トレーラー
評価:75/100
放送期間
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2015年7月~9月
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話数
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全12話
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アニメ制作会社
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パッショーネ
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アニメの概要
この作品は、ライトノベル『六花の勇者』シリーズを原作とするTVアニメです。
原作は未読です。
勇者が登場する普通のハイファンタジーアニメに偽装しながら、サスペンスミステリーを行うというアイデアの混ぜ方が新鮮で、通常のファンタジーでは決して味わえないスリルがあります。
映像的にも違和感を散りばめる工夫が数多く施されており、サスペンスアニメとしても見応えがありました。
ジャンルがすり替わる快感
このアニメは一話の高橋監督のコンテに異質な感触を覚え、全話視聴することに決めました。
後で振り返るとその異質さには理由があったことが分かるという、コンテからもたらされる違和感そのものをサスペンスの予兆として機能させる手法は鮮やかでした。
本作は、冒頭から本編とは視覚的な手触りが異なる壁画や絵巻物風の媒体を用いて歴史を語るなど巧妙にファンタジーものの王道に擬態しつつ、その実主人公やメインキャラクターの身の上など何一つ確度の高い情報は視聴者に伝えず進むため、どこか見ていてソワソワします。
この気付くか気付かないかギリギリのラインで納まりの悪さを伴う感覚を画面に忍ばせ後々回収するという手法が見事に決まっており、これのおかげで途中から思っても見なかった方向に話が転がり出すと「あの違和感はこれのための布石だったのか!?」と一気に前半の疑問に合点がいき、ジャンルが切り替わる快感に酔えました。
この衝撃は、脚本だけでなく丁寧に映像にも細工を施す下準備の賜で、作り手の確かな映像センスの証だと思います。
何もかも足りていない脚本
映像面は、一癖も二癖もある勇者たちを成立させ、殺し合いの緊張をうまく演出できているのに、肝心の脚本部分は物足りませんでした。
そもそも視聴者側に与えられる情報の絶対量がまるで足りておらず、先の展開を満足に予想すら出来ません。
ただ起こることを受動的にぼけっと眺めるだけで、最後に謎解きのようなものをされてもほぼ後出し情報のみで、衝撃はあってもまったく腑には落ちませんでした。
それに本来なら、設定上は勇者がある場所に期日通り辿り付けないと人間軍側に甚大な被害が出るなど、足止めされている状態にタイムリミットのようなものがないとおかしいはずなのに、それが存在せず理解に苦しみます。
原作未読なので原作の問題をそのまま手直しせず放置してしまったのか、映像化の際の不手際なのかは計り兼ねるものの、もう少し見ている側の疑問を潰してくれないと話に没頭しきれません。
サスペンスのような先行逃げ切りタイプの構成とミステリーのような追い上げタイプの構成と、どちらも中途半端に取り入れようとした結果どっちつかずでした。
最後に
設定・脚本・シリーズ構成ともに難があり、そこまでストーリーにのめり込めませんでした。
ただ、ハイファンタジーに偽装してサスペンスにジャンルをスイッチするという試みを脚本だけに頼らず、しっかり映像にも工夫を凝らすことで見事成功させており、映像化した意義は十分にあると思います。
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