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【スーファミ】チーム戦がメインのアニメごっこゲーム |『ミニ四駆レッツ&ゴー!! パワーWGP2』| レビュー 感想 評価

プレイ動画

評価:75/100
作品情報
ジャンル レース RPG
発売日(日本国内) 1998年10月1日
開発(デベロッパー) ジュピター

ゲームの概要

 
このゲームは、アニメ版『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』のWGP編を原作とするスーパーファミコンのゲームです。
 
第2回ミニ四駆世界グランプリ(WGP)に日本代表のTRFビクトリーズとして参加し、原作に登場した各国代表チームやゲームオリジナルのチームと対戦していくというストーリーです。
 
登場する各国代表チームは、
 
【アニメから続投】
TRFビクトリーズ(日本)
NAアストロレンジャーズ(アメリカ)
サバンナソルジャーズ(アフリカ)
CCPシルバーフォックス(ロシア)
小四駆走行団光蠍ゴンキ(中国)
ロッソストラーダ(イタリア)
アイゼンヴォルフ(ドイツ)
 
【劇場アニメ版から登場】
XTOリボルバーズ(ペルー)
 

リオン率いるガンブラスターを使うチームです

 
【ゲーム版オリジナル】
レ・ヴァンクール(フランス)
エンシェントフォース(エジプト)
 
の、10チームです。
 

 
スーファミのレッツ&ゴーを原作とするゲームでは『シャイニングスコーピオン』のほうが圧倒的に有名ですが、ゲーム内容は似ても似つかないまったくの別物です。
 
このゲームの注意点は、アニメ版のWGP編を見ている前提のゲーム性で、原作を知らないとそもそもゲーム内容がピンとこないため、レッツ&ゴーファン以外はまず楽しめないと思います。
 
物語を先に進めるためにはパーツ集めやGPチップのレベル上げを強制されるためゲームの大半が作業プレイです。かつ『シャイニングスコーピオン』と同等かそれ以上の高難易度で、覚悟して臨まないと相当の苦労を強いられます。
 

スーファミで発売されたレッツ&ゴーのゲーム二作品が両方とも高難易度というのは子供への嫌がらせなのでしょうか?

『シャイニングスコーピオン』とは別物

 

まず、スーファミでレッツ&ゴーのゲームといえば『シャイニングスコーピオン』のほうが有名なため違いを説明します。
 
『シャイニングスコーピオン』はレースで稼いだポイントでグレードアップパーツ(現実に存在するパーツ)を購入し、マシンを改造してはスーパーグレートジャパンカップの優勝を目指すという、ミニ四駆をゲーム化するならこうするだろうというオーソドックスな内容でした。
 
しかし、この『パワーWGP2』はそのようなシンプルなものではなく、アニメ版のWGP編を忠実にゲームに落とし込んだアニメごっこを楽しむようなゲーム内容になっています。そのため、同じくレッツ&ゴーを原作とするゲームながら、両者は似ても似つかない作品です。
 

『シャイニングスコーピオン』がミニ四駆を改造するゲームなら、こちらはWGP編のチーム戦を追体験するようなゲームです

 
そのため、『シャイニングスコーピオン』のようなミニ四駆をひたすら改造して速くしていくというゲームを想像していると不可思議なゲームになっています。
 

アニメ版WGP編の再現に全振り

 
このゲーム最大の魅力であり問題点は、アニメ版WGP編を完全再現しようとしたせいで、アニメを見ていないとそもそも何をやっているのか理解し辛いことです。
 
ストレートでは高速重視のマグナムやトライダガーが先頭となり後続のマシンを引っ張るといったフォーメーション走行の再現や、互いのチームの中で4位の選手が速くゴールしたほうが勝ちという変則的なルールの再現、5人が別々のコースを走るリレー形式のレースの再現など、アニメのWGP編でやっていた動きやレースルールをことごとくゲーム内で再現しており、よくここまでこだわったなと感心するほどです。
 
それ以外も、ロッソストラーダのようなバトルレースを仕掛けてくるチーム相手だとマシンの耐久力に注意しないとレース中に破壊されるといったアタックの再現や、レース中にステアリングできる(マシンを左右に動かせる)ことで相手のマシンをブロックできるなど、アニメ版で描かれたことは大半がゲーム内で再現されています。
 
その分、ミニ四駆としての設定はメチャクチャで、スタートダッシュが小径ホイールのスピンバイパーより大径ホイールのビートマグナムのほうが速いとか、タイヤの径やギヤ比を無視したような動きをするため、最初は違和感しかありませんでした。
 

アニメ版で印象的だったビートマグナムのスタートの遅さはどこへ行ったのでしょうか?

 
それに『シャイニングスコーピオン』では、単純にスピードが速いか遅いかだけでストレート重視やコーナー重視というマシンのキャラクター性が消えていましたが、こちらはバスターソニックやスピンバイパーはコーナーが圧倒的に速く、プロトセイバーEVOはバランス型、ビートマグナムやネオトライダガーは超高速型と、それぞれの特色がしっかり出ており、マグナムで直線をかっ飛ばしたいや、スピンバイパーで高速コーナリングを味わいたいといった要望に応えてくれます。
 
世界グランプリ本番でテクニカルなコースはソニックやスピンバイパー、ロングストレートコースはマグナムやトライダガー、複合コースではプロトセイバーを設定しレースしていると本当にレッツ&ゴー感が堪能でき、この瞬間がゲーム内で最も興奮しました。
 
ただ、このアニメ版の再現にこだわりを全振りした結果、いちゲームとしては欠陥だらけの作業プレイ強制水増しゲームになってしまっており、『シャイニングスコーピオン』のような自分のマシンが着実に速くなっていくという喜びは希薄です。
 

ほぼハクスラなパーツ集めと地獄のレベル上げ作業プレイ

 
このゲームのメインコンセプトはアニメ版WGP編と同じく世界グランプリの優勝を目指し各国代表とのチーム戦を戦っていくことですが、その世界グランプリ本番の合間にフリープレイパートがあり、このパートが曲者くせものです。
 
このパートでは、立ちはだかるライバルにレースで勝たないと物語が先に進まないという厳しい条件があります。しかもライバルはとんでもない強さに設定されており、その都度パーツを集めレベル上げをする作業をしないと歯が立ちません。
 
このゲームで最も楽しいのは世界グランプリ本番のチーム戦ですが、このフリープレイパートがキツイせいで、クリアした際に楽しかった思い出より辛かった思い出のほうが勝ってしまいます。
 
登場するミニ四駆はグランプリマシン(世界グランプリ用にハイテク化されたミニ四駆のこと)なのでGPチップを搭載しており、このGPチップが成長するというていで各キャラクターにレベルが設定されています。
 

 
レベルは各フリー走行が可能なコースでタイムを更新すると経験値が貰え一定数に達するとレベルが上がるという、自分がこれまでプレイしたゲームの中でも見たことがない成長システムが採用されています。そのため、最初はレベルアップの仕組みが分からず苦労しました。
 
このレベル上げは苦痛な作業でしかなく、通常のRPGでボスが倒せず何時間もレベル上げを強いられる苦労となんら変わりありません。
 
しかも、レベルが同じキャラ同士でないと試合でフォーメーションが組めないため、ヘタにレベルが上がっても試合に悪影響が出てしまうなど、本当に終始ジャマでしか無いゴミ要素で、このゲームの満足度を著しく下げています。
 

 
パーツ集めのほうは、特殊なレースで勝った際にランダムでパーツが貰え、レアなパーツが出るまでひたすらレースを繰り返すという、ほとんどハクスラに近いような感触でした。
 

 

『モンスターハンター』でレアな素材が出るまでひたすら同じモンスターを狩り続ける感覚に近いです

 
コチラも作業プレイと言えば作業プレイですが、強制的にやらされるだけで虚無なレベル上げに比べるとレアなパーツが手に入ると嬉しいため、一定の中毒性があり気付くと数時間経っていたということもありました。
 
パーツは『シャイニングスコーピオン』のようなずっと使い続けるグレードアップパーツではなく、その都度使い捨てていく量産品で、ここも次から次に+1や+2と名前が付いた武器や防具を変えていくハクスラゲームと同じです。
 
このように、楽しい世界グランプリ本番と苦痛のフリーパート(作業プレイ部分)が交互するため、プラス・マイナスで人によってはマイナスの印象のほうが勝るかもしれません。
 

RPGのレベル上げやレアなアイテムが出るまでひたすら同じ相手と戦い続けるなどの作業プレイが苦手な人は高確率で苦痛だと思います

 
パーツ集めだけならランダムでレアアイテムをゲットできる分まだ面白いと感じる余地もありますが、レベル上げは本当にただ先に進むためにやらされるだけで、なぜこんなポンコツ欠陥RPG要素を加えてしまったのか疑問でしかありません。
 

ただフィールド内をBダッシュで超高速移動できるという配慮のおかげで移動のストレスは最低限に抑えられているのはありがたいです

原作ファンとしての文句

 
自分は生涯ベストアニメが『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』シリーズなくらい原作は大好き(というか、欠点も含め全て愛しているの)で、アニメ版と比べて気になった部分について語ります。
 
まず、良かった部分はレッツ&ゴーのコミカルな部分を大切にしながら全体的に深い原作愛が貫かれていることです。
 
そもそもゲームとしての完成度や売り上げなど度外視してアニメ版の完全再現に挑むくらいなので、よっぽどレッツ&ゴーのアニメ版が好きな人が作ったのだという熱い想いが伝わってきます。
 
アニメ版レッツ&ゴーという作品の最大の魅力はアニメーターの手によって命を与えられたミニ四駆のアクション作画ですが、他人のマシンを破壊していたバトルレーサーや、勝つためだけにレースに挑んでいた者たちが烈や豪の純粋なミニ四駆愛に触れ、最後はレースそのものを心から楽しむ真のミニ四レーサーに成長するという物語も同じくらい大好きです。
 
特に、最初は人のマシンを破壊して喜んでいた黒沢がサイクロンマグナムを庇ってブロッケンGにブラックセイバーをペチャンコにされる悲痛な場面や、カイやレイ、ゲンがバトルレースより正々堂々と速さでライバルに勝つことにこだわる変化の瞬間、そしてアニメ史に残るほどの名場面であるカルロが烈やミハエルをぶっちぎってあげるそれまでのクールなカルロからは想像できない感情剥き出しの勝利の雄叫びなど、最初は狡猾、傲慢なライバルだった者たちが烈や豪とレースする過程で大切なことを学びそれまでと別の表情を覗かせる瞬間の輝きはレッツ&ゴーの中でも特別な感動があります。
 
しかし、このゲームではイタリアのロッソストラーダのメンバーの描かれ方がアニメ版以下なのでそこは残念でした。カルロはさすがに丁寧に描かれるものの、それ以外の4人のメンバーはアニメ版より人間のクズに成り下がっており、一体烈や豪とレースをし、カルロの心境の変化を目の当たりにして何を学んだんだと思うくらいガッカリしました。
 
カルロを魅力的に立てるために、他の4人をただの人間性が欠如したクズとして引き立て役にしたせいでロッソストラーダというチームが益々嫌いになるので、こういう安易なキャラの描き方はやめて欲しかったです。
 
ただ、沖田カイがサバンナソルジャーズのメンバーとしてレースに出場するというサプライズや、土方レイがフランス代表メンバーとして再登場するなど、原作ファンへのサービス精神は旺盛で、ストーリーはあってないようなものですが、原作が好きなら最低限は楽しめる内容です。
 

わざわざ沖田カイを操作しビークスパイダーを改造してビクトリーズのメンバーとレースする専用パートまで用意されており、非常にカイが優遇されています

 
ワガママを言えば、黒沢をビクトリーズのメンバーにして欲しかったことや、レイを再登場させるならゲンも出して欲しかったこと、アニメ版ではただのモブだった各国代表のリーダー以外のレーサーたちをもう少し丁寧に掘り下げて欲しかったことや、何よりもリョウとアストロレンジャーズのジョーの絡みは色恋沙汰が極端に乏しいレッツ&ゴーとしては絶対に専用パートを用意して欲しかったなど、細かい不満も多々ありますが、概ねレッツ&ゴーの懐かしい思い出に浸れるため悪くはありませんでした。
 

中でも、リョウとジョーの専用パートか固有のイベントを作らなかったことは納得いきません

おわりに

 
クリアまで約12時間ほど。『シャイニングスコーピオン』が数時間でクリアなのに比べ一見ボリュームがありそうに見えてゲームの大半は作業プレイなので印象はあまりよくありません。
 
『シャイニングスコーピオン』はたまに再プレイしたくなり最初からやり直しますが、コチラは作業プレイ部分が苦痛すぎて多分クリアしたらほぼ再プレイはないと思います。
 
アニメ版を無印とWGP編を合わせて約100話くらい見ていないと内容がさっぱり分からない、楽しむためのハードルが超絶高いゲームなので、よっぽどレッツ&ゴーが好きという以外は一切おすすめはしません。
 

そもそも原作ファンですらこのゲームをやるくらいならアニメ版をもう一度見直したほうがよっぽど有意義だと思います

 
ただ、WGP編のチーム戦が好きで、5人によるフォーメーション走行を体験してみたい、リレー試合でマグナムやトライダガーでストレートコースをぶっちぎり、ソニックやスピンバイパーで華麗にテクニカルコースを走破したいという欲求があれば、その願いだけは確実に叶えてくれます。
 
 

 

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