著者 | 小島秀夫 |
発売日 | 2013年2月28日(単行本) 2019年10月27日(文庫版) |
難易度 | 易しい |
オススメ度 | ☆☆ |
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本の概要
この本は『スナッチャー』や『ポリスノーツ』などの傑作アドベンチャーゲーム、『メタルギアソリッド』や『デス・ストランディング』など世界的な評価を獲得したアクションゲームを手掛けたゲームデザイナー小島秀夫監督のエッセイ集です。
エッセイの内容は、小説、漫画、映画、アニメ、音楽など自身が影響を受けた様々な作品について想いが綴られており、クリエーターの内面が覗ける貴重なものでした。
『デス・ストランディング』がより豊かに楽しめ、エッセイとしても読み応え抜群の一挙両得な一冊
この本を読んで驚いたのは、書かれている小説や映画、音楽に関するエッセイの内容がほぼそのまま『デス・ストランディング(以下DS)』のテーマやメッセージに反映されていることです。
読むとなぜこれがDS発売直前というタイミングで文庫化されたのか腑に落ちました。
どの本を読んでも小島監督は自分の“好き”に素直で、磨き上げた感性こそが人生においても創作においても最大の指針という姿勢にまったくブレがないのが分かります。
このおかげで作家性が極端に濃い作品作りが可能で、それが似たものだらけの作品が氾濫 するゲームの世界でも一際存在感を放つ理由になるのだと思います。
しかも有言実行の人なため、小説の『神々の山嶺』のエッセイで出てくる誰も通っていない危険な道をあえて選んできたという言葉がそのままDSの人々の繋がりをゲーム全体で表現して見せるという革新的なゲームデザインにあてはまり説得力が半端ではありません。
『神々の山嶺』以外もドイツ映画の大傑作中の大傑作である『アイガー北壁』のエッセイもあり、この本を読んでDSの終盤なぜあんなに雪山エリアが長いのか謎が解けました。
この自分の感性を信じるという創作の姿勢が、映画とゲームを区別せず映像体験とゲーム体験を同時にプレイヤーに体感させ自身のMEME (文化的遺伝子)を伝えようとする癖のある作風になるのだなと考えさせられました。
そのせいで、小島監督と同じく自分の属する業界のルールや慣習より自分の感性に素直である、お笑い芸人でありながらヌーヴェルバーグに強い影響を受けた映画を撮るビートたけしさんや、同じく芸人なのにウォルト・ディズニーを超えるべく絵本作家として活動するキングコングの西野さんのように、お笑い芸人がお笑い以外の創作活動をやろうとすると「芸人なんだからお笑いに専念すべき」と批判される構造と非常に似た状態に置かれやすい人だなとも思います。
最後に
『メタルギアソリッド』シリーズやDSをより深く読める副読本として非常に優れている上に、小島監督の各作品への長い時間掛けて熟成された愛情がたっぷり詰まったエッセイ集としても抜群の面白さと、どこを取っても大満足の一冊でした。
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