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【PS3・Xbox360】|『レッド・デッド・リデンプション』| レビュー 感想

トレーラー

評価:95/100
作品情報
ジャンル
オープンワールド 
TPS
発売日(日本国内)
2010年10月7日
開発(デベロッパー)
Rockstar San Diego
開発国
アメリカ
ゲームエンジン
RAGE(Rockstar Advanced
Game Engine)

メモ

 
・PS3版クリア済み
 

ゲームの概要

 
この作品は、『グランド セフト オート』シリーズなどで有名なロックスターゲームスが西部劇映画をモチーフに開発したオープンワールドゲームです。
 
ジョン・フォード、ハワード・ホークス監督などの全盛期の正統な西部劇ではなく、クリント・イーストウッド、サム・ペキンパー監督などマカロニウェスタンや西部開拓時代の終わりをもの悲しく哀愁たっぷりに描く西部劇からの影響が濃いのが最大の特徴です。
 
ロックスター以外どんなゲームメーカーも不可能であろう、荒々しさを残す古き時代が終焉を迎える切なさと、新しい時代の足音をシナリオとオープンワールドというゲーム部分両方で完璧に表現して見せた大傑作でした。
 

爆音よ、さらば

 
このゲームは最初PS3版をプレイし、一番印象に残っているのが感動的な物語・・・よりもディスク読み込みの際の爆音でした。
 
NPCが多く処理が重くなる街などに近づくとイヤホンをしているのにも関わらず部屋中に鳴り響くウィンウィンウィンウィンという耳どころか脳に鈍く突き刺さるかのようなディスクの読み込み音で気が狂いそうになりながらプレイしていたので、傑作なのに騒音のトラウマで二度とやりたくないゲームという非常に困った位置付けの作品でした。
 
PS3版はこれまでやったゲームの中でもプレイ中の騒音で悩まされたゲームランキングぶっちぎり1位だったのにも関わらず、Xbox360のダウンロード版をプレイすると、その嘘みたいな静かさだけで感動します。
 

脅威の脚本力で成立した奇跡のひと時

 
このゲーム最大の魅力は西部劇を題材としたゲームとしては完璧と言っていいほど完成された物語でした。
 
特に終盤に訪れる奇跡としか言いようのない、暴力を題材としたゲームゆえに異様にすら映る安らかなひと時は格別です。初回時よりも二回目のほうが結末が分かっている分その瞬間の重みがより感じ取れ深く入り込めます。
 
全盛期の西部開拓時代ではなく、末期の時代を舞台とすることで際立つ、主人公のジョンを象徴する暴力が支配する古い時代の終焉と、息子のジャックを象徴する新しい時代の幕開けの対比。
 
優秀なシナリオライターによるセリフ一つ一つの切れ味が鋭い、無駄のない神がかった脚本。
 
これまでゲーム中に繰り返してきた行いと別のことをさせるのではなく、同じ馬での移動や狩りに親子のコミュニケーションというドラマ性を自然に足して見せる無駄のない演出。
 
マップがシームレスであることを最大限活用する、これまで訪れた場所が地続きであることで人との強い繋がりを実感させ、暴力に支配されているはずの見知った場所が主人公の安堵に呼応するかのように人の温もりすら感じさせる優しい風景へと変化し世界がまったく別の表情を浮かべる巧みなオープンワールド使い。
 
ゲームを構成する要素全てが物語のピースとなり、それらが完璧に組み合わさる終盤はゲーム史に残る奇跡の数十分と言いたくなるほどまばゆく、それゆえはかなく、この部分だけは続編でも到達できない域に達していると思います。
 

突出した物語の完成度に対して、そこそこな通常ゲームパート

 
本作はミッションの中心となる主要登場人物ごとにウェスタン映画の魅力を分散して設定するという作りをしており、この構造はオープンワールドにうまくマッチしていると思います。
 
マクファーレン牧場関連のミッションは映画の『シェーン』始め悪漢に苦しめられる一般人を流れのガンマンが救ったり、ハワード・ホークス監督の『赤い河』のように大自然で牛を追うカウボーイ気分が味わえたりする正統派ウェスタンな作り。
 
保安官関連のミッションは同じくハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』のような正義感はあるもののやや粗暴な保安官の助手となり悪党を退治するアクション寄りな作り、などなど。
 
色々なウェスタン映画の影響の中でもPS3版をやった際は過去の悪事の清算のため苦しめられるという展開からクリント・イーストウッドの主演・監督作である『許されざる者』を強く連想したものの、改めてプレイし直すとベースは完全にサム・ペキンパー監督の『ワイルドバンチ』のほうだなと印象がガラリと変わりました。
 
ワイルドバンチと似ている点は、本作の時代設定がいくらなんでもウェスタンとしては時期が遅すぎる20世紀頭の1911年で、ワイルドバンチの1913年とほぼ同じでリボルバーというよりもオートマチック拳銃の時代に入っている点。役人の命令でかつてギャングのメンバーだった頃の仲間たちを殺害していくという話な点。主人公がかつての仲間に負傷したまま置き去りにされたという過去を持っている点など。
 
そもそも本作で非常に特徴的なストップモーション的に画面が静止し、色が反転する見せ方がワイルドバンチのOPとまったく同じなど、どう見てもワイルドバンチをベースに許されざる者や親子の絆を描く『3時10分、決断のとき』を加えたのかなと思ってしまいます。
 
このかつて犯罪者だった主人公が役人に家族を人質に取られ、家族の解放と過去の罪の恩赦のため、アメリカやメキシコを旅しながら家族同然だったギャングメンバーを殺害して回るというハードで苦い展開は非常にロックスターぽくて好みでした。
 
ただ、アクションというよりもどちらかというと深いドラマ性や没入度を売りにするアドベンチャーやシミュレーション肌なロックスターらしく、肝心のTPS(銃撃戦)部分はとにかく単調です。
 
馬車を操作しながら追っ手から逃走するような、ロックスターのわりと得意とするレーシングゲーム的な要素のあるミッションはまだスピード感もあるものの、ひたすらうじゃうじゃ湧く敵を雑に撃ち倒していくだけのメインミッションは飽きて退屈に感じる瞬間が多々ありました。
 
特にガトリングガンで大量の敵を薙ぎ払うという本来なら爽快感を伴うはずのミッションが、敵が小さ過ぎて視認し辛くむしろオートエイムありの通常の射撃のほうが楽という本末転倒な出来で散々でした。
 
他にも夜中にミッションを開始してしまうと周囲が暗すぎて何も見えないとか、昼間でも敵が小さすぎて何も見えないとか、視力の悪い人間への嫌がらせかと思うほどストレスまみれで、銃撃戦をやらされるパートは不満だらけです。
 

地味ながら夢中になる狩り

 
パッとしないTPS部分より、むしろ道すがら野生動物を狩って、手に入れた肉や毛皮などを店に売り小金を稼ぐという道草部分のほうが楽しめました。
 
『ファークライ3』以降、野生動物の狩りはクラフトと連動することが多く、本作のように単に換金用として割り切っていると、野生動物を狩るイコールお金稼ぎという目的が明確で余計なことを考えずに荒野を走り回れ、しかもそのままオープンワールドに生命の息吹を宿す働きもしており無駄がありません。
 
そして、そんなオープンワールド狩猟生活をアシストしてくれるのが、プレイヤーが任意に設置したマーカー部分にファストトラベルできる機能です。
 
これのおかげで通常のファストトラベルポイントである村や街から離れた任意の場所にも瞬時に移動でき非常に便利で、この地図上に設置したマーカーへファストトラベルできる機能は全てのオープンワールドゲームに標準搭載して欲しいほどです。
 
しかし、結局ベセスダのRPGのように常に欲しい物が尽きず、小金稼ぎが楽しいバランス調整になっていないため、終盤はお金の使い道が無く大量に余ってしまう状態になるのが残念でした。
 

最後に

 
クリアまで約18時間ほど。ボリュームは通常のオープンワールドゲームに比べると若干少な目です。
 
アクションにそれほど特徴のないロックスターだけに、メインミッションが似たようなことの繰り返しで単調など、基本のゲーム部分には多数の不満を覚えます。
 
しかし、オープンワールドというアプローチを巧みに活用した終盤のストーリーテリングはPS3・Xbox360世代のゲームの中でも頭一つ飛び抜けた完成度で、この深いドラマが堪能できるだけでプレイする価値がある傑作です。
 
 

 

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