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怖さよりもテンポ重視のノンストップスリラー 「リング」 著者:鈴木光司 〈書評・レビュー・感想〉

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評価:80/100
作品情報
著者 鈴木光司
発売日 1991年6月

短評

 
 ホラー作品として完成度の高い映画版とは異なり、原作小説はホラー要素はオマケ程度で怖さは希薄。
 
 しかし、呪いのビデオというタイムリミットの存在するサスペンス小説としては優秀で、ビデオ映像をヒントに謎を解いていく展開は抜群の中毒性があり、ノンストップで読み進めてしまう。
 

映画はホラー、原作小説はスリラー

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 この小説は見たら一週間後には死んでしまうという呪いのビデオを偶然視聴した主人公が腐れ縁の相棒と協力しながらビデオに映った映像をヒントに謎を解き、呪いのビデオの真相に迫っていくという内容です。
 
 ホラー映画として傑作である映画版『リング』と違い、原作小説であるこちらはむしろホラー要素が控え目で、どちらかというと呪いのビデオの映像を分析し、山村貞子の手がかりを追っていくタイムリミットサスペンス展開が主です。
 
 そこに、ジャーナリストの主人公と大学の哲学科非常勤講師である悪友との軽口を叩き合うバディものとしての魅力も加わり、映画を先に見ていると同じストーリーでも受ける印象がまるで異なります。
 
 映画版は極端にホラーに寄った映像の不気味さと貞子というキャラクターの圧で押し切るという大胆な手法(原作小説では貞子はさほど重要な存在ではない)を取っており、ホラーとしての恐怖表現に全振りしている映画版と、刻一刻とタイムリミットが迫り来る中呪いのビデオの謎を説いていく原作小説と、それぞれ二度楽しめました。
 

見たら1週間後に死ぬ呪いのビデオの謎を追い小気味よく展開する貞子探しのストーリー

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 本作の優れた点は何と言ってもプロットの秀逸さ
 
 ある日4人の少年少女が別々の場所でほぼ同時に心停止で死亡するという不可解な事件が発生し、そこからジャーナリストの主人公が記者としての勘を働かせ事件性を見抜き、自身も見たら1週間後に死んでしまう呪いのビデオに触れ、なし崩し的に事件に巻き込まれ呪いを解く方法を探して回るという流れに淀みがなく読み始めると一気に物語に引き込まれてしまいます。
 
 呪いのビデオという設定の胡散臭さや主人公がオカルトをそこまで信じていないという距離感がまた絶妙
 
 「1週間後に呪いで死ぬかも。いやそんなバカな話があるか。でも実際4人がほぼ同時刻に一斉に心停止で死亡するという不可解な死に方をしているし。でも見たら死ぬ呪いのビデオって一体なんだよ……」という、本当に自分は1週間後に死ぬのかどうか本当のところはハッキリせずふわふわした状態で時間だけが確実に過ぎていくという緊張感がたまりません。
 
 終盤、探していた人物と偶然出会うなど、ややご都合主義展開が増え出すのが気になるものの、これはベストセラーになるのも頷く中毒性で、古さをあまり感じさせず最後まで読ませ切る力があります。
 
 ただ、読んでいて終始気になったのは神様視点になってしまう箇所が多く、誰の視点でものを見ているのか混乱させられること。感情移入させてグイグイ引っ張り続ける話だけに、出会ってまもない相手が何を考えているのか当たり前のように描写されるなど、視点が登場人物間をあちこち飛ぶのはかなりストレスでした。
 

最後に

 
 映画版のような恐怖で圧倒するというより、先が気になって熱中させられる今となっては海外ドラマのような面白さの小説で、ホラー小説を期待して読むと肩透かしを喰らいます。
 
 しかし、ホラー要素の強いサスペンス小説としては無類の魅力があり、こちらも映画に負けず魅力的でした。