トレーラー
評価:75/100
ジャンル | TPS |
発売日(日本国内) | 2011年1月13日 |
開発(デベロッパー) | BioWare |
開発国 | カナダ |
ゲームエンジン | Unreal Engine 3 |
ゲームの概要
このゲームは、バイオウェアが制作したスペースオペラRPGである『マスエフェクト』シリーズの2作目です。ストーリーは1から完全に繋がっています。
前作からRPG要素が大幅に削られシューター要素に軸が振れたせいで、ほとんどリニア型のアクションシューターとなりジャンル自体がやや変化しました。
選択肢により物語が分岐するという点はまったく同じですが、スペースオペラとして落ち着いていた前作と違い、良くも悪くも激しいシューターと化し派手さが増しています。
RPGシューターを捨て、アクションシューター化したことにより得た物、失った物

今作は前作よりRPG要素が減り、シューター要素が増えました。
前作の落ち着いたコンセプトや作風が非常に好みだったこともあり期待してプレイすると、最初はグラフィックが綺麗になったり、操作性が格段に良くなったりと、進化した部分に感動していました。
しかし、徐々に「これって本当に同じマスエフェクトなのか?」と前作からの変化に違和感を覚え初め、途中から期待が落胆に変化していきました。
感触としては『ディアブロ2』の後に3をやった際のガッカリ感に似ています。
確かに操作性やグラフィックが格段に良くなっているものの、前作で好きだった部分がごっそり消失し別の物にすり替えられてしまったせいで、ゲームから受ける印象はまったく別物と変わり果てた・・・でも、一本の作品として見た場合は他の似たジャンルの作品群と比べても見劣りしない完成度に仕上がっているため文句も言えない。でも、まさにその部分があるから前作を評価していたという箇所は根こそぎ消え失せてしまっているので全然テンションが上がらない、というやるせないスパイラルに陥ります。
まず、今作からRPG(成長)要素がただの添え物程度に格下げされ、レベルアップの快楽性がほぼゼロとなりました。
それに、惑星探索パートも広大な地表そのものが舞台でスケール感のあった前作に対して、リニア型で退屈なステージ制の一本道マップを進み続け、うじゃうじゃ湧いてくるだけの敵をひたすら機械的に倒し続ける単調なアクションシューターと変わりました。
このアクションパートがただのリニア型になってしまったというマイナスは非常に大きく、スペースオペラとして非常に重要となる、壮大な宇宙の広がりを萎縮させてしまっており到底好きになれません。
広さと狭さのスイッチが絶妙だった前作のバランス感覚はどこに置き忘れてきてしまったのか、単調で魅力がありませんでした。
UIも、前作はライフ残量とシールド残量が両方表示されていたのに、今作では『Halo(ヘイロー)』型のシールド残量だけがゲージとして表示され、体力はダメージの深刻さに応じて画面が血で染まっていくというシューターとしてありきたりな仕様となり、ここもスペースオペラらしさが薄くマイナスでした。
ただ、体力残量の把握のしやすさという点においては気付いたらライフがゼロだったという事が頻発した前作よりは遙かに向上しています。
その他にも、前作にはあった、宇宙船のノルマンディー号から下船する際に艦長のシェパード少佐が船を離れるためいちいち艦長権限が副艦長に移行するという細かい手続き描写や、乗船する際に毎回検疫を受けるといった細かいこだわりもごっそり消え味気なくなりました。
このような、前作の細やかな描写が後退しやたら全体的にド派手仕様に変更されうんざりです。これは一作目と二作目の間にバイオウェアがEAに買収され、EA傘下になったことに関係しているのかもしれません。
前作の一見魅力が分かり辛くても縁の下の力持ちとして作品を支えていた要素まで削ぎ落してしまった結果、見た目が派手なだけの淡泊な作品になってしまい魅力を感じませんでした。
前作からの改善点
今作は、一応前作に比べ便利さが増した部分も多々あります。
まず、戦闘中でなくても常時ダッシュが可能となり移動が楽になったこと。これはそもそも前作が異常なほど移動速度が遅かったため単純に助かります。
それに、敵が有機生命体か機械かに応じて弾薬変更する際、弾薬がアビリティ扱いとなったため、いちいちメニュー画面を開かずとも戦闘中に手軽に変更できるようになったことなど、プレイユーザビリティは全般的に向上しているので、細かい好み云々を抜きにすれば、シューターとしては進歩したと思います。
ギャラクシーマップの変化
不満点が多い中で、前作よりも格段に良くなったと思うのはギャラクシーマップ周りの仕様変更です。
前作ではマップ上にある場所にカーソルを合わせるだけだったものから、ミニチュアノルマンディー号を直接操作して星系内を移動したり、マスリレイ(ワープ航行用の航路)を使って他の星団(クラスター)にワープしたりが手動で行えるようになりました。
これがベストの仕様だとは思わないものの、コンセプトは素晴らしいのにゲーム要素が薄めで味気なかった前作のギャラクシーマップへのテコ入れとしては及第点だと思います。
後は、RPG要素の埋め合わせのために実装されたのか、各惑星を探査し資源を採取しそれで武器やアーマー、特殊能力などのアップグレードを行うという要素も、ただデータを見るだけだった前作よりかは多少システム的な面白みを加味させておりそこそこ良かった程度です。
ただ、正直単調なこれを足すくらいだったら前作のRPG要素のほうが遙かに魅力的でした。
壮大な宇宙でひたすら無意味な仲間集めをするだけの物語

今作はメインストーリーのボリュームの約6~7割が仲間集め、もしくは仲間との信頼を深めるためのサブエピソードに割かれます。
選ぶミッションの順番によっては数十分前に仲間になったばかりのクルーと一緒に最終決戦に挑むことになるなど、度が過ぎるくらい話が仲間集めに終始します。
しかも、最終決戦に挑むのにある特定の能力や技術、知識が必要になるから仲間が必要といったような物語的な動機付けはほぼなく(専門知識を有するモーディンくらい)、ただ単に闇雲に仲間を増やし、別段集めた仲間の固有の経験や能力を用いて活路を見出すといった描写もないまま最終決戦が始まるので、なんでこんなに大量の仲間が必要だったのか最後まで理解できませんでした。
一作目のミステリー仕立てのような数万年に及ぶ壮大な宇宙スケールの謎が徐々に明かされていくといった興味を引く様な要素は乏しく、かつ仲間を大量に集めても結局海外のゲームにありがちなイデオロギーの異なる者同士のいがみ合いや摩擦描写をちょいちょい入れたがるため、集めた仲間同士がぎくしゃくしたまま最終決戦に挑む様な印象を受け、終始何がしたいのか掴み切れませんでした。
劇中何度か「(我々は)最高のチームだ」といったような会話選択肢が出現するものの、どいつもこいつも仲間を信用せず、いがみ合ってばかりでバラバラなためちっとも選びたいと思いません。
チームメンバーが揃っていくごとに、最終決戦へ向け高揚感が盛り上がっていかない時点で今作の試みはグダグダもいいところで、これなら前作の序盤でほぼメンバー全員が揃い、後はストーリーに集中するだけだった構成のほうが100倍マシでした。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
一本のTPSスタイルのSFアクションシューターとしては及第点だと思います。しかし自分がやりたかった上品で美しい『マスエフェクト』の続編ではありませんでした。
あえてトーンを抑制し他の似たようなSFシューターと差別化に成功していた前作だったのに、ただの騒がしいだけのありがちなリニア型シューターになってしまい好きになれません。
マスエフェクトシリーズ
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