OPムービー
評価:70/100
ジャンル | アドベンチャー |
発売日(日本国内) | 2012年6月28日(Xbox360版) |
開発(デベロッパー) | 5pb.(現 MAGES.) |
開発国 | 日本 |
- ゲームの概要
- あらすじ
- オタクカルチャー+陰謀論+パラノイア
- ツイポという新たな語り口
- 引き続き楽しいトライ&エラー
- 拡張現実を使ったADV的なアプローチとそれに付随する立ち絵CG
- ガッカリスケール感
- 最後に
- 余談(※ややネタバレあり)
- 科学アドベンチャーシリーズ
ゲームの概要
この作品は、『カオスヘッド』、『シュタインズゲート』から続く科学アドベンチャーシリーズ3作目です。過去作との直接的なストーリーの繋がりは薄く今作から始めて大丈夫なものの、過去作のキャラクターが再登場したり、小ネタが散りばめられていたりと、過去2作の科学アドベンチャーシリーズをプレイしていたほうがより楽しめます。
過去の科学アドベンチャーシリーズと比べ、高校生の部活青春ものという畑違いの方向へ舵を切った結果、全体的にどこをどう弄っても向上の余地の見あたらない袋小路作品になってしまった感があります。
部分部分の設定やアイデアに秀逸な部分は多々見受けられますが、全体としては今一つ煮え切らない凡作でした。
あらすじ
中央種子島高校ロボ部の部員でありながら、ロボットにも部活にも興味を示さない格ゲーマニアの八汐 海翔(やしお かいと)。
海翔はロボ部の部員であり幼馴染のあき穂が巨大ロボがんつく1号の制作に勤しむのを横目に、格ゲー三昧の高校生活を謳歌していた。
刺激はないが穏やかな種子島の生活に満足する海翔。しかし、ある日ポケコン(携帯端末)のアプリを介さないと見ることのできない愛理(あいり)という謎の少女に出会ったことで、世界を揺るがしかねない恐るべき計画が記された君島レポートと呼ばれるデータが種子島にあることを知る。
なんとなしに君島レポートを集めだす海翔だったが、その行為が後にロボ部をも巻き込み、世界を巨大な大混乱に誘うことになろうことを海翔自信は知る由もなく……。
オタクカルチャー+陰謀論+パラノイア
科学アドベンチャーシリーズの最大の特徴であるオタクカルチャーと陰謀論のミックスの仕方は過去作同様に今作も秀逸でした。
オカルトや都市伝説に科学的なスパイスを混ぜる(もしくはその逆の)『Xファイル』的な手法をうまくオタクカルチャーのそれに置き換えており、他の作品では見たことがない化学反応が味わえ、ここは本作でも数少ない素直に楽しいと思える点です。
ただ、それら一つ一つの掘り下げが足りないため、結局はスケール感が希薄なままになってしまっており「こういうアイデアを考えてみました」というところからイマイチ先に進めていません。
ツイポという新たな語り口
今作は『シュタインズゲート』でキーとなった携帯電話の代わりにポケコンというスマホとタブレットの中間のような専用の端末と、そのポケコンでアプリとして利用するツイッター風のSNS、“ツイポ”が登場しました。
このツイポを利用することによって、主人公たちにとって死角となるような遠隔地で起こっている出来事と、それに対して人々の生の反応が書き込まれていくという多角的な語り口は見事でした。
毎度物語に新しい情報の提示の仕方を盛り込んでくるこのシリーズのセンスには毎回驚かされます。
ただ、今回はこのツイポのツイートに対してのリプライが選択肢代わりになっていますが、『シュタインズゲート』の感想でも述べた通り、やはり物語を停滞させてまで正しい選択肢選びをさせる作業に鬱陶しさしか感じません。プレイヤーの要望は早く先の展開が読みたいであり、プレイ時間の水増しでしかない選択肢潰しは余計にしか思えませんでした。
しかも、中盤でルート分岐するヒロイン別個別ルートの時系列がなぜかそれぞれ異なっており、自分の場合も前後ひっくり返った状態となり、無用に混乱しました(特に意味もないのにドラマの5話と6話で、6話を先に見させられるような状態です)。
まだ『シュタインズゲート』のように本編ルートに個別ルートをサブ的に融合させ、半ば強制的に見せていた状態のほうが先に進めなくなる苦痛が軽減されていたと思います。
引き続き楽しいトライ&エラー
前作の『シュタインズゲート』でもタイムマシンの原理がよく分からず皆で仮説を出し合うというくだりを丁寧に描いており、そこはプレイヤーが感じる疑問をしっかり潰していくという科学アドベンチャーシリーズの醍醐味だと思います。
今作も巨大ロボットを制作する過程でああでもないこうでもないとキャラ達に議論させている点は喜ばしいのですが、いかんせん前作はこの世に存在しないタイムマシンで、今作がありえるかもしれない巨大ロボットという設定のため、結局議論していることと出来上がる現物が乖離しちぐはぐな印象も受けました。
ロボットのパーツとしてぶっ飛んだ未知の物質を用いているのに、出来上がるのがそこらの巨大ロボットと比べてもショボイ代物なため「じゃあ、あれは何だったの?」と疑問だけが募るだけ。
結局未知の物質を桁違いの性能のロボットができるという点ではなく、アマチュア高校生達が作るまだまだ技術的には劣る巨大ロボットをとりあえずそれっぽく動かす言い訳に使っているため、カタルシスに繋がりません。
例えるなら、どんな料理でも美味しくできる魔法の調味料を失敗して焦がした激マズ料理に振りかけたら何とか普通に食べられるようにはなった、という程度の話。悪い意味で科学的に地に足を着けようとしたためにフィクション的なカタルシスを削いでしまう残念な結果になってしまっていると思います。
これなら未知の物質は最後の最後まで取っておき、まともに歩行すらできないがんつく1号ではどうやっても太刀打ち出来ない相手に途方に暮れていると、最後の希望として提示され、スペック的には桁違いに向こうが上でも何とかギリ戦いを挑むレベルには持って行けるというシナリオ構成のほうがまだマシでした。
拡張現実を使ったADV的なアプローチとそれに付随する立ち絵CG
今作も『シュタインズゲート』の携帯のディスプレイがそのままメニュー画面になっているという部分を踏襲し、ポケコンがそのままメニュー画面となっています。
そこに背景やCGの立ち絵に貼り付けられたジオタグ(対象の説明文)が読める“居る夫 ”アプリというものが追加されました。この居る夫 アプリで立ち絵キャラを認識させるための影響か、今回は立ち絵がイラストからCGとなり表情の変化や動作が加わっています。
立ち絵をCGにすること自体は何の問題もありませんが、現状ではモデリングがイマイチでキャラとして頑張って認識してあげている状態でプレイヤー側に多少の負担を強いてきます。贅沢を言えばもう少しキャラに活き活きとした生命感が欲しかったです。
ただ、この居る夫 アプリは、本編中のあるイベントで用いるくらいでその他には大して意味もありません。
プレイヤーがジオタグを貼り付けると『ダークソウル』のメッセージのようにオンラインに繋いでいれば他の人が貼り付けたメッセージが見られるとか、悪戯ジオタグが山のように貼り付けられており、その中からプレイヤーが嘘と真実を見分けなければならないなど(それはツイポでもやっているので被りますが)と、やりようによってはいくらでもこのシステムを用いて面白い遊びを提供できたと思います。
しかし、現状ではこんなアイデアを盛り込みました程度の存在感しかありません。
ガッカリスケール感
本作で一番不満に感じたのが物語のスケールの無さです。パワードスーツが当たり前に存在する世界なのにパワードスーツがある日常が近所のコンビニ一軒だけで、それ以外はまったく視覚的に描かれません。
ロボットが当たり前にあるはずの世界なのにロボットの気配がまるで皆無で、田舎だから近くになかったとしてもネットなどでは当たり前にロボット関連のニュースに触れているはずなのにそこも希薄でした。
科学アドベンチャーシリーズお得意の複数メディア視点などを用いてパワードスーツやロボットがいかに日常に溶け込んでいる世界なのかをもっと表現しなければ中盤以降の展開になんら説得力を生みません。
ポール・バーホーベン監督の映画(『ロボコップ』や『スターシップトゥルーパーズ』)のように劇中CMを大量に挟んだり、『メタルギアソリッド4』のOPの、世界中で戦争が常態化しているのをテレビ番組(クイズ番組で戦争経済関連のクイズが出たり、民間軍事会社のCMが流れたり)で表現したりする演出などがもっともっと欲しかったです。
序盤に劇中企業であるエグゾスケルトン社のCMが一回流れる程度で、ここは明確に物足りませんでした。
「こんな世界なんです」と文章で設定を説明しているだけで、プレイヤーに肌感覚でそういう世界に感じさせてくれないため、陰謀がどうたらこうたら言われても実感が持てないし興味も湧きません。
これは多分種子島を舞台にしたことで起こってしまった状態だと思われます。『カオスヘッド』の渋谷や、『シュタインズゲート』の秋葉原という場所は、ただその場所を描写するだけで事件の舞台の中心を描くこととイコールでした。しかし、『ロボティクスノーツ』は事件の進行場所と主人公達が日常を営む場所が乖離しており、結局それほど濃密に二箇所が交わらないまま中途半端に流れていきます。
もっと種子島だけの描写に絞り、自分たちには関係ないと思っていた都会で起こっている深刻な事態がじわじわと日常を浸食してくる怖さを描くなり、やりようはあったはずです。
この作品はラストに大カタルシス展開を置こうとしていますが、下準備がまったく足りていない状態のまま突入してしまうのでまったく盛り上がりません。
キャラクターの気持ちの持っていき方、地に足着いた説得力のあるスケール感、伏線が集約していく気持ちよさとカタルシスに必要な要素がことごとく基準を下回っており、確かに起こっていることそのものは非常に燃える展開なのに、それを裏で支える説得力がスカスカなため結局その場のバトル単体の熱さだけが上滑っているだけでほとんど乗れませんでした。
最後に
サスペンスが売りの科学アドベンチャーシリーズで変に畑違いの部活青春感動ものに突っ走ってしまったせいでぶっ壊れた感があります。
粗削り過ぎて欠点がやたら目立った『カオスヘッド』よりは楽しめましたが、『カオスヘッド』にはあった万人向けではないし拙い部分はあるものの、それでもやっていることは凄いし伸びしろがあるという未来への可能性が消え、万人向けを狙い得意でない分野に手を出し、結果滑ったとほほな痛々しさだけが残ります。
設定やアイデアに非常に秀逸な部分もあるため完全には嫌いになれないですが、かといって伸びしろはない、ここで行き止まりな作品だと思います。
余談(※ややネタバレあり)
多少ネタバレになりますが、陰謀論を世間に公表し、その陰謀論を世間に信じさせることこそが陰謀発動の鍵になるという設定は面白くこの部分は興奮しました。
ただ、陰謀論の中に記されたたった一行ほどの嘘が世界的な大混乱を巻き起こすという大カタルシスはもっと丁寧なプロットと演出で味わいたかったというのが本音です。
後、ラストが暖かい声援を受けて皆に送り出される戦いでなく、主人公達だけが唯一世界の危機を知ってしまい、周囲の理解をまったく得られないどころか逆に非難までされ、それでも信念に従い勝ち目の薄い孤独で絶望的な戦いに挑むという展開だったら自分的に評価が大幅に上がっていました。
科学アドベンチャーシリーズ
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