアメリカ国内の様々な業界を全方位的におちょくっており、もはやサシャ・バロン・コーエンのコメディ映画のような気概を感じるほどです。
ドラマ内のあらゆる笑いがサシャ・バロン・コーエン作品に出てきても問題ないほど低俗で下品で過激なため、知的なこともやっているのにどうしても下品さの印象のほうが勝ります。
主人公の恋人がバラバラの肉片になって殺されるのが完全にギャグとか、ヒーローが変態プレイ中についうっかりスーパーパワーで相手をグッチャグチャにして殺してしまうとか、下劣なアイデアを見る者に嫌悪感を抱かせるほど本気で映像化しているのでこのドラマを作っている人たちはコメディに対してむしろ誠実だという安心感が持てます。
このドラマを見る前はどちらかというとヒーローをユーモラスに利用しアメリカの資本主義を皮肉って批判するような社会派の作品を想像していたのに、実際に見たらサシャ・バロン・コーエン映画のような「これを作っている連中は絶対にバカだ」と思いながらも、見る者を嫌悪させることを恐れない常軌を逸した品性下劣さにむしろ尊敬の念を覚えるといった類のものでした。
『ハウス・オブ・カード』をダメにしたような退屈さ
このドラマと似た面白さの作品を挙げるなら『ハウス・オブ・カード』が最も近く、本来なら高いモラルを要求される職業に就く者たちが腐敗して悪行三昧な様をおもしろ可笑しく描くという点が共通しています。
ただ『ハウス・オブ・カード』が圧倒的な面白さで一気見したのに対し、この『ザ・ボーイズ』はハッキリ言ってかなり退屈でした。
なぜなら、『ハウス・オブ・カード』は腐敗した政治家が主役で、基本的には悪事を働く側の視点で話が進むのに対し、この『ザ・ボーイズ』はどちらかというと悪徳ヒーローではなく、ヒーローを倒そうとする普通の人間チーム“ザ・ボーイズ”が中心なためです。
『ハウス・オブ・カード』で言うなら腐敗した政治家のスキャンダルを暴こうとするジャーナリスト側の視点が中心のようなかったるさで、何度も眠くなり視聴を中断しました。
正直『ハウス・オブ・カード』に登場したジャーナリストは一人も名前を覚えていないくらい記憶に残っておらず、多分『ハウス・オブ・カード』もジャーナリスト側を中心にしていたら同じくらい退屈だったと思います。
『ハウス・オブ・カード』や『ブレイキング・バッド』のような主人公が悪事を働く様をブラックユーモア全開で描くタイプの作品において、敵となるジャーナリストや警察サイドの話は主人公を危機的状況に追い込み緊張感を生むためのサスペンス要員や主人公が行う悪事に対して倫理的なブレーキをかける役割でしかなく、そちらの話が長く続くとダレます。
この『ザ・ボーイズ』は悪徳ヒーローではなく、それを倒そうとする人間チームを中心に話が進むせいでアイデアの秀逸さほどストーリーに興味が持てませんでした。
人間を超越した力を持つヒーローに対し、たとえ非力でも人としての優しさを決して忘れないちっぽけな人間チームを対比として配置したいという意図も、グズグズな人間ドラマも人間らしさを強調するためあえてやっているなど、不満部分に対して頭ではどうしてこの要素が必要なのか理由が分かっても、どうしても“ザ・ボーイズ”たちのやり取りが始まるとヒーローたちの圧倒的な存在感に比べると弱々しく眠くなってしまいます。
それに加え、会話がメインのドラマなのに会話部分のテンポが悪いという問題も深刻で、ヒーローが悪事をしている箇所は本当に楽しいのに、“ザ・ボーイズ”たちの退屈な会話が始まると眠くなると、楽しい部分と退屈な部分の落差が激しすぎて非常にバランスが悪く、正直もう一度最初から見直せと言われたら絶対に嫌です。
特に主人公に魅力が皆無なのでこの人が画面に映ると眠気に襲われます
最後に
大量のセックススキャンダルを抱えた傍若無人なヒーローたちが一般人をゴミのように殺す超ブラックなコメディとしては最高です。
ただ、悪徳ヒーローと敵対する本来なら主役であるはずの“ザ・ボーイズ”サイドのやり取りが退屈で、その上会話がメインのドラマにしては会話のテンポが非常に悪く見ていて高確率で眠くなるなど、問題も山積しており手放しで傑作と言えるほどはハマれませんでした。
ザ・ボーイズ シリーズ
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