トレーラー
評価:60/100
ジャンル | ロボットアクションシューティング |
発売日(日本国内) | 2012年3月8日 |
開発(デベロッパー) | フロム・ソフトウェア |
開発国 | 日本 |
ゲームの概要
この作品は、『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』のOVA版1~3巻を元にしたアクションゲームです。
フロムのロボットゲームの中では『A.C.E.(アナザー・センチュリーズ・エピソード)』系統の操作システムをベースにし、『アーマードコア』のハイスピードバトル及びオートリロード無しの弾薬使い切りシステムを足した相変わらずフロム・ソフトウェア的な既存のガンダムゲームとは異なる硬派なアプローチとなっています。
操作性は良好で原作再現度はそこそこ高めですが、原作のエピソードをなぞる本編がボリューム不足な上にオマケのモードまで単調なため到底満足にはほど遠い完成度でした。
中途半端さという呪いを運命づけられた作品
本作は元となるガンダムUCのOVA版が全7話のうち3話までしか出ていない状態で発売されたためゲームのラストは話がぶつ切りです。
それにOVA版の1~3話のエピソードを追体験するという内容なのでそもそも序盤で大規模な戦闘が少ないことの煽りを受けボリュームが圧倒的に不足するという当然の結果に終わっています。
メインコンテンツであるOVA版のエピソードを追体験するユニコーンモードは少しでもボリューム不足を解消しようとバナージ視点でのクシャトリヤ戦の後に今度はマリーダ視点でまったく同じ戦いをくり返すなど、同一の戦いを双方の視点から描くという苦肉の水増し策まで行っており、ややしつこく感じました。
さすがにユニコーンモードだけではボリューム不足なため、カスタムキャストモードというパイロットやモビルスーツ、僚機、武装、戦艦やクルーなどを自由に設定して挑めるオマケのミッションモードも搭載されています。
最初にユニコーンモードをプレイし終えた時は、正直この作品への印象は散々なものでしたが、このカスタムキャストモードをしばらくプレイすると自然と評価が向上します。
本編ではシナンジュやユニコーンガンダム、クシャトリヤなど、高火力で固いモビルスーツとばかり戦わされストレスが多く溜まりますが、このカスタムキャストモードはわりとザコ敵や戦艦をサクサク沈めていけるため本編で溜まっていたフラストレーションをうまい具合に解消してくれます。
自機以外に僚機を自由に設定できる点もプラスで、小隊行動をしているため仲間からの救援要請が発生するなど、ミッション中にこなさなければならない雑事が本編より多くむしろこちらのほうが操作性の良さやシステムの面白さをストレートに体感できます。
ただ、それでも制限時間内に敵を倒し続けるだけの単調なモードなためカスタムキャストモード単独で満足できるほどの作り込みではなく、飽きが来るのは早いです。
メインのユニコーンモードとオマケのカスタムキャストモード双方とも不満が多く残る内容であまり満足度が高いゲームではありません。
意外に存在感を放つモノローグチャプター
本作はPS2の『SIREN 』のように1~3話のエピソードがそれぞれキャラクターのタイムラインごとに区切られています。
そこに、この戦いの際に脇役のこのキャラは何を考えていたのかという心情吐露をするモノローグチャプターが存在しこれが意外に本編の雰囲気をアシストする働きをしており好印象でした。
このモノローグチャプター自体は特にどうということもない要素ですが、キャラの心情の掘り下げ方が丁寧でこのモノローグを聞いた後にアニメを見直すと同じシーンの印象が変化するほどです。
ハイスピードバトルを支える燃料の使い切りシステム
本作は同社のA.C.E.システムベースで、『アーマードコア4』や『フォーアンサー』系の加速感表現を取り込み、同じくアーマードコア(もしくはガンダムゲームでは『ターゲットインサイト』)の弾丸のオートリロード無しというシビアさをプラスしたかなりガンダムゲームとしては硬派なアプローチです。
急接近という敵に向かって急加速するシステムはアーマードコアのオーバードブーストを連想させるなど、全体的にハイスピードバトルの方向性に寄っていますがそれを支えるのが他のガンダムゲームでは見たことがない燃料の使い切りシステムです。
普通のロボットゲームでは大体ブースターでジャンプしたり加速したりする際は少量の決まったエネルギーゲージ(容量)分だけしか使用できず使用後は自動的にゆっくりゲージが回復していくという手法が一般的です。
しかし、本作ではある程度の大容量の使い切りの燃料が一度に与えられ、それを思う存分使って加速をくり返すことができます。その代わり燃料を使い切ると救済措置として一定の量は自動回復しますがかなり苦しいやりくりを求められるという具合です。
この大容量の燃料を使い切るというシステムのおかげで短時間ではあるものの他のガンダムゲームでは味わうことのできない加速し放題のプレイが可能でハイスピードバトルを存分に堪能できます。
ただ、この燃料のシステムや弾を撃ち切ってもオートでリロードされずフィールド内にある補給ポイントに接触するなど特殊な手段でしか弾が補充できないという不便さはどうしてもシューティングゲームとしての快適性を著しく削ぐ要素でもあります。
とてもではないですがボス戦(クシャトリヤなど)中においそれと補給も出来ないため常に弾切れ状態で戦っている様な状況にも陥りやすく手放しで評価できません。
原作再現度の高さ
本作の原作再現度は中々高く、ユニコーン独特のビームサーベルのように敵を斬りつけることも可能な粘っこい様なビームライフルの再現、スタークジェガンがミサイルポッドをパージし手持ち武器も投げ捨てサーベルへ持ち替えるクシャトリヤへの特攻再現など、遊び心満載です。
ゲームでガンダムごっこをして遊びたい自分としては、ターゲットインサイトでグフ・カスタムがガトリングシールドをパージし三連装ガトリングに切り替えるという原作と同じ動作が可能で大喜びした時以来の楽しさでした。
ただ、やはりA.C.E.のシステムという、正直アーマードコアに比べあまり完成度が高いとは言えないものがベースのためか、アーマードコア級に操作の快楽性はありません。
それ以外にも、空間的な処理が困難であろう宇宙が舞台ということも物足りなさの原因の一つだと思います。
地上戦など重力下でのミッションもあれば、もう少し印象が上向いたかもしれません。
フロムソフトウェアという病(やまい)
さすがにフロムのゲームというだけあって、難易度ノーマルでもゲームオーバーしまくる高難易度設定で、自分もユニコーンモードを普通に全ミッション(DLC以外)クリアするまでに20回近くは死にました。
もはや誰もガンダムゲームには求めていないであろう高難易度に調節するフロムは、何かゲームの難易度を意味もなく一定水準以上に保ち続けないと死んでしまう呪いにでもかかっているのかと疑ってしまいます。
最後に
宇宙戦をメインに据えたガンダムファン用のファンアイテムアクションゲームとして見るならかなりの完成度の高さで、フロムのロボットゲームとして見るなら『アーマードコア』には遠く及ばない凡作と言ったところです。
過剰な期待さえしなければハイスピードバトルや原作再現度の高さで中々侮れないパフォーマンスを発揮してくれる一作です。
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