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評価:60/100
ジャンル | アクションRPG |
発売日(日本国内) | 2005年8月4日 |
開発(デベロッパー) | フライト・プラン |
開発国 | 日本 |
- ゲームの概要
- メタ的な設定を生かしきれない雑なシナリオ
- 主人公をスイッチさせるタイミングが微妙
- リアルタイム戦闘は○、セッティングは×
- 召喚術を使った宝箱回収はいい感じ
- 不満あれこれ
- 最後に
- サモンナイトシリーズ
ゲームの概要
この作品は、召喚術を駆使して戦うシミュレーションRPG『サモンナイト』シリーズの外伝です。コチラのゲームジャンルはシミュレーションRPGではなくアクションRPGとなっています。
本編シリーズとの関連はなく、舞台も『サモンナイト』シリーズお馴染みのリィンバウムではありません。
アクションRPGとしては基本に忠実で、かつ『サモンナイト』シリーズお馴染みの召喚術もうまく絡めており、そこそこの楽しさはあります。ただ基本に忠実なだけでそれ以上の飛躍はなく、平均的なアクションRPGと比べても完成度は高くありません。
アクションゲームとしては戦闘の駆け引きが足りず、RPGとしては成長要素やバトルのセッティング部分などが物足りないと、どちらのジャンルとしても不満が残る内容でした。
ストーリーも、中盤に衝撃展開が用意されてはいますが、下準備が不足し、さほど盛り上がりません。
総じて、バトルもストーリーも中途半端でただの凡作といった出来でした。
メタ的な設定を生かしきれない雑なシナリオ

本作は『サモンナイト』シリーズにも関わらず、お馴染みのリィンバウムとは異なる世界が舞台で、序盤からこの世界の特殊なルールの存在が示唆されるという不思議な始まり方をします。
物語が進むと、この特殊なルールがなぜ存在するのかが明らかとなり、この世界の見え方が徐々に変質していきます。
しかし、アイデアの奇抜さだけに頼りそれをプレイヤーに提示する手法に工夫が足りておらず、この部分の衝撃はイマイチでした。
なぜゲームでは序盤の敵は弱く、進むごとに敵は機械的に強くなっていくのか?など、ゲームの構造そのものへ踏み込んでいくというアイデアは興味深いのに、その反則的なメタ設定を生かすようにシナリオが作り込まれていません。
やりようによっては、このアイデアだけでゲーム史に残れたかもしれないのに、せっかくの面白い試みが空回りしています。
特に、序盤の一見穏やかに見える人々の営みの陰に潜む過酷な現実をうまく拾えておらず、そのせいで中盤以降世界の見え方が一変する際の落差が出せていないことが悔やまれます。
幸せそうに暮らす人達が実は哀れな存在であることが判明する中盤以降、世界そのものから平穏というメッキが剥がれ、正義と悪が逆転し、他人に親切にしてきたこれまでの振る舞いが実は人の将来を殺すかもしれないという可能性に気づく、プレイヤーがしてきた行為の意味合いが変質する恐怖はうまくやれば極上のゲーム体験になっていたはずです。
もっと人々のイデオロギーの対立構図などを丁寧に描き、なぜ意見が対立する者たちがいるのか、そのどちらが正しいのか、プレイヤーに考えさせ、悩ませるプロセスにもっと尺を割くべきでした。
『サモンナイト』シリーズの牧歌的なトーンを逆手に取った設定は巧みなのに、それをどうゲームとして体験させるかのテクニックで失敗しており面白さを最大限生かせていません。
そもそもこのネタを成立させるにはアクションRPGというジャンル自体と相性が悪く、もっとシナリオや世界観設定を作り込め、自然にそれをプレイヤーに提示できるようなアドベンチャー的なパートがあるようなジャンルでないと難しいのかもしれません。
主人公をスイッチさせるタイミングが微妙

本作はゲーム中、いつでも男主人公と女主人公の操作を交換可能で、それぞれが装備する召喚獣に応じて使い分けたり、待機している側はHP・MPが回復できたりと、キャラクターを交換するタイプのアクションゲームとしては標準的な作りです。
ただ、二人の差別化が甘く、結局それぞれのキャラでしかダメージを与えられない敵というご都合主義的なものを配置し、ゲーム側の要請で半ば強制的にスイッチを押しつけられる強引な作りが目立ちます。
同じ召喚術を両方のキャラが共同で使えるため、どちらでも同じような属性攻撃が可能など、それほど戦い方に違いがありません。
キャラスイッチは通常攻撃タイプと召喚術タイプなど戦い方にもう少し差異を持たせ、受動的でなくプレイヤーが敵に応じて能動的にしたくなるようなバランスのほうが好ましかったです。
リアルタイム戦闘は○、セッティングは×

戦闘中に召喚術をリアルタイム発動できるという点はシリーズらしさをキチンと演出できており、サモンナイトをアクションRPGにするという課題は最低限クリアできていると思います。
しかし、アクションゲームとしては全体の難易度が低すぎることの弊害で召喚術という選択肢を用いずとも通常攻撃のごり押しで敵を倒せてしまえるため、そこまで召喚術が目立ちません。
召喚術の攻撃力も男女主人公とも軽い相性があるだけで、大して変わらず。もっと召喚術の威力を数値化して威力を可視化させたり、男主人公と女主人公で使える召喚術に違いを持たせたりしないと、すぐに飽きてしまいます。
ポケットという欄に召喚術をセットし、セットされている召喚術を戦闘中にリアルタイムで切り替えながら使えるというインターフェース周りは非常に好みでした。
そのため、もっと戦況に応じて召喚術を切り替えながら戦う戦闘にスリルがあったら楽しさが倍増していたと思います。
それに、リアルタイム戦闘なので出来ればメニュー画面を開くのもリアルタイムであるほうが好ましく、時間が止まるタイプのメニュー画面のせいで、敵が目の前にいるのに平気でセッティングを弄れるため緊張感がありませんでした。
出来ればどこか特定の場所でしか召喚術のセッティングができないようにしたほうが、敵に合わせてどの召喚術をセットするのか慎重な判断を求められ、もう少し戦略性が増したはずです。
召喚術を使った宝箱回収はいい感じ
本作は、バトルだけでなくフィールド探索や謎解きにも召喚術を利用するアドベンチャー要素もあります。
ただ、メインの謎解き関連はほぼ特定の召喚術を言われるまま使う事で自動的にクリアできるためあまり達成感はありません。
しかし、通常移動では行くことができない場所に置かれた宝箱を召喚術を用いて回収する作業はそこそこ面白く、つい獲り逃した宝箱を探してあちこち歩き回ってしまいます。
召喚術の利用の仕方がうまいというよりは、わざとらしく序盤で取れない場所にある宝箱を見せ付けた後でその回収方法(召喚術)を遅れて入手させるというタイミングのずらし方が巧みで、召喚術を手に入れる度についつい戻って召喚術を試したい衝動に駆られることが何度もありました。
この宝箱回収に召喚術を用いるというアイデアも『サモンナイト』シリーズらしさをうまくアクションゲーム的に引き出せていると思います。
不満あれこれ
プレイしていると引っかかるのは、2Dドットキャラの挙動がぎこちないことです。
もっとモーションの動画枚数を増やしてアニメーションを滑らかにしてくれないと動きがカクカクしていて気持ち悪く感じます。
後、些細な不満は、キャラの向きが変わると武器を持つ手が右手になったり左手になったりと統一感がない点も引っかかってしまい集中できませんでした。
加えて、ラスボスが負け組の嫉妬心の塊というやや上から目線のような設定はどうも作り手の選民意識のようなものが透けて見える様で好きになれません。こんな設定にしたら『サモンナイト』シリーズのイメージが悪化します。
最後に
クリアまで約15時間ほど。
面白味を感じる箇所は序盤で消費し尽くし、後半は作業化していく典型的な手数が足りないゲームで、全体的な満足度は低めです。
サモンナイトシリーズ
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