プレイ動画
評価:80/100
ジャンル | オープンワールドアクション |
発売日(日本国内) |
2015年10月1日
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開発(デベロッパー) | Avalanche Studios |
開発国 | スウェーデン |
ゲームエンジン | Apex Engine |
ゲームの概要
このゲームは、オーストラリアの映画『マッドマックス』を題材とするオープンワールドアクションゲームです。
『マッドマックス』シリーズの中でも『マッドマックス:怒りのデスロード』と設定を共有しており、イモータン・ジョーの息子や私兵であるウォーボーイズが登場するなど、映画を知っている前提で説明が省かれている箇所も多く、先に映画を見ておいたほうが賢明です(ゲームだけだとイモータン・ジョーの詳しい説明すらされません)。
ただ、直接的な繋がりは一切なく、怒りのデスロードとの関連をやや匂わす程度の薄い関わりです
オープンワールドにも関わらず、あれもこれもと要素を足すようなことはせず、シンプルに車の改造のみに焦点を絞った潔い内容です。反面シンプルゆえにゲームとしての深みはなく、終始単調さが付いて回るのが弱点となっています。
一級のオープンワールドゲームには今一歩届かないものの、余計な煩わしさを排除し、シンプルに車を改造し、カスタムした車で戦うという、車を中心とするゲームデザインに徹する態度には原作映画の哲学に通じるような美意識を感じられ、好感が持てる作品でした。
ウェイストランドには車以外はいらん!!
このゲームの目的は、イモータン・ジョーの息子であるスクロタスに奪われた愛車(インターセプター)を取り返すため、成り行きで出会ったチャムバケットというメカニックと一緒に本作の実質主役であるオンボロ車(マグナムオプス)をひたすら改造していくだけという簡潔さです。
メインストーリーもマグナムオプスの改造度合いと連動して進行し、サブミッションなどのやり込み要素も多くがマグナムオプスの新たな改造項目をオープンしていく条件となっているなど、終始マグナムオプスという車の改造に意識を集中させる作りとなっており、これが何ともゲームの佇まいとして潔く好感が持てました。
この、まるでウェイストランダー精神を反映させたかのような余計な装飾や複雑なルールを排し、車を神のように崇めるチャムバケットの如くマグナムオプスの改造に全要素が奉仕する車信仰の強い作りは独自の美学すら感じさせます。
普通のオープンワールドゲームのような、あれもできるこれもできるといった物量偏重になりがちなものと異なり、これほどシンプルに徹し複雑だったり余計だったりするものを限りなく捨て去った軽やかなゲームプレイは逆に斬新でした。
ベースはUBIなので新鮮さは皆無
オープンワールドとしての基本はありがちなUBI型(『アサシンクリード』や『ファークライ』など)に近く、ファストトラベルの中継点となる場所をオープンしながら活動範囲を広げていくタイプで目新しさは特にありませんでした。
マックスが車を降りて生身でする戦闘は、こちらもありがちな『バットマン』シリーズに近いもので、攻撃・パリィ・回避をお手軽操作でこなしていくだけの薄味の内容です。マックスお馴染みのソードオフショットガンを近接格闘に混ぜながら使えるという以外に目を引く要素もありません。
ただ、メインが車による体当たり・投擲武器などを用いたやや操作に癖のある戦闘なため、生身での戦闘がお手軽という点はうまく差別化に成功しており別段マイナスには感じませんでした。
『ライズ/サン・オブ・ローマ』の様に、戦闘が主体のゲームなのにそこがバットマン風だとさすがに単調で物足りなさを覚えるものの、本作の様に車こそが主体で生身の戦闘はサブだといい感じで殴り合いが息抜きとして機能するため、このシンプルな戦闘は特にマイナスとは思いません。
シンプルさが裏目に出る底の浅いゲーム性
本作の不満な点はほとんどが褒め所の裏返しです。
利点でもあるシンプルさは単調さと常に背中合わせで、プレイ中何度も同じことを繰り返しさせられるため終始マンネリ気味。各エリアにある砦の設備を充実させる軽いやり込み要素も、マグナムオプスやマックスの強化に用いるスクラップ集めも全てがワンパターンで序盤であっさりゲームの底の浅さが暴かれ、作業感が否めません。
シンプルなので取っ付きやすい反面、驚くほどゲームとしての引き出しも少なく、序盤の好印象の貯金が後半に行くにつれ減っていく一方で、残高が増えることはありませんでした。
舞台となるウェイストランドは、『メタルギアソリッドⅤ/ザ・ファントムペイン』のアフガニスタンやアフリカのマップのように敵がうろつくばかりで砦など建物の中以外では一般人がまったく見当たらない作り(たまにイベント的にぽつぽつ擦れ違うだけ)で活気もありません。
景色も安っぽさこそ感じさせないものの、どこまで行ってもほとんど荒野か山か砂漠かオーソドックスなポストアポカリプス感を漂わせるだけの廃墟ばかりでセンスはイマイチでした。ロケーションの作り方や見せ方が垢抜けないため新しいエリアに辿り着いても景色に変化が乏しく、行動範囲が広がっていく過程にさほど感動がありません。せいぜい、ガスタウンだけ遥か遠方で常に炎を噴きあげ存在を誇示できているくらいでした。
このゲームが抱える問題の一つは『マッドマックス』の影の主役でもある死と暴力と車とガソリンの世界“ウェイストランド”という舞台がうまくキャラクター化していないことだと思います。
ゲームシステムそのものがあまりにもユーザーフレンドリー過ぎるという点も『マッドマックス』のようなただ人間が生きていくだけでも過酷で熾烈な世界という設定の足を引っ張っており、まるで過酷な世界を模したテーマパークの中でのびのびと遊んでいる様な本来生じてはいけない快適さが生じてしまっておりマイナスに感じました。
特に、拠点となる砦の設備を充実させてしまうと、序盤からほぼ弾薬などの消費アイテムや回復アイテムである水を無尽蔵に補給できてしまうため、難易度がダダ下がりするだけでなく、物資のありがたみまで損なってしまいます。
これなら中盤くらいまで消費アイテム不足で悩ませ物資のありがたみを実感させてから、ようやくゲームが折り返しに来たくらいで簡単に補給可能になるくらいで十分でした。
全体的にゲームとしてもう少し理不尽さが徹底されていたほうが『マッドマックス』の世界観と合っていたと思います。
メインの回復手段が水筒に入れた水というのがこのウェイストランドでは水は貴重で補給すらままならない乾いた世界であるという過酷さの演出にもなっており非常に感心させられたのに、序盤から早々にありがたみが消えてしまうのが残念でした。
マグナムオプスを生かし切れなかったメインミッション
本作で一番惜しいと思うのがマグナムオプスの改造に戦略性が伴わないことです。
例えばトップスピードが必要なミッションがあるからトップスピードを強化しようとか、曲がりくねった道を高速で走り抜けないといけないからハンドリング性能を強化しようとか、プレーヤーがミッション内容から改造項目を逆算で考えて選べる工夫がありません。
危険地帯を装甲を犠牲にしてスピードを重視し一気に走り抜けるか、逆にスピードを犠牲にして装甲を強化して耐え抜くかなど、複数の選択肢から自分なりにミッションに合った戦略を考えたり、もしくは現在の改造度合いに応じたやり方を見繕うといったような面白味が皆無です。
ただ均等に改造しただけのマグナムオプスで対処可能なミッションしかなく、改造の成果でミッションをクリア出来たという達成感がまるで生じません。
もし本作がシステムのシンプルさを損なわないまま様々な性能を要求してくる一筋縄ではいかないバラエティに富んだミッションを用意し、自由な改造プランをプレーヤー側に一任していたら『アーマードコア』シリーズのようなミッションに応じたカスタマイズのトライ&エラーの面白さを獲得できたかもしれません。
本作はもっともっと飛躍的に面白くなるポテンシャルを秘めているのに、それらを半分も発揮できておらず、せっかく車の改造に要素を絞ったのなら車の改造とゲーム性を完璧に一致させて欲しかったという不満が拭えません。
最後に
クリアまで約20時間ほど。
車の改造に焦点を絞りゲームの主軸としたのは良かったものの、詰めが甘く傑作までは手が届かなかった惜しい作品でした。
ただ、マッドマックスという美意識やこだわりの塊のような偉大な原作に一方的に飲まれファンアイテムに没することなく、ゲームはゲームで主張するべきところは主張できており大変好感触のゲームです。
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