著者 | ロバート・キヨサキ |
出版日 | オリジナル版(日本):2000年 改訂版:2013年 |
難易度 | 普通 |
オススメ度 | ☆☆ |
ページ数 | 約262ページ |
リンク
本の概要
この本は、アメリカ(ハワイ州)の日系4世である実業家・投資家のロバート・キヨサキが、子供時代にある人から学んだお金持ちになる思考法をレクチャーするという自己啓発書です。
『金持ち父さん 貧乏父さん』というタイトルですが、このタイトルにさほど意味はなく、基本は金持ち父さん側の教えのみを中心に語る本で、貧乏父さん側は単なるオマケ程度の存在です。
世界中で大ベストセラーになった本のため、この本に書かれているお金持ちになる極意は様々なメディアで紹介され尽くしており、もはや古典と言っても差し支えないほど当たり前の知識しかありません。
この本を読むと巷のマネーリテラシーに関する情報の元ネタは大体がこの本であることが分かり、世界的な影響力を実感できます
読むにあたって注意すべきはお金持ちになるための思考法(この本では、ファイナンシャル・インテリジェンスと呼称)を学習するための本であり、お金の儲け方を解説する本ではありません。
お金持ち思考法の古典
この本で最も多く繰り返されるのが、ファイナンシャル・インテリジェンス(お金に関する知性)を早い時期から鍛えることの重要性です。
なぜなら、一時的にお金を儲けるための知識と、本当のお金持ち(資産家)となりその状態を維持し続けるために必要な知識(資産運用、節税など)はまったく異なるためで、この本は後者をより重要視した内容です。
例えば、遺産相続で多額の遺産を受け取る、万馬券を当て数千万円を獲得、宝くじで1億円が当選など、突発的な収入があったとしてもファイナンシャル・インテリジェンスが欠けていれば、手に入れたお金を一瞬で浪費して使い切る、もしくは減らすのが怖くて銀行口座に寝かせたまま資産を増やせず放置してしまうなど、お金をうまく扱うことができません。
この本の主旨はシンプルで、お金持ちはマイホームやマイカーなど高い買い物をする前にまず資産(毎月、自分に不労所得をもたらしてくれる不動産や株など)を買いお金が毎月自動で入金されるシステムを構築し、貧乏になる人は資産を買う前に消費に回してしまい、結局また次の消費のために働き続けるラットレース(ネズミが回し車の中をいつまでも走り続ける状態)に陥るというものです。
ファイナンシャル・インテリジェンスとは、消費のためにお金を稼ぎ続けなければならないラットレースから抜け出し、資産から恒久的な不労所得を得るという考え方に切り替えるために必須の思考法であり、この本が最も重要と位置付けるものです。
しかし、ハッキリ言ってこの考え方は現代においてはもはや常識で、どんなマネーリテラシー系の本でもほぼ同じことが書かれており、少しでもお金の増やし方を勉強した人なら知っている程度の内容です。
そもそもFIRE(経済的自立と早期リタイア)とはこの考え方をベースにしたもので、FIREを目指しているなら知っていて当然の知識でしかありません
繰り返しますが、この本に書かれていることはもはや現代においては特に目新しいものではありません。
資産を買えという以外でも、多くの失敗を経験して自分のファイナンシャル・インテリジェンスを磨けというメッセージは、ホリエモンだと考えるより先に行動しトライ&エラーで自分自身の資産価値を高めろという“多動力”的な考えになったり、プロトタイピングという未完成の状態でサービスを開始しユーザーの意見をフィードバックしながら完成を目指す手法だったりと、じっくりと計画を練るより行動しながら実践形式で学ぶことの大切さを説く本は無数にあります。
加えて、FIREのような資産運用や節税の知識を磨くと同時に、反消費運動という思想性も組み込み、消費からの解放や経済的な自立によって世間に流されない自分にとっての本当の幸福を目指すというムーブメントも生まれるなど、この本が最初に出版された当時よりお金に対して真剣に考えようという気運はより高まっていると思います。
書いてあることが当たり前にしか思えないのは、世の中がこの『金持ち父さん 貧乏父さん』という本で書かれた金持ちマインドを学習し、ようやくこの本に追いついたという証拠で、もはや読んで刺激的な一冊というよりは古典といった趣すら感じました。
正解ではなくヒント、成功の秘訣より持続の大切さを説く
この本は、お金に関する世界的な名著である『バビロン大富豪の教え』と同様に具体的な金の稼ぎ方に関する指南はなく、ひたすら金持ちの思考法をレクチャーし金持ちになるためのヒントを与えるだけで、本を読んだだけでは決してお金持ちにはなれません。
お金に関する本は大体このようなヒントだけ教えて後は個々の実践に委ねるという形式が多く、なぜこうなるのかずっと疑問でした。
しかし、様々な本を読むにつれ、結局どのような分野においても成功するより成功した状態を維持し続けることのほうが困難であり、成功状態を維持し続けるには高度な思考法を学び、ひたすらトライ&エラーを繰り返し経験を磨き続ける以外手段がないということが何となく分かるようになりました。
例えば、ダイエットなら無理矢理な運動や絶食で一気に体重を落とすことが出来ても、根本となるダイエットの思考法がインストールされていない人は痩せた状態を維持できずすぐにリバウンドしたり、自身の体験を元に書いた小説がベストセラーになっても、そもそも読者を楽しませる小説のノウハウを熟知していないと二冊目以降の小説はまったく売れずただの一発屋に終わるなど、単に一度成功するだけなら根性や運でどうにかなっても、その状態を長く維持し続けるには高度な思考法が必須であり、成功者ほどそれを理解し思考法の大切さを語るのだなと納得出来るようになりました。
その意味では、この本は徹頭徹尾お金持ちの思考法にのみ特化しており、この本を読むだけで一生使えるお金持ちマインドが身に付くため、大変お得な一冊です。
名著というのはこのような優れた思考法を伝える本のことだと思います
最後に
正直、今となっては書いてあることが当たり前すぎてさほど驚きはありませんでした。
ただ、当たり前すぎるということは出版当時にだけ有効なものではなく、時代に左右されない普遍的な思考法が書かれていることの証でもあり、マネーリテラシーを高めたい場合は読んで絶対に損はない一冊です。
金持ち父さんシリーズ
リンク