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【TVアニメ】メガトンパンチでミュウツーをどつく! |『ポケットモンスター ジ・オリジン』| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:80/100

作品情報
放送期間 2013年10月
話数 全4話
アニメ制作会社 Production I.G(1話)
XEBEC(2.3話)
OLM(4話)

アニメの概要

 
この作品は、初代ゲームボーイで発売されたRPG『ポケットモンスター 赤・緑』を元とするアニメ版です。
 
原作となるゲーム版は、初代ゲームボーイ(以下、GB)の赤・緑、GBカラーのクリスタル、ニンテンドーDSのダイヤモンドくらいしかクリアしておらず、それほどポケモンシリーズへの思い入れや知識はありません。
 

クリスタルは300~400時間ほどプレイしましたが、ダイヤモンドに限ってはクリアしたはずなのにどんなポケモンを使っていたのか一切記憶がありません

 
アニメと言っても、サトシとピカチュウが主役のゲーム版を大幅にアレンジしたシリーズとは異なり、コチラはより原作のゲーム版に忠実な作りとなっています。
 
原作ゲームの懐かしさをそのまま映像化しようという非常に安易で懐古的な姿勢で作られており、個人的にはあまり好ましい姿勢のアニメ化ではありませんでした。
 
しかし、4話の重量級のポケモンをアニメで思う存分暴れさせるというコンセプトは自分の好みど真ん中で、アクションアニメとしてはツボにハマる作品でした。

 

脱サトシ、脱ピカチュウ、脱ドラマ


個人的に本作は、従来のアニメシリーズ独自の設定を一旦リセットし、ゲームの初代ポケモンベースとしたことで、逆に従来のアニメシリーズの優れた部分が際立つという皮肉な結果でした。
 
まず日常生活にポケモンがいないというビジュアルの寂しさが致命的でした。
 
従来シリーズでは世界の生き物は皆ポケモンなため日常生活にきちんとポケモンが溶け込んでいたものの、こちらはただの得体のしれない野生の生き物程度の描かれ方で不気味さすら感じます。
 
ポケモンを普通の生き物として描いている従来シリーズと比べ、コチラはただのバトル用の道具でしかなく、いかに従来シリーズのほうが温かみを込めてポケモンを描いていたのかよく分かります。
 
ポケモンという大人気ゲームコンテンツに頼らず、しっかり独自の世界を構築し、サトシとピカチュウの友情の成立というドラマを描いて見せた従来シリーズと比べ、コチラは大人気コンテンツであるポケモンのネームバリューだけを頼りに、ノスタルジー欲求を充足させるためだけに作られた志としては100万歩後退しているダメダメな姿勢です。
 
・・・・・・しかし、第一進化形態のまま進化キャンセルし続けてまでファンシーなポケモンの絵面を確保しまくる姿勢にうんざりしてテレビシリーズを見なくなったリアルタイム世代のいち男の視聴者としては、このごついポケモン賛美の姿勢はサイコーでした!!
 

ごついポケモンが凄まじいコンテでノンストップで殴り合うだけ!

 
本作は全4話構成なものの、1~3話まではほとんど4話へのフリ程度の存在感しかなく圧巻なのは4話でした。
 
4話は本作の戦闘力の特殊ルールをテンポよく披露してくれます。
 
ヘビー級のカメックスがライト級のサンダースをロケットずつきでいとも簡単に吹っ飛ばす絵面を見せることで、カメックスの重さを印象付け、今度はわざと二回もリザードンを高い位置でリリースして落下させ、重量感を演出などなど・・・・・・そう、この作品内において最強なのはヘビーなポケモンです!
 
ちっこい体型のピカチュウは出る幕がありません。ファンシーであることがレギュラー獲得の必須条件である従来シリーズと異なり、こちらはごついポケモンこそが主役というスタンスで、この部分に痺れました。
 
これぞ子供の頃に憧れた真のポケモンの絵面。最終進化形態で最強の技を撃ち合う勇姿。
 
みずでっぽうではなくハイドロポンプ! ひのこではなくだいもんじ! でんこうせっかではなくメガトンパンチ!
 
絵面としてはごついポケモンだらけなのに、監督兼コンテの冨安監督が大変いい仕事をしており、縦横無尽のコンテワークは非常に軽やかで、スローモーションなどという下品なものは一片たりとも挟まず、ノンストップの小気味いいテンポが最後までアクションを見せてくれます。
 
このスピード感は冨安監督の好みのテンポであるのと同時に、尺が短いことにより説明や描写を圧縮して語らなくてはならないことにも起因していると思います。
 
その他にもレッドとグリーンの会話のヒートアップと呼応するかのようにカットバックしながら舞台がセッティングされる痺れる演出や、カメックスがハイドロポンプを片方ずつ発射する技の見せ方の細かいこだわり、アニメ的けれん味全開のコンテをアシストする作画の密度など、褒めだしたらキリがありません。
 
唯一説明に徹する会話シーンになると話し的にも画的にも刺激がなくなりかったるくなるという不満点はあるものの、バトルシーンの興奮で十分にお釣りがきます。
 

最後に

 
ポケモンのHPゲージをそのまま見せたり、ゲームのメニュー画面をアニメ上で再現したりと、ゲームをアニメという表現媒体に移行する際の手法としてあまりにも安易で不快な演出もあるものの、やはり観終わった後に残るのは至福の余韻でした。
 
サトシとピカチュウを主役とした従来シリーズもゲームの映像化のアプローチとしては原作が孕むポケモンを道具のように扱うという点に関して逃げずに真正面から挑む姿勢など、このオリジンの100万倍健全なやり方で大変素晴らしい傑作でした。
 

特に劇場版『ミュウツーの逆襲』はこのテーマに関してド直球に切り込んでおり、作り手の真摯さが窺えます

 
しかし、最終進化形態のポケモン同士の激しいどつき合いこそTVアニメ版で見たかったという自分のような人間にとってオリジンもまた心の名作です。
 

 
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