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【サイエンス】地球、約46億年の歴史をたった三つの石で読み解く良著!! |『三つの石で地球がわかる -岩石がひもとくこの星のなりたち-』| ブルーバックス | 藤岡換太郞 | 書評 レビュー 感想

本の情報
著者 藤岡換太郞
出版日 2017年5月17日
難易度 難しい
オススメ度
ページ数 約224ページ

本の概要

 
この本は、橄欖かんらん玄武岩花崗かこうという地球に最もありふれた、しかし地球の成り立ちを知る上で科学的に重要となる三つの岩石を中心地球の進化の歴史をひも解いていくブルーバックスの科学本です。
 
地学の初心者へ向け、石をただ暗記するだけの作業にならないよう最大限配慮し、噛み砕いて易しく書かれた本ですが、それでも一読するだけでは理解できない難解さのため、ある程度読み進めるのに忍耐が必要でした。
 
内容を理解できると、地球内部の構造や岩石が生成されるメカニズム、そして何よりも地球が約46億年かけて今に至る大まかな流れを脳内で想像することが出来る、知的興奮に満ち溢れた本です。
 

暗記ではなく流れで掴む石と地球の歴史

 

この本は、地球が約46億年かけて今の状態に至る過程で岩石がどのような役割を果たしたのか、その大まかな流れを掴むことを主眼としており、かなり初心者向けの内容となっています。
 
ただ、初心者向けといっても石を構成する元素について理解しなければならず、ある程度初歩的な科学知識は要求されるため、そこまで読みやすいとも思えませんでした。
 

科学にまったく興味が無くて石について知りたい人向けというより、普段ブルーバックスを好んで読む科学好きの読者の中で石についても知りたい人向けといった感じですね

 
出来ればこの本を読む前に『元素周期表で世界はすべて読み解ける』など、元素について詳しい解説がされている本を一冊読み、元素へのイメージを固めてからのほうがより理解しやすいと思います。
 
自分の場合はポストイットを貼りまくり、何度も分からない箇所を読み直し、難解な部分はノートにメモを取りながら読んでも書いてあることの半分も理解しているかどうか怪しく、ただ単に一読しただけではほとんど内容が頭に入ってきません
 
ただ、これ以上簡単にしてしまうと元素によって石と宇宙(超新星爆発や隕石といった宇宙からもたらされた元素)が繋がる興奮や、石の結晶内部にたった元素一つ分の空白が生じるだけで岩石が地球内部のマントルに影響を与えるダイナミズムを理解できる快感まで損なわれる危険性がありこれがギリギリの妥協点かなとも思います。
 
この暗記ではなく流れで理解させるというアプローチは非常に効果的で、読み進めるごとに岩石がどのように生成され、それがどのような形で地表に影響を与えるのか脳内でイメージが出来、本を読む前と後で地球内部のマントルや地殻の見え方が激変しました。
 

石の歴史と地球の歴史が重なる瞬間

 

この本を読んで最も感動したのが、岩石に含まれる元素の変化という極めてミクロの話から地殻という地球を覆う岩石のまくというマクロな話まで石を中心にスケールの異なる話題がシームレスに繋がるダイナミックさです。
 
気温が低いと池や湖の水が凍って氷が張るのと同じく、原始地球を覆うドロドロのマグマが冷えて固まり岩石となり、その岩石が地球上を覆う地殻となりプレートを形成し、そのプレートは絶えず動き続け、その上に海や大陸が生まれ、そこで人間は生活しているという途方もないスケールにはとことん圧倒されました。
 
この本が個々の石の説明より、石と地球誕生の関係性やその流れを理解させるというコンセプトを優先しているおかげで、マントルや地殻、プレートやプレートテクトニクスという漠然と知っている単語が小気味よく連結し、脳内の地球儀にアニメーションが加わるような興奮があります。
 
地球の構造や地球上の現在進行形で起こっている変化をただCGで映像として見せられるより、その動きを自分自身の頭の中で自力で再現できるほうがより感動的です。
 

最後に

 
この本を読むまでは地球の表面を地殻が覆っているということに特に疑問を持たず当たり前のことだと思っていました。しかし、いかにマグマが冷えて固まった岩石により地殻が形成され、それが地球全体を覆っていることが奇跡的なのか理解でき地学というものの奥深さに感動します。
 
地球の進化史を何の変哲もない身近に存在する石で俯瞰ふかんするという試みにより、石をキッカケに巨大なスケールを身近に引き寄せて考えられる非常に刺激的な読書体験を味わえる一冊でした。
 
 

 

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