トレーラー
評価:75/100
ジャンル | TPS |
発売日(日本国内) | 2012年3月15日 |
開発(デベロッパー) | BioWare |
開発国 | カナダ |
ゲームエンジン | Unreal Engine 3 |
ゲームの概要
このゲームは、バイオウェアが制作したスペースオペラRPGである『マスエフェクト』シリーズの三作目であり三部作の完結編です。ストーリーは前作からそのまま繋がっています。
前作の2に比べアクションシューターまわりが改良され単純な銃撃戦の迫力が向上しました。ただ、内容は2とほぼ同じ路線で新鮮味は皆無です。
それに三部作のラストのわりに迷走感が漂い、全体の作りもシリーズで最も雑なため余韻もイマイチでパッとしない出来でした。
最終章なのにハンパではない迷走感
今作はマスエフェクトシリーズ三部作の締めの作品なので、これまで積み上げてきた壮大なスケールが結実する・・・と思いきや、そうはなりませんでした。
ゲーム開始直後からこれまでの話の流れからすると首を傾げたくなる展開ばかりが続き出端をくじかれます。どうやら前作のDLCの出来事がそのまま今作に続いているらしく、意味不明なシチュエーションから始まり困惑させられました。
2で主人公のシェパードが所属していた民間組織であるサーベラスはもはや2で描かれた姿とはほとんど別物と変わり果て、ただの非人道的な虐殺集団化しており唖然とさせられ、あまりの急な変貌ぶりにきょとんとさせられるだけでした。
一応前作でもサーベラスはまっとうな組織ではないという点はしつこく強調されて描かれていたものの、今まであった組織への違和感に丁寧な落としどころを作って納得させてくれないまま、すでに変貌した後の対話不能な状態を見せられるので意味不明なだけです。
シリーズの積み上げ以外の部分でもとにかく雑さが目立ちます。
人類がマスエフェクトというテクノロジーに出会い太陽系外へ進出するきっかけとなった火星のプロセアン遺跡というシリーズでは感慨深い場所が舞台となるのに、これを別段丁寧に描くこともせず目当ての物を入手したらお役御免となり、落胆させられます。
今作は、このような絶対に手を抜いてはいけない箇所をことごとく軽く流したり、細々とした部分に手抜きが散見されたりと迷走感&雑さが半端ではありません。
それに1・2とずっと引っ張ってきたリーパーという機械生命体との銀河規模の全面戦争に突入するという展開を急ぎすぎたため、ただ単にあらゆる未決着な設定を雑にねじ込み乱暴に押し通すだけの展開となってしまい、シナリオはぶっちぎり過去最低でした。
ゲームとしては退化の一途、シューターとしては進化の一途
前作の2は、1でRPG(成長要素)とシューターが良好な関係を築けていたのに対し、ゲームの主導権をシューターが奪いバランスが崩れてしまったのがショックで、あまり良い印象を受けませんでした。
しかし、今作はシューターとしてはさらに磨かれ単純な射撃の快感が向上しており2ほど不満は抱きませんでした。
おもちゃのように軽くてしょぼかった銃声音は改善され、射撃に迫力が増し、敵が被弾した際のモーションもより強化され、ヒット時の手応えはぐっと向上しました。
1に比べ操作性が格段に向上したことに驚かされた2に対して、今作は単純な射撃そのものの快楽性が増し、その点は素直に良かったと思います。
それに、1にあった銃器へ強化パーツを装着し、ある程度自分好みの調整が出来るという要素も復活しました。
さらに、2ではミッションクリアしないと経験値が貰えなかったダメ仕様が多少改善され、ミッション途中でも細かく経験値が入手でき、レベルアップしたらその場でポイントをアビリティ強化に振り分けられるなど、やや一作目返りの傾向が強く遊びやすくなっています。
それに、前作の拒絶反応が出るくらい大嫌いだったダメージを喰らった際に画面が血で染まるというスペースオペラという題材とまったく噛み合っていなかった不快な処理は多少改善されました。一作目のようにライフとシールド残量をUI上に表示しつつ、被ダメージ時の処理も分かりやすく画面を赤くはするものの、2ほど無神経では無くなった点は喜ばしかったです。
ただ、やはり刺激が増したと言っても結局2と同じで戦闘はただ先に進むために次から次に湧いてくる、倒しても何の感情も湧かない敵を延々処理するだけの単調な作業であるという点に大きな違いはありません。
敵をバイオティックアビリティ(超能力なようなもの)でカバー状態から無理矢理引きずり出したり、敵に応じて弾薬アビリティを交換して対処したりという本シリーズ独自の面白味はしっかりあります。
しかし、もう少しリニア型ならリニア型で『コールオブデューティ』のキャンペーンモードのようにドラマ性を大幅に盛るとか、シチュエーションに凝るとか、なんなら『デッドスペース』のようにホラー的な緊張感を加味する、など何かしら工夫してくれないと、目的が基本大雑把なことも相まって銃撃戦が単調さに押し負けてしまいます。
ギャラクシーマップを巧みに使った環境演出
宇宙を銀河(ギャラクシー)・星団(クラスター)・惑星系と分けて表示し、銀河におけるファストトラベル地点の様な働きをするマスリレイを経由して移動するという、マスエフェクトシリーズお馴染みのギャラクシーマップ。
前作にも恒星が巨大化しているという星系に駆け付けると本当に巨大な恒星があって視覚的に驚かされるというようなマップを用いた巧みな環境演出がありました。
さらに今作では前作で何度も何度も光景が目に焼き付くほど見せられた、イルーシブマンの背後に佇む、サーベラス(地獄の番犬ケルベロスの英語読み)という組織名の象徴のような地獄めいた赤色超巨星が実際にギャラクシーマップ上にデカデカと表示されるので、衝撃がケタ違いでした。
何度も映像だけで見せられ続けた赤色超巨星の近くにあるイルーシブマンの根城に殴り込みをかけるという展開が、このギャラクシーマップを用いた演出によってぐっと緊張度が増し、最終決戦ムードを盛り上げる効果を発揮しています(厳密に言うとここは最終決戦場所ではないのが残念)。
もっともっと、このようなマスエフェクトシリーズでないと味わえない宇宙のスケールを利用した贅沢な感動を味わいたかったというのが本音です。
邪魔すぎるローリングアクション
今作で、一番ストレスが溜まるアクションが新しく追加されたローリングです。
左スティックを倒しながらダッシュボタン(カバーボタン)を押すとローリングするという機能が追加されたせいで、少しでもスティックを上方向以外に倒しながらダッシュボタンを押してしまうとローリングしてしまい、ただダッシュや障害物に張り付きたいだけなのに延々とローリングが出続けるので、操作に慣れない序盤はストレスで発狂しそうになりました。
目の前の障害物に向かってカバーボタンを押すとスティックがやや右に倒れており右にローリング。もう一回張り付こうとすると今度はスティックがやや左に倒れているので左にローリングと、序盤は目の前の障害物にただ張り付くだけでもスティックを倒す向きに気を使わなくてはならず苦労させられます。
ダッシュボタンとカバーボタンとローリングボタンと決定ボタンを全て同じボタンに設定するという適当なボタン配置で、しかも二回連続でダッシュボタンを押したときだけローリングが出るなどの工夫もなく、終始誤動作でローリングが出続けて鬱陶しいことこの上ありませんでした。
しかも戦闘中は障害物に隠れるカバーがメインなので別段ローリングなんて使いもしないのでただの無駄なストレス源でしかありません。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
もはや一作目のスペースオペラとしての品の良さは完全に消え失せ、2の方向性をより強化した『Halo(ヘイロー)』風の宇宙大戦争ドンパチシューターになってしまい、まったく好きになれません。
RPG要素のあるTPSとしてはそこそこ出来がいいので、そういうものだと割り切ってしまえばまぁまぁ楽しめます。
しかし、もう作品自体がどこに向かっているのか皆目分からないほど迷走しているので、まとまりや高級感は皆無に近いです。
これまでのシリーズから特にこれといって情報が足されるワケでもないため目新しさはなく、三部作の締めのわりにラストを盛り上げるための積み上げも不足気味で、ただただ勢いまかせで最終決戦に持っていこうとした強引さだけが目立つ残念な出来でした。
マスエフェクトシリーズ
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