著者 | 勝間和代 |
出版日 | 2011年10月18日 |
難易度 | 普通 |
オススメ度 | ☆☆ |
ページ数 | 約193ページ |
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本の概要
この本は、日本に蔓延するまじめさの病がいかに危険であるのか解説するビジネス書です。
まじめとは、自分の頭で考えず愚直に言われたことのみをやる、今より効率的な方法を見つけるため試行錯誤せず同じやり方に固執するなど、思考停止や極端に変化を嫌う体質を指します。
逆にふまじめとは、決められたルールを疑い続ける、効率的なやり方を追求し続けるなど、常に抜け道を探す姿勢や変化への柔軟性を指しています。
ビジネス書としてだけでなく社会論としても優秀で、まじめな人間は自分のまじめさを評価しない社会を逆恨みし、自分が勝手にふまじめと認定した人間に対し排他的な行動を取るという、今の日本が抱える問題点にもメスが入れられており非常に役立つ内容でした。
まじめ教を信仰し衰退の一途を辿る日本
この本を読んで衝撃だったのが、書いてあることがことごとく自身の身の回りの人間の言動や、実際に世間で起こっている事件に驚くほど当てはまることです。
特に、まじめな人間は、自分がふまじめと認定した人間を攻撃することで自身のまじめさが社会的に報われないことの憂さ晴らしをするという指摘は目から鱗でした。
おかげで、これまで長年ずっと疑問だったなぜ日本人はこれほど成功者を妬 み社会的に引きずり降ろしたがるのかという謎が解けました。
この悩みに答えが出ただけで読んで良かったと思えます
まじめさが生み出す無謬 性(間違いや失敗が無い状態こそ正しいという考え方)こそが柔軟な思考を奪う原因となり、それゆえ失敗に対して非寛容となり何かミスをした人間を徹底的に攻撃するという国民性が形成されてしまったという話はもはや悪夢的ですらあります。
この本を読んで改めて感じたのは目に見えない太平洋戦争の根深い影響です。戦争に懐疑的な者を非国民呼ばわりした全体主義がまじめさという形で温存・延命されてしまい、それが未だに日本を蝕んでいるのだとすると、戦争に対して真摯に向き合ってこなかったツケが経済の停滞や幸福度の低さという形で表れてしまうのかとやるせない気持ちになります。
それ以外では、自分に自信がない人間は自信の無さから目を背けるために他者に難癖をつけるという指摘も、自分自身に当てはまることだらけで、読んでいて恥ずかしくなることが多々ありました。
この本は、まじめな人間がいかに無自覚なまま周囲に毒をまき散らすのかメカニズムが丁寧に解説されており、読むと世の中の見え方が一変します。
おわりに
人はまじめさが成就されないと、そのガス抜きのため好き放題攻撃しても良心が咎めないふまじめな生け贄を探し始めるという、日本だけでなくどんな時代や場所でも通用する普遍的なメカニズムを学ぶことができ、非常に有意義な本でした。
同時に、まじめさの毒はちょっとやそっとで解毒できない厄介なものでもあり、まじめさに深く浸食されている日本の先行きが不安にもなってきます。
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