著者 | 三津田信三 |
出版日 | 2020年7月20日 |
評価 | 75/100 |
オススメ度 | - |
ページ数 | 約291ページ |
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小説の概要
この作品は、別々の人物が残した記録を読み解くことで徐々に事件の共通点や全容が浮かびあがっていくというスタイルを持つ幽霊屋敷シリーズの3作目です。
今作は、新社会人が空き地に出没する家の幽霊に招かれた体験が書き残されたノート、年配の女性がそこにあるのに見えない家を見つけようとした顛末が記された手紙、精神科医が箱庭療法と似た心宅療法という治療法を患者に行った診療記録という三つのエピソードが語られます。
ラストの謎解きパートはそこそこの楽しさですが、幽霊屋敷シリーズの中では最もアイデアにインパクトがなく、単純なホラー小説としても怖さが大幅に不足していると、どちらかというとホラーよりミステリー寄りでした。
謎解きと言っても、家や怪奇現象(事件)そのものではなくただ単に登場人物の関係性を解き明かすだけなのでさほど衝撃もありません
アイデアも怖さも謎解きも何もかもパワー不足のシリーズ3作目
毎度、先が気になる恐怖展開の連続や、ラストの痛快な謎解き、作者本人が探偵役として小説内に登場し事件の全容を推理していくというメタ構造など、様々な仕掛けや遊び心溢れるアイデアで楽しませてくれる三津田信三作品ですが、今作に限ってはどれも中途半端で突き抜けるような魅力は皆無でした。
まず、幽霊が出没する家でなく、家そのものが幽霊という根本のアイデアからして前作の『わざと忌み家を建てて棲む』に登場する曰く付きの建物を一箇所に集めた集合住宅、烏合 邸のわくわく感に比べると足下にも及びません。
それどころか、読んでいて怖さを覚えるのは結局のところ家そのものに対してではなく、家の中で得体の知れない怪異と遭遇する場面なことなど、家そのものが幽霊というアイデアがまったくピンときません。
家そのものが幽霊であるという点をやたら強調しているのに、家より怪異のほうが目立ったら本末転倒だと思います
この、三つのエピソードの核となる“そこにあるのに見えない家”という設定が弱いことで、話にまるで引力がなく幽霊屋敷シリーズ3作の中でも最も影が薄い作品でした。
さらに言うと、今作はホラーというよりミステリーに寄っておりラストの謎解きパートに重きが置かれています。そのため、個々のエピソードが余計謎解き前提になっており、それぞれの話単体の魅力が乏しくホラー小説と思って読むと期待外れです。
ホラーミステリーにするなら個々のエピソードでしっかり怖がらせた後でさらにその奥に真実が隠されており驚愕するという流れにしてくれないと、単に退屈な話が後で繋がるだけにしかならず、どうしても個々の話そのものに対して前のめりの姿勢になるほど興味が持てません。
今作は、そこにあるのに見えない家という表面上のアイデアだけで書かれたような薄さで、家そのものをどう印象づけるのかという工夫がまるで感じられず、話が記憶に残りません。
おわりに
幽霊屋敷シリーズの中では怖さがワーストですが、それでも三津田信三作品なので恐怖場面はしっかり用意され、なおかつラストに謎解きパートもあると、ホラーミステリーとしては一定の面白さは確実にあります。
ただ、個々のエピソードがイマイチなのに他作品との関連性にやたら言及される場面が多く、ここは個人的に退屈でした。
結局、他作品の宣伝が小説内に入っている形となり、広告を読まされているような気分になります
幽霊屋敷シリーズ
タイトル
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出版年
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どこの家にも怖いものはいる #1 | 2014年 |
2017年 |
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