えんみゅ~ -えんためみゅーじあむ-

書評を中心にしたエンタメ作品総合レビューブログ

えんみゅ~

リィンバウムではない不可思議な世界 「サモンナイトエクステーゼ 夜明けの翼」〈レビュー・感想〉

f:id:chitose0723:20191101172223j:plain

OPアニメーション

評価:60/100

作品情報
ジャンル アクションRPG
発売日(日本国内) 2005年8月4日
開発(デベロッパー) フライト・プラン
開発国 日本

短評

 
 アクションゲームとしては戦闘の駆け引きが物足りず、RPGとしては成長要素やバトルのセッティング部分など不満が残る内容。
 
 アクションRPGの基本に忠実な部分には好感が持てるが、基本に忠実なだけでそれ以上の飛躍がない。
 
 中盤にはゲームらしさを逆手に取った衝撃展開が用意されているものの、下準備が十分でないためインパクトが弱く設定の面白さを充分発揮できていない。
 

メタ的な設定を生かしきれない雑なシナリオ

f:id:chitose0723:20180319161739j:plain
 
 本作はサモンナイトシリーズにも関わらず、お馴染みのリィンバウムとは異なる世界が舞台で、序盤からこの世界の特殊なルールの存在が示唆されるという不思議な始まり方をします。
 
 物語が進むと、この特殊なルールがなぜ存在するのかが明らかとなっていき、この世界の見え方が変質します。しかし、アイデアの奇抜さだけに頼りそれをプレイヤーに提示する手法に工夫が足りておらず、この部分の衝撃はイマイチでした。
 
 なぜ序盤の敵は弱く、ゲームが進むごとに機械的に強くなっていくのか?など、ありそうであまりない、ゲームがゲームっぽいことの理屈付けがされるというアイデアは興味深いのに、その反則的なメタ設定を生かすようにシナリオが作り込まれていません。
 
 やりようによっては、このアイデアだけでゲーム史に残れたかもしれないのに、作り込みが浅く、せっかくの面白い試みが空回りしています。
 
 特に、序盤の一見穏やかに見える人々の営みの陰に潜む不気味さを際立てる工夫が足りないせいで、中盤以降世界の見え方が一変する際の落差が出せていないことが悔やまれます。
 
 幸せそうに暮らす人達が実は哀れな存在であることが判明する中盤以降、世界そのものから平穏というメッキが剥がれ、正義と悪が逆転し、他人に親切にしてきたこれまでの振る舞いが実は人の将来を殺すかもしれないという可能性に気づかされ、プレイヤーがしてきた行為の意味が変質する展開はうまくやれば極上のストーリー体験になり得たはずです。
 
 もっと人々のイデオロギーの対立構図などを丁寧に描き、なぜ意見が対立する者たちがいるのか、そのどちらが正しいのか、プレイヤーに考えさせ、悩ませるプロセスにもっと尺を割くべきでした。
 
 サモンナイトシリーズの牧歌的なトーンを逆手に取った設定は巧みなのに、それをどうゲームとして体験させるかのテクニックで失敗しており、面白さを最大限生かせていません。
 
 そもそもこのネタを成立させるにはアクションRPGというジャンル自体と相性が悪く、もっとシナリオや世界観設定を作り込め、自然にそれをプレイヤーに提示できるようなアドベンチャー的なパートがあるようなジャンルでないと難しいのかもしれません。
 

主人公をスイッチさせるタイミングが微妙

f:id:chitose0723:20180319161627j:plain
 
 本作はゲーム中、いつでも男主人公と女主人公の操作を切り替えられます。それぞれが装備する召喚獣に応じて使い分けたり、待機している側はHP・MPが回復できたりと、キャラクターを交換するタイプのアクションゲームとしては標準的な作りです。
 
 ただ、二人の差別化が甘く、結局それぞれのキャラでしかダメージを与えられない敵というご都合主義的なものを配置し、ゲーム側の要請で半ば強制的にスイッチを押しつけられる強引な作りが目立ちます。
 
 同じ召喚術を両方のキャラが共同で使えるため、どちらでも同じような属性攻撃が可能など、それほど戦い方に違いが無く、結果回復のためのスイッチにしかなっておらず意味をなしていません。
 
 キャラスイッチは通常攻撃タイプと召喚術タイプなど戦い方にもう少し差異を持たせ、受動的でなくプレイヤーが敵に応じて能動的にしたくなるようなバランスのほうが好ましかったです。
 

リアルタイム戦闘は○、セッティングは×

f:id:chitose0723:20180319161756j:plain
 
 戦闘中に召喚術をリアルタイム発動できるという点はアクションゲームとしては及第点なものの、全体の難易度が低すぎることの弊害で召喚術という選択肢を用いずとも通常攻撃のごり押しで敵を倒せてしまえるためあまり意味がありません。
 
 召喚術の攻撃力も男女主人公とも軽い相性があるだけで、大して変わらず、どちらがどんな召喚術を使っても結果に差異が生じません。もっと召喚術の威力を数値化して威力を可視化させたり、男主人公と女主人公で使える召喚術に違いを持たせたりしないと、すぐに飽きが来てしまいます。
 
 ポケットという欄に召喚術をセットし、セットされている召喚術を戦闘中にリアルタイムで切り替えながら戦えるというインターフェース周りは非常に好みでした。そのため、もっと召喚術を切り替えながら戦う戦闘にスリルがあったら楽しさが倍増していたはずです。
 
 それに、リアルタイム戦闘なので出来ればメニュー画面を開くのもリアルタイムであるほうが好ましかったです。時間が止まるタイプのメニュー画面のせいで、敵が目の前にいるのに平気でセッティングを弄れるため緊張感が生じません。
 
 出来ればどこか特定の場所でしか召喚術のセッティングができないシステムにしたほうが、敵に合わせてどの召喚術をセットするのか慎重な判断を求められ、もう少し戦略性が生じたはずです。
 

召喚術を使った宝箱回収はいい感じ

 
 本作は、バトルだけでなくフィールド探索や謎解きにも召喚術を利用するアドベンチャー要素もあります。
 
 ただ、メインの謎解き関連はほぼ特定の召喚術を言われるまま使う事で自動的にクリアできるためあまり達成感はありません。
 
 しかし、通常移動では行くことができない場所に置かれた宝箱を召喚術を用いて回収する作業はそこそこ面白く、つい獲り逃した宝箱を探してあちこち歩き回ってしまいます。
 
 召喚術の利用の仕方がうまいというよりは、わざとらしく序盤で取れない場所にある宝箱を見せ印象づけした後でその回収方法(召喚術)を遅れて入手させるという、タイミングのずらし方が巧みで、召喚術を手に入れる度に「これであそこにあった宝箱の場所まで行けるのではないか?」とついつい試したくなる魅力がありました。
 
 宝箱が見えているのに取れないというストレスがいい感じで膨らんだ後に回収可能となるため、より宝箱のある場所に辿り着いた時の快感が増すという効果があります。
 

不満あれこれ

 
 プレイしていると引っかかるのは、2Dドットキャラの挙動がぎこちないことです。もっとモーションの動画枚数を増やしてアニメーションを滑らかにしてくれないと動きがカクカクしていて気持ち悪いです。後、些細な不満は、キャラの向きが変わると武器を持つ手が右手になったり左手になったりと統一感がない点も引っかかってしまい、集中できませんでした。
 
 それに、ラスボスが負け組の嫉妬心の塊というやや上から目線のような設定はどうも作り手の選民意識のようなものが透けて見える様で好きになれませんでした。
 

最後に

 
 クリアまで約15時間ほど。
 
 面白味を感じる箇所は序盤で消費し尽くし、後半は作業化していく典型的な手数が足りないシステムで、全体的な満足度は低めです。
 
 好みな点ももちらほらあるものの、物足りなさのほうがより強く、あまり印象には残りません。
 

サモンナイトシリーズ