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【PS4】テイルズオブシリーズ最高の人間讃歌! |『テイルズ オブ ベルセリア』| レビュー 感想 評価

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トレーラー

評価:80/100
作品情報
ジャンル 君が君らしく生きるためのRPG
発売日(日本国内) 2016年8月18日
開発(デベロッパー) バンダイナムコスタジオ
開発国 日本

ゲームの概要

 
このゲームは『テイルズ・オブ・ゼスティリア』の前日譚です。
 
ストーリーは、少数を犠牲にし多数を生かそうとする世界に反抗し抗(あらが)い続ける物語やメッセージは心を揺さぶられ、シリーズでも上位の熱さでした。
 
バトルは『ゼスティリア』よりは格段に爽快感がありシリーズの中でも上位の完成度です。ただ、癖が強いためバランスの整った『グレイセス』には至らないといったところです。
 
相変わらずバトル頼みな貧弱なゲーム性や、ダンジョンが致命的なまでに退屈でゲーム全体の足を大きく引っ張っているなど問題も多々あります。
 
しかし、それらを帳消しにするほど物語が主張するメッセージ性や、自分らしさを大切にするキャラクターが輝いており、シリーズの中でも好きな作品でした。
 

多数の幸福のために少数を切り捨て、人間の業を愚かと否定する世界に抗い、抗い、抗い続ける反逆の物語

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本作最大の魅力は、テイルズオブシリーズでもトップ級の心揺さぶられるストーリーの熱量です。ここまでテーマやメッセージがストレートに素晴らしいと思えたのは、一作目の『ファンタジア』以来でした。
 
ファンタジアにおける魔王ダオスのように、ゼスティリアに登場する世界を救う導師と、世界を災厄で滅ぼす災禍さいか顕主けんしゅという存在は絶対的なものではなく、対象を捉える立ち位置や角度によって善にも悪にも如何様いかようにも変化するという非常にテイルズオブシリーズらしいメッセージ性で、原点に立ち返ったなという感慨がありました。
 
誰よりも人を大切に想い深く愛してしまう者は自らを捨て世界を救う導師にもなり、大切な者のためだったら世界を滅ぼす魔王にもなる。
 
両者ともただ自分の大切な人を守るために戦っているだけのファンタジアにおけるクレスとダオスのように、主人公と最後に立ちはだかる敵はほとんど鏡像関係であるということをベルセリアとゼスティリア双方のストーリーを絡めて表現しており、今作をプレイすることで設定が繋がっているゼスティリアの導師と災禍の顕主の見え方も良い意味で180度変化しました。
 
そして同じく魔王の話である今作も、多数のために少数を犠牲にする世の不条理を恨み、みっともなく足掻いて足掻いて足掻き続け、その結果無関係の者まで巻き込み傷つけ、今度は自分が誰かの大切な人を奪い、恨まれ、それでも身も心も擦り切れボロボロになるまで足掻き続けたその先に、これまで歩んできた血まみれの足跡が誰かの人生の新たな道しるべとなり、自分の人生は無意味でなかったのだと噛み締める終盤はシリーズでも屈指の味わい深さで、これだけでも作品の虜になるほどです。
 
自分一人の力ではどうすることも出来ない過酷な現実を突きつけられても、反論できないほどの正論で言い負かされても、最後まで抗い続けてきた歴代の主人公たちの不屈の精神が宿ったようなメッセージは、これぞテイルズオブシリーズの神髄だなと大納得でした。
 

物語の熱さによって輝きを増すキャラクターたち

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本作はとにかくテーマやメッセージ性が素晴らし過ぎるので、それに引っ張られキャラクターもほぼ全員魅力的でした。
 
生まれつき周りを不幸にする呪いを背負わされるもそれを自分の一部と受け入れ正々堂々運命と対峙し続けるアイゼンや、生まれつき圧倒的な才能の差を持つ兄に何度打ち負かされても努力と不屈の信念で立ち上がり勝負を挑み続けるロクロウなど、諦めない、屈しない、何度打ちのめされても立ち上がり抗い続ける者たちばかりで、メイン・サブ両方とも全員その生き様に好感が持てます。
 
どんな困難に打ちのめされても絶対に折れない、才能がなくても努力と根性で立ち向かう、自分の考えを人に押しつけずその人らしさを何よりも尊重する、自分以外の誰からも命令なんてされない自分の生きる道は自分自身で選んで勝ち取るという、清々しい気質の人物ばかりで、これほど全キャラ好ましく人をイライラさせるようなキャラがいないテイルズも初めてかもしれません。
 
キャラクターの魅力を支えるのが非常に演技力の高い声優陣で、アニメ版の初代『ZOIDS(ゾイド)』で主人公のバン・フライハイトを演じていた熱血キャラを得意とする岸尾だいすけさんもロクロウにバッチリ合っているし、海外ドラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』で同じく残酷な運命を背負わされたティリオン・ラニスター(役のピーター・ディンクレイジの吹き替え)をこの上ない演技力で演じる森川智之さんのアイゼンは相変わらず似合い過ぎだし、ザビーダ役の津田健次郎さんの渋い演技は最高だしと、声優陣にはなんの不満もありません。
 
ただ、キャラクターの基本設定は良いのに、スケジュールがキツキツだったのか、全体的にイベント周りは突貫で作ったようなあらも目立ちます。各キャラのエピソードをきちんと掘り下げておらず、そこさえ万全なら間違いなくシリーズでも最高と言ってもいいほどでした。
 
せっかくシリーズでもトップ級の魅力を備えたキャラクターを用意したのに、描き方が中途半端という結果は悔やまれます。
 

爽快感はあるもののやや癖が強すぎるバトルシステム

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本作のバトルはシリーズでもコンボの爽快感を重視したものです。
 
特徴的なのはブレイクソウルという、SG(ソウルゲージ)というスタミナのような役割を果たすゲージを消費することでどのタイミングでも繰り出せる特殊な攻撃です。
 
このブレイクソウルは、主人公であるベルベットの場合、攻撃の間に挟むことでどんな攻撃からでも次の攻撃へとコンボを繋げられるため、システムに慣れると、何十連撃という凄まじい数のコンボ攻撃を簡単に叩き込めるようになります。
 
ブレイクソウルはSG(ソウルゲージ)を消費するため本来は連発できません。敵をスタンさせたり状態異常にしたり、撃破したりするとゲージが回復するため、ザコ敵がわらわらいるようなバトルでは、バトルの最初から最後まで敵に一撃も繰り出させずひたすらコンボを繋ぎ続けて一方的に蹂躙することすらも可能で、その快感はシリーズでも上位の部類です。
 
ただ、問題はブレイクソウルよりも、スタミナゲージの役割のSG(ソウルゲージ)の増減ルールのほうです。
 
SG(ソウルゲージ)は戦闘ごとに流動的で、前述したように敵をスタンさせたり状態異常にしたり撃破したりすると上昇するものの、逆に敵の攻撃でスタンさせられたり状態異常にさせられたりすると、上限が下がり続けます。
 
そのため、強力なボス戦などは一方的に失うだけで、まともに攻撃すら出来なくなりジリ貧になるという悪循環に陥ります。
 
なので、いつものテイルズのようにボス戦ほど様々なゲージが上昇しまくり秘奥義の応酬となるような激しいバトルが堪能できません。結果、ザコ敵戦はど派手で、ボス戦はSG(ソウルゲージ)を温存しながらちまちました攻撃しか出来ないという逆転現象が起き、変な手応えのバトルになっています。
 
本作のバトルは、調子の良い時はひたすら押せ押せで、悪い時はどこまでも行動が制限されるため、体感でバランスがいいとは思えませんでした。
 
つくづくグレイセスの何百回戦ってもまるで飽きない、一つたりとも欠点が存在しない突出したバトルの楽しさは異常だったなと、またグレイセスの評価が上がりました。
 

エクシリア返りしてしまった手抜き欠陥ダンジョン

 
本作の最大の問題と言っても過言ではないのがシリーズでもワースト級の手抜きダンジョンです。ダンジョンは進化どころか過去作に比べて大幅に退化しており、その出来の悪さは深刻でした。
 
ダンジョンは『エクシリア』のコピペ丸出しの個性の乏しさと、ゼスティリアの移動に苦痛が伴うだだっ広さというマイナス部分だけ抽出し混ぜ合わせたような最悪の構造で、その度を越すほどの単調さはゲーム全体の足を大きく引っ張っています。
 
移動しているだけで睡魔に襲われ続けるほど代わり映えしない景観と、未だに単純なプログラム丸出しで機械的な動きしか見せない興ざめの敵シンボル。もはや手抜き過ぎてパズル要素にすらなり損なっている呆れるほど無意味なギミックと、シリーズでここまでやる気の無さが透けて見えるものは珍しく、ダンジョンの作りに関しては褒める箇所はゼロに近いです。
 
ダンジョンを移動する苦痛に耐えていると、中盤(なんとゲームを開始して約26時間も経ってから)ようやくレアボードという街やフィールド、ダンジョンを高速で移動できるダッシュ移動のような機能を果たす乗り物が入手できます。ただ、このレアボードは新しい場所で使用するためには使いたいエリア内にあるボード使用を解放するポイントまで移動する必要があり手間が掛かります。
 
このポイントは、ダンジョンの場合ほとんど奥まった場所にあるため、結局長い時間かけてダンジョンを通常移動しなくてはならず、使い勝手が良くありません(ボード自体もあまり操作レスポンスが優れておらず、乗り心地が良くない)。
 

不満あれこれ

 
本作はダンジョンが手抜きで死ぬほど退屈という意外にも細かい不満がテンコ盛りです。
 
まず、スクリーンショットが特定エリア以外はまともに撮影できないこと。決まったエリア以外はスクショ撮影が出来ず、ゲームの思い出を記録することすら出来ません。世界を旅するRPGからスクリーンショット機能を抜くのは最悪でした。
 
次に成長システムが完全に手抜きなこと。レベルアップがただの空気で、これまでは一応されていたレベルアップ時の通知も、ただキャラアイコンの上に申し訳程度に文字が表示されるだけで、もはやレベルアップしたことをプレイヤーに伝える気すら感じられません。
 
このシリーズは成長システムなんてどうでもいいという態度が丸見えで、成長要素が肝であるRPGと呼ぶのすら躊躇するほどの無意味さです。
 
それに、ゲームの高級感という点においてはゼスティリアよりもむしろ後退しています。新しい事をやろうとして失敗しているゼスティリアのほうがまだ細部まで気合いが入っており、それに比べ本作は無難に作ったような軽さで気迫が感じられません。
 
気迫の無さに関係するのが相変わらず街がハリボテのような作り物感全開という不満です。街の住人が未だに全員直立不動で立っているだけでほとんど街中を歩き回らず、街全体が生きているように見えません。
 
最後に、これは不満と言うかややワガママな要望でオマケ要素を充実して欲しいことです。もう少しメインストーリーの息抜きになるようなつい寄り道したくなるオマケ要素を盛り込まないとバトルばかりで息が詰まります。
 
『龍が如く』のような中毒性の強いオマケでなくても、『ウィッチャー3』のグウェントでも『ファイナルファンタジー15』の釣り(7のゴールドソーサーでも、8や9のカードゲームでも、10のブリッツボール)でも、『ドラゴンクエスト』シリーズのカジノでも、なんなら『シェンムー』のガチャガチャでも何でもいいので、何かしらバトルから離れられ、世界の奥行きをより強化するような、このシリーズの代名詞的なオマケ要素は必要だと思います。
 
 

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一応異海探索というアイテムを自動で取得してくる要素もあるものの、これではまったく物足りない

最後に

 
クリアまで約43時間ほど。一見ボリュームがありそうに見えて、ほとんど無駄に広いだけのがらんどうダンジョンを歩き回る退屈な時間に奪われるため、そこまで内容は濃くありません。
 
歴代テイルズオブシリーズの集大成のような熱いテーマやメッセージ性が素晴らしいという長所と、それ以外のあらゆる部分がガタガタでゲームとしての基本部分は低レベルという短所の落差が激しく、バランスの良さとは無縁です。
 
優れている物語やキャラクター部分さえもディテールの詰めの甘さがたたりキレイに盛り上がり切らず、そこまで手放しで絶賛というほどではありません。
 
それでも、熱い、熱すぎる、人間の背負う業の全肯定、自分らしさを曲げることを強要してくる世界へ抗う者たちに送られる泥臭いまでのエールと、欠点なんて吹き飛ばすほどメッセージが胸に突き刺さり、シリーズでもベスト級の大好きな作品になりました。
 

余談

 
ゼスティリアをプレイした後なため、当然アイゼンがああなる理由をいつ説明するのかずっと待ち続けていたら、クリアしてもまるで語られずポカンとさせられました。
 
最重要と言っても過言ではないアイゼンのエピソードはなぜかサブストーリーのほうで語られるので、ただ単にクリアするだけだとゼスティリアへと話が繋がらないという問題が発生します。
 
ゼスティリアで納得できなかった展開に一応の救いをもたらすような話なので、アイゼンのエピソードはメインストーリーに組み込んだほうが良かったのではないかと思いました。
 

テイルズオブシリーズ

タイトル
ハード
テイルズ オブ グレイセスf(エフ) PS3
テイルズ オブ エクシリア PS3
テイルズ オブ エクシリア2 PS3
テイルズ オブ ゼスティリア PS3
 

 

 

 
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