発光本棚

書評ブログ

発光本棚

【TVアニメ】剣と魔法から荒野と硝煙の世界へ |『ソードアート・オンラインII(2期)』| 感想 レビュー 評価

f:id:chitose0723:20161031223449j:plain

トレーラー

評価:75/100

作品情報
放送期間 2014年7月~12月
話数 全24話
アニメ制作会社 A-1 Pictures

アニメの概要

 
この作品は、WEB小説を元に出版されたライトノベル『ソードアートオンライン』を原作とするTVアニメの2期です。
 
原作小説は未読です。
 
1期のファンタジー色の強いSAOやアルヴヘイムから、GGO(ガンゲイル・オンライン)という荒野と硝煙の匂いを漂わせる殺伐たるオンラインゲームへ主要な舞台が移るのが2期最大の特徴です。
 
前半は、海外のサスペンスドラマにも匹敵する先が気になる刺激的なストーリー展開で、GGOの設定も細かく描写され過去のオンラインゲームに引けを取りません。
 
後半は、打って変わりシリアスなドラマとなり、それぞれ異なる方向性の物語が楽しめます。
 
それに、1期のハーレム要素が目障りな内容から一転し、非常に落ち着いた作風に変貌したため見やすさが大幅に向上しました。
 

あらすじ

 
 ゲーム内通貨をリアルマネーに変換できる、日本で唯一プロのプレーヤーが存在するVR(バーチャルリアリティ)MMOゲームであるGGO(ガンゲイル・オンライン)
 
そんなコアなゲーマーが集うGGO内でデスガンを名乗る謎のプレーヤーが銃弾を放ったのとほぼ同時刻、撃たれた側のプレーヤーが現実で死亡するという不可解な事件が発生する。
 
キリトは、総務省仮想課の菊岡誠二郎からの依頼を受け、デスガンがゲーム内で人を撃つだけで本当に現実の人間を死に至らしめることが可能なのか調査するためGGOに潜入する。
 

ハーレム要素の反省と克服

 
本作を見る前の一番の懸念材料は前シリーズの度を越した不快なハーレム要素でした。しかし、2期ではハーレム要素は鳴りを潜めており、とりあえずそこは一安心です。
 
主人公のキリトが前シリーズのヒロインだったアスナと恋人関係になっているため、二人のいちゃラブが増えてはいるものの、不快さまではいかない程度には抑制されており作り手の反省が窺えます。
 
それどころか、前半部のヒロインであるシノンに至っては、最終的に主人公に好感を持つという下手をすれば前シリーズのハーレム展開の二の舞にもなりかねない危ない立ち位置ながら、主人公のキリトと同じ様な悩みを共有させ、それをお互いが吐露し合い徐々に溝が埋まっていくプロセスを描くため、これまでの女性キャラの中でも最も地に足着いた普通のキャラに見えました。
 
二人が共有する悩みがいくら何でも現実離れし過ぎているとか、相変わらず意味もなくエロい画を挟むなど問題も多々あるものの、今作は全体的にアンチハーレムを意識しており前シリーズとは比べものにならないほど見やすくなりました。
 

間延びしているのに掘り下げ不足という残念な構成のバランス

 
設定自体は惹かれる要素が多数あり、サスペンスも程よく効いていますが、今作は構成部分に非常に多くの問題を抱えており、そこが気になりました。
 
特に、本来ならそれほど長く引っ張る展開でないものをひたすら長い会話で引き延ばしたり、今度は絶対に掘り下げないといけない説明や描写を省いたりと、どこに重点を置くのかの配分がちぐはぐで、うまく狙った効果を出せていません。
 
結果、速く先に進んで欲しいところはひたすら停滞しテンポが悪くしっかり描写して欲しいところは満足に納得させてくれず説明不足という、痒いところに手が届かない惜しいバランスでした。
 
さらに、前半と後半でまったく別の話が始まるという、前半積み上げてきたものが途中で一度リセットされるというずさんな構成もげんなりします。
 
いくらなんでも前半と後半が原作では違うエピソードを無理矢理繋げているとはいえ、アニメ用に後半部の伏線になるような要素を前半にさり気なく散りばめておく程度の工夫はないと、唐突に違う話が始まったような違和感を覚えます。
 
それに中盤以降は軽いミステリーのような作り方で、原作を読んでいないと一体この話がどこに向かうのか進行方向がまったく掴めません。オチが分かると遡ってこれまで退屈だった箇所の評価は上がりますが、いくらなんでもオチの衝撃的な内容に頼り過ぎです。
 
オチまで辿り着く前に何かオチの印象を強化する様な精神的な土台作りをするわけでもなく、ただどこに向かっているのか目的地が分からない話に延々付きあわされ、やや苦痛でした。
 
ただ、ラストに待ち受けている重くシリアスな展開は前シリーズに感じた命を扱っているわりに作風が軽かった印象を払拭し、『ソードアート・オンライン』というシリーズの捉え方を良い意味で変化させてくれました。
 

見た目は派手だが中身が空回り気味なアクション作画

 
全体的に作画レベルは安定しており特に不満はありません。
 
しかし、作画的に力が入る箇所がところどころ物語的な盛り上がりと一致しておらず、これはさすがに違和感を覚えました。
 
本筋の話と関係ない戦闘シーンで突然キャラが動きまくるなど、とりあえず一定間隔で見栄えのいいアクションシーンを挟んでおけばいいというやっつけ感すらあります。
 
前シリーズと違い、デスガン関連の戦闘以外はゲーム内で死ぬと現実でも死んでしまうという緊張感が存在せず、ただオンラインゲーム上で対人戦やモンスターと戦うシーンを凄い作画で見せられても前のめりの姿勢で興奮することもありません。
 
せっかく魅力的なアクション作画があっても、それが物語とリンクせず、結果、緊張や興奮、楽しさに変換されないまま大部分の作画エネルギーがロスしてしまい惜しいなと思います。
 
ただ、ユウキ関連のアクション(特にOPアニメーション)は、オチが分かると格別です。
 
誰よりも俊敏に動けていたことに重い意味が加わり、アクション作画が良くできていればいるほど逆に切なさが増すという、アクション作画を利用した演出になっており、ここは今作でダントツの白眉な部分でした。
 

最後に

 
細かい不満が無数にあり、1期同様とても諸手を挙げて絶賛という出来ではありませんでした。
 
それでも、前シリーズ同様、自然に飛び交う耳に心地よいゲーム用語や、ゲーム内設定をアニメ(映像)にトレースする際の工夫の数々など、ゲームを題材とした作品として最低限のこだわりが感じられ安心して見ることができます。
 
そして、なによりも脱ハーレム意識で作っているため、嬉しいというよりも、ようやくまともな作りになってほっとしたというのが素直な感想です。
 

SAOシリーズ

SAOゲーム版

 

 

 
TOP