トレーラー
評価:70/100
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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発売日
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2015年8月4日(steam版)
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開発(デベロッパー)
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Uppercut Games
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開発国
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オーストラリア
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ゲームエンジン
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Unreal Engine 4
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短評
アクションアドベンチャーとしてはただの凡作だが、プレイヤーに姉弟の背景を自然と想像させる様なシンプルながら丁寧でセンスの良いストーリーテリングが魅力的。
少女を乗せたボート(漁船)は不穏さを推進力に水没都市をゆく
低価格のインディペンデントゲームだけにグラフィックや操作性はとてもフルプライスゲームと比較にはなりませんが、それでも舞台となる水没都市にはしっかりと表情があり、昼には陽光が降りそそぎキラキラと輝く水面に癒され、一転夜の墨汁を垂らしたような薄気味悪い暗い海は、生命の源である海への原始的な恐怖を呼び覚まされました。
美しさと不気味さが紙一重のバランスで成立している背景には非常に分かりやすく上田文人作品(特にワンダと巨象)の影響が垣間見られ、特に怪我をして瀕死の弟をベッドに寝かしつけ、その場所をベースとして周囲を探索するという作りがいくらなんでもワンダ過ぎるきらいもありますが、水没都市という独自の舞台が魅力的なので気にしないことに。
ゲームは水没都市を探索→弟を助けるための物資がある建物を発見→ひたすら高い建造物をよじ登り物資を回収→また探索・・・・・・と、延々このワンパターンの繰り返しのため、正直最初は刺激に乏しく単調極まりない作業ゲーのような印象を受けました。
唯一水没都市のあちこちに少女が乗るボートの加速用のブーストゲージを増やすためのパーツ(壊れたボート)が点在しこれを発見できるとやや嬉しい程度で、とてもアクションアドベンチャーとして及第点の面白さには達していない・・・・・・のですが、物資を回収するとオープンされる最初はなんのこっちゃ分からない子供が描いたようなヒエログリフっぽい記号的な絵がそこそこ集まってくると状況が一変することに。
実はこの絵が姉と弟がこれまで辿ってきた経緯を説明したものだと分かった瞬間、本作に強烈な物語が立ち上がります。
なぜ二人は漁船に乗っているのか。なぜ弟は大怪我をしているのか。なぜ姉はそこまで弟に献身的なのか。多くの謎が物資を回収するごとにオープンされていくため、ぐっとサスペンス要素が増し、話の先が気になって仕方がなくなります。
二人がこうなった経緯が分かると、物悲しさを湛えたようなBGMが実は姉の贖罪の意識を反映しているかの様に聴こえたり、体が徐々に変色していくのも罪の意識が体を蝕んでいるように見えたりと、この作品の景色そのものが変質する事態に。
プレイヤーに対して一切説明的なことをせず、ただ子供の描いたような絵を見せるだけで頭の中に子供たちの過去を想像させてしまうストーリーテリングの巧みさに頭が下がりました。
この想像力を掻き立てる手法から頭に浮かんだゲームが、こちらは兄が妹を探すLIMBO(リンボー)でした。
もしかしたら体が蝕まれていく姉の瞳に映るこの美しくすらある水没都市は、プレイヤーの眼に映るそれとは異なり、リンボーで妹を探すために兄が見たような地獄巡りの舞台と近いものなのではないかと考えさせられ、プレイ中はあれやこれやの想像が止まらず、非常に密度の濃い物語体験を味わえました。
最後に
クリアまで約3時間ほど。
アクションアドベンチャーとしては凡作ですが、ストーリーテリングは斬新でとても強く印象に残るステキな作品でした。