著者 | 橘玲 |
出版日(新版) 旧版 |
2017年8月 2002年11月 |
難易度 | 普通 |
オススメ度 | ☆☆☆ |
ページ数 | 約338ページ |
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本の概要
この本は、日本に存在する様々な制度上の歪みを黄金の羽根と称し、それを利用し合法的に節税しお金持ちになる方法をレクチャーするという内容です。
書かれている節税方法は実際に著者が試し可能であることを証明した上で細かく解説されており読み応えがあります。
そのせいで手続きの仕方なども細かく記述され、やや難解な部分もあります
単純にお金持ちになるためのメソッドというよりは制度の歪みを発見するための思考法の伝授や、さらにその先にあるなぜ人間はこのような歪んだ社会構造を生み出してしまうのかという人間論的な話に踏み込んでいくため、通常のマネーリテラシー系の本とは異質な知的興奮が堪能できます。
金持ちになるための方法を学ぶ目的で読んでも、なぜ人間が生み出す社会はこれほど歪んでしまうのかという日本論として読んでも考察が深く得る物が多い一冊です。
日本版金持ち父さんシリーズのような本
この本と似た内容のものを挙げるなら『金持ち父さん 貧乏父さん』などロバート・キヨサキの金持ち父さんシリーズが近く、その日本版といったイメージが一番近いと思います。
正しい知識を持つ者は金持ちへの最短ルートを歩き、知識なき者はひたすら回り道をするかしかなく、近道を歩みたければ制度の歪み(黄金の羽根)を発見するのが最も効率がいいという考え方もロバート・キヨサキの主張と被っています。
ただ、金持ち父さんシリーズと大きく異なる点は、ロバート・キヨサキが不動産で財を成した人なので基本的に不動産で稼ぐためのテクニックに特化しているのに対し、コチラは制度の歪みを発見することのみに絞っていることです。そのため、応用可能な範囲が広いのは断然コチラの本でした。
金持ち父さんシリーズが好きならこの本も絶対に合います
制度の歪みはそれを作った者のいびつさを反映する
この本の最大の魅力は、節税のテクニックというより、なぜそのような節税方法が可能になってしまうのかという制度の歪みが発生するメカニズムを丁寧に丁寧に解説していくプロセスでした。
普通の本なら「このような欠陥があるのでそれをうまく利用して節税しましょう」で終わるのに対し、この本はそこからさらに踏み込み、そもそもこの歪みが生まれる根本の原因は何かまで遡っていきます。
その結果、人という生き物は自分たちが得するためなら他者の損失など無視した欠陥制度を平気で生み出すという習性まで暴いてしまいます。
この、社会に存在する制度の歪みから逆に辿っていき、それを生み出した人間や組織の歪みまで特定し暴いていくというプロセスは通常のマネーリテラシー本とは異質な知的興奮があり、お金持ちになるために読む本という本来の目的からは逸脱するスリルがありました。
最初は制度のバグをうまく利用し賢く節税し金持ちになろうという話なのかと思いきや、読み終えた後はバグっているのは制度ではなくそもそも人間という愚かな生き物のほうだったというオチは文学の香りすら感じます。
おわりに
お金持ちになるためのテクニックを紹介する本なのに、必死でお金持ちになろうとする人間全てを嘲笑っているようでもあり、途中からお金のことより、著者のことをもっと知りたいという欲が出るような奇妙な感触の本でした。
制度の歪みを発見し黄金の羽根を拾うコツを学ぶマネー本としても、制度がなぜ歪んでいるのかの根本原因を探求する知的な読みものとしても楽しめる非常に完成度の高い一冊です。
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