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【PS4】キムタク、探偵になる 『ジャッジアイズ -死神の遺言- 新価格版』 〈レビュー・感想〉

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トレーラー

評価:90/100
作品情報
ジャンル オープンワールド
アクション・アドベンチャー
発売日(日本国内) 2018年12月13日
開発(デベロッパー) セガゲームス(龍が如くスタジオ)
開発国 日本
ゲームエンジン ドラゴンエンジン

ゲームの概要

 
この作品は、同じセガが開発する『龍が如く』シリーズと世界観設定を共有したアクション・アドベンチャーゲームです。
 
『龍が如く』にも登場する神室かむろを舞台に、弁護士資格を持ちながら本職は探偵という主人公・八神やがみが、神室町で発生する連続猟奇殺人事件の真相に迫っていくというストーリーです。
 
主人公の八神は元SMAPの木村拓哉(キムタク)をモデルとしており、ゲーム内でキムタクを自由に操作できるという貴重な体験ができます。
 
ゲームの基本は『龍が如く』シリーズとほぼ同じですが、主人公が元ヤクザではなく探偵であり弁護士という設定に合わせターゲットの尾行パートや集めた証拠を元に真相を解明する推理パートといったアドベンチャー要素が強化されており、アクション主体の『龍が如く』とはやや異なるゲーム性となっています。
 
まだシリーズ1作目なため、尾行パートやカギが掛かった扉を開けるピッキングやサムターン回しといった新規の部分がゲームとして洗練されておらず、数ある大作ゲームと比べ突出した完成度ではありません。
 
それでも『龍が如く』シリーズの派手なバトルや豊富なミニゲーム、ユーザーフレンドリーさなど優れた要素を踏襲しつつ連続猟奇殺人の真相を追うストーリーも安定して最後まで楽しいと『龍が如く』にもまったく引けを取らない傑作に仕上がっています。
 
なによりもキムタクの魅力を限界を超えて120%引き出してしまったセンスの良さと、道理をわきまえ正しい倫理観を備えた大人が作っていることが伝わる、かつて社会的に抹殺された者たちが再起するという物語に心打たれこのゲームの全てが好きになりました。
 

八神=キムタク

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このゲーム最大の魅力は、キムタクをモデルとする探偵でありながら弁護士でもあるという異色の経歴を持つ主人公・八神やがみのキャラクター造形の見事さです。
 
実際の木村拓哉というよりは、キムタクがこれまで役者として演じてきたドラマや映画の主人公イメージ(主に検察官を演じたドラマの『HEROヒーロー』)を元に人物像が練られており、ハッキリ言って過去のあらゆるドラマ・映画のキムタクよりも魅力的でした。
 
このゲームをプレイする前はただの『龍が如く』もどき作品と舐めていたら、この主人公・八神が完璧なまでに理想のキムタク像を体現するような存在感で、個人的に『龍が如く』シリーズよりも好きかもしれません
 
昔からキムタクが持つ、会話はため口で大人(権威)に対して反抗的な態度を取るヤンチャな若者というイメージを残しつつ、年齢を重ねて獲得した大人としての渋味が良い塩梅でブレンドされ、キムタクよりもキムタクらしいのではないかと思うほど理想的なアニキ像でした。
 
元売れっ子の弁護士でありながら現在は落ちぶれて探偵業を営むという設定も絶妙で、弁護士という職業のお堅いイメージがキムタクのラフな振る舞いでいい感じに中和されつつ、探偵は本人の癖をそのまま残してもイメージ通りと何から何までバランス感覚が優れています
 
この作品はアイドルとしての木村拓哉と俳優としての木村拓哉、その両方が持つカリスマ性を余すことなく完璧に引き出し切っており、なぜそれが実現できたかというとスタッフが木村拓哉という一人の人間をとことん愛しているからだと思います。
 
芸能人をモデルとしたゲームのキャラクターはこれまで何十人もいますが、本人を凌駕するほどの突き抜けた魅力に達しているのはこの八神が初めてです。
 
キムタクは子供の頃からTVドラマでもバラエティ番組でもそこに存在するのが当たり前のように見続けてきたはずなのに、このゲームに出会うまで自分はキムタクの真の魅力に気付いていなかったのだと恥ずかしくなりました。
 
このゲームをプレイすると心底キムタクにメロメロとなり、キムタクが主演のドラマや映画といった過去作を片っ端から見直したくなります。
 
キムタクらしさを余すことなく八神という人物に注ぎ込んだ結果、八神を操作しても楽しいし、ムービーを見ていても容姿も言動もまるで飽きることもなく最後まで輝き続けており、キムタク側もゲーム側も両方が得をする最良の関係性を築けていると思います。
 

リーガルサスペンスとしては優秀、だが設定はガバガバ

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このゲームの最大の魅力はキムタクらしさを詰め込んだ主人公・八神の存在ですが、猟奇殺人事件に秘められた謎が気になり続けるサスペンスドラマとしてもかなりの完成度でした。
 
ストーリーは『龍が如く』と同様に、テンポ良く衝撃的な事件が起こり続けるサスペンスを中心にしつつ、ある事情で社会から弾き出されたはぐれ者が、はぐれ者ゆえに同じような境遇の者たちのために立ち上がる再起の物語にもなっており、作り手の大人な姿勢に感銘を受けました。
 
『龍が如く』で言うとコンセプト的には1や5に近く、プレイする前は法廷劇を描くリーガルサスペンスと聞いてピンときませんでしたが、なるほど古傷を抱えた者たちが痛みを乗り越え再び立ち上がる話は『龍が如く』を踏襲しており、ヤクザ要素を薄めても通底する思想はまったく同じで何の違和感もなくプレイできました。
 
相変わらず『龍が如く』と同様に設定のディテールがゆるゆる過ぎて、ハッキリ言ってこれが小説だったらただの駄作ですが、主人公の八神が最高なのと先が気になる展開でグイグイ引っ張っていってくれるため、衝撃展開が続く限りは粗はさほど気になりません。
 
アメリカの作家マイケル・クライトンの膨大な情報量を詰め込む作風に多大な影響を受けている小島監督の『メタルギアソリッド』シリーズは、ミリタリー設定や銃の構え方、リロードの仕方に至るまでキチンと軍事アドバイザーを監修に雇ってプロの目から見て歴戦の兵士の振る舞いに見えるように細部にこだわりまくっており、出来ればこのシリーズもそのような作り方を徹底したほうがより完成度が高まると思います。
 
正直、話のスケールが大きくなればなるほどスカスカの設定がキツく感じられ、後半はややガッカリでした。
 
設定の粗よりもキャラクターの魅力や、スネに傷を持つ者たちの気持ちをすくい取って見せる作り手の100%正しい心意気や、ゲームとしての面白さが完全に勝っているのでそこだけ切り取ってダメということは一切ありませんが、シナリオ的にさらに上のステージに登ろうとするなら、この設定のユルさはどこかで改善しないといけない問題であり、これが残っている限りストーリーに没頭するのは困難です。
 

物量頼みで洗練されていないシステム群

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本作は『龍が如く』とまったく同じで、簡単操作でど派手なアクションを堪能できるバトルや、豊富なプレイスポットでいくらでも寄り道できる点は一定の中毒性があります。
 
しかし肝心の探偵気分を味わえるアドベンチャー部分は、ターゲットに気付かれないように跡をつける尾行パートも、施錠せじょうされた扉をピッキングやサムターン回しを駆使して突破する解錠パートもゲーム性が浅く正直すぐに飽きました
 
 

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特に尾行パートは長時間に渡って神室町の中をひたすらダラダラ歩かされるので、途中から楽しさよりも苦痛のほうが勝り終わった瞬間苦行から解放されホッとしてしまいます。
 
これは多分、元がアクションゲームの素材を無理矢理アドベンチャーゲーム用に転用してしまった問題と、そもそもステルスゲームを作るノウハウが足りていないためだと思います。
 
神室町の構造は『龍が如く』とまったく同じで、別段これはアドベンチャーゲームとして作っていないため、街の構造がやたら開けており尾行にまったく面白味がありません。
 
やるならもっと街を複雑にしてターゲットを見失いやすい狭くて入り組んだ路地を作るとか、場所によって適切な服装(若者向けの場所ならカジュアルな服装、オフィス街ならスーツなど)に変装しないとバレるとか、進入できない場所は瞬時にドローンによる空中からの監視に切り替えるなどの工夫を盛り込まないと単調ですぐに飽きます。変装やドローンを操作できる要素があるのに、これが尾行パートとまったく関係しておらず肩透かしでした。
 
ターゲットの動きもほぼワンパターンで、もっとフェイントを混ぜて思いもよらない動きをさせるとか、途中で変装して見た目が変わってしまうなどといった工夫もなく、ただただ退屈です。
 
バトルは『龍が如く』と同様に可もなく不可もなくでした。自分の場合『龍が如く0』から突然この『ジャッジアイズ』までシリーズを飛び越してプレイしたため、多少の新鮮さはあるものの、正直根本部分は同じでそこまでの変化は感じませんでした。
 

ただほとんどの店にシームレスで入れることや、建物の内部構造が立体的になっている点は感動しました

 
アドベンチャーパート以外で不満を感じたのが金策の大変さです。自動的にお金が振り込まれるようなシミュレーションゲームタイプではなく、VRすごろくというテンポが悪い双六ゲームをプレイしないとまとまった額のお金が手に入らず苦労します。
 
 

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さらに、このゲームはやたら物の値段が高めに設定されており、途中でドローンレースにハマりずっとドローン用のパーツを買い漁っていたら所持金が底を尽き、回復アイテムすらロクに買えない状態に陥り苦しみました。
 
 

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特に、敵がバトル中に繰り出す必殺技のような攻撃や銃で撃たれた際にライフの上限が削られ、それを回復するための治療が2万円、医療キットは1個4万円とふざけているのかと思うほどバカ高く、まともに治療すらできずライフ上限が削られたまま長時間過ごすことも多々ありました。
 
一応探偵なので依頼のサブクエストを達成すれば報酬が貰えますが、これは微々たるものでしかありません。ドローンパーツや回復キット1個分程度の報酬が大半で、退屈な尾行パートを長時間やらされる割に報酬が少なすぎてげんなりします。
 
強力な攻撃や銃撃でライフ上限が削られるペナルティはバトルに緊張感が生まれるので問題ないですが、治療に数万円も掛かるという点は理解に苦しみます。
 

治療費や治療用のアイテムはせいぜい数千円程度が限度だと思います。常に所持金がカツカツなのにこの度を越した価格設定はどうかしています

 
ちなみに今回のミニゲームで個人的に最も楽しかったのが、意外や意外にバッティングセンターでした。
 
 

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単純な反射神経だけでなく、変化球のコースを読む楽しさを前面に押し出しており、コースの読みが当たって見事ホームランを打てた際は快感です。
 
目玉であるVRすごろくやドローンレースよりもこのバッティングセンターのほうが楽しく、もっと様々なコースが用意されていれば文句ありませんでした。
 

6や極2からこういう仕様なのかどうかはプレイしていないため分かりませんが、少なくともバッティングセンターの面白さは過去最高でした

 
それとシステムとは関係ありませんが、大事な注意点としてはモーションブラーがキツイのかゲーム酔いしやすい人はかなり酔うと思います。自分はPCでゲームをする際はすべてのゲームでモーションブラーを切るほど苦手なので、このゲームもそこそこ酔いました。
 

『ジャッジアイズ』の致命的な欠陥

 
※ここからややネタバレが含まれます
 
 
 
このゲームで最大の不満は、設定がゆるゆるという点とも被りますが、アルツハイマー病患者の介護がどれほど大変なのか正面からキチンと描かなかった点です。
 
せっかくアドベンチャー要素が大幅に強化されているので、本編中にアルツハイマー病の患者を介護するというゲームパートを絶対に入れるべきでした
 
家族が認知症になりその介護の苦労で介護者が精神を病み悲劇が起こるという話は小説やドラマ・映画でも数多くありますが、これらの作品は認知症の家族を介護する大変さを情け容赦なく描くことは絶対に共通しており、本作はこの点が欠けています。
 

 
ゲームである以上、主要人物にアルツハイマー病の患者を出し、その介護がどれほど辛くそれによって介護者がどれほど心を病んでしまうのかという問題をゲームプレイによって体験させないと意味がないので、せっかくこのような認知症の介護問題という題材を扱うならそこは徹底して欲しかったです。
 
そのせいで敵側がどうしても私利私欲で動いているようにしか見えずテーマがやや薄れてしまっており、ここは本当に残念でした。
 

最後に

 
クリアまでそこそこ寄り道をして約34時間ほど。寄り道をせずメインストーリーだけ進めたとしてもボリュームは十分あります。
 
PSプラスのフリープレイで配られていたので何の気なしに始めたらあまりの楽しさにクリアするまで寝る間も惜しんでぶっ続けでプレイしてしまいました。
 

これほど素晴らしい作品を無料でプレイするとさすがに申し訳ない気分になります

 
とにもかくにもキムタクが最高で、自分はキムタクがここまで好きだったのかと気付かせてくれただけでもこのゲームに出会えて本当に良かったと思います。
 
スタッフがこの作品に込めた想いやメッセージも大人としては理想的な在り方で、これほどエンタメとして超絶面白い上に、社会的に抹殺された者たちに優しい視線を向け、人の弱さを肯定してみせる態度は尊敬に値し、この作品が大好きになりました。
 
 

 

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