トレーラー(※グロテスク注意!)
評価 1:95/100 2:75/100
発売日(日本国内) | 1:2012年10月24日(steam版) 2:2015年6月25日(PS4・vita版) |
開発(デベロッパー) | Dennaton Games |
開発国 | スウェーデン |
ゲームの概要
このゲームは、固定見下ろし視点のバイオレンス・アクションゲーム『ホットラインマイアミ』シリーズの1と2です。
1は似たようなゲームがまったく思い浮かばないという斬新さに加え、ゲームとしての欠点らしい欠点が一つも存在しないという豪快さと堅実さを兼ね揃えたゲーム史に残るほどの傑作でした。
それに比べ2は、前作譲りの高い中毒性は健在なものの、あまりに極悪な難易度に調整され過ぎた弊害で、楽しさよりストレスが勝ってしまう少々問題のある続編です。
目に、耳に、記憶に、べっとりと血の様にこびりつく鮮烈なゲーム体験を残す1作目

1作目は、面白さを追及するよりもつまらなさを回避し引き算的になるという海外のゲームで多く見られる傾向のお手本の様なゲームデザインで、その完成度の高さに度肝を抜かれました。
シンプルなルール、徹底してプレイヤーに与える情報を抑制し想像力をかき立てるシュールレアリスティック的でもあるストーリーテリングやビジュアルが高次元で融合し、見た目はスーファミレベルのグラフィックなのにも関わらず、それで表現的に到達可能と思われる領域を遙かに飛び越え訴えてくる力があります。
ゲームから漂う不穏さは、よからぬことが起こりそうな未来を示唆させ、それにより生じる張り詰めた緊張感は死にゲーをやる際に必須な集中力や観察力へと転化されるという、設定や雰囲気作りをゲーム性と乖離させない隙の無さも見事でした。
どのマップも常にゲームフィールドであると同時に物語の舞台でもあり続けるため、いついかなる時でも緊張が解けず、つまらないと感じる瞬間が一瞬たりともありません。
しかも、死んでからプレイ再開までが爆速で、他のゲームでは味わったことのないトライ&エラーサイクルを生み、この点も中毒性に磨きをかけています。
1は、間違いなくゲーム史に残るであろう怪物で、物語性・ゲーム性ともに他を寄せ付けないほどの高みに達した大傑作でした。
プレイヤーの心をへし折ること以外無関心な凶悪仕様な2作目
2で最も印象に残るのはピクセルアートでも、シリーズの核であるトリップするような電子音楽でも、時系列がシャッフルされているサイケデリックで謎めいたストーリーでも、相変わらず過剰で刺激的な暴力描写でもなく、やはり鬼畜的な難易度のバカ高さでした。1作目もかなりの高難易度でしたが、今作はその比ではありません。
この凶悪な難易度の高さを実感させられたのが、1、2ともに存在するプレイ中に1000回死亡すると取得できるトロフィーの入手タイミングです。
自分の場合、前作は本編中にそこまでの死亡数には届かず、ゲームクリア後トロフィーを入手するためわざと数百回近く死亡するという手間を掛けて手に入れました。しかし、2はこの1000回死亡という決して少なくない死亡数に中盤くらいのタイミングで届き困惑します。
前作からステージ数などボリュームがそこそこ増えていることなども理由の一つですが、今作はそれよりもプレイヤーを嫌がらせのごとく殺す事だけに特化したような敵配置が陰湿で、ステージごとの死亡率の高さが前作の倍以上に感じられます。
単純な敵の配置量が凄まじい上に、銃火器を持った敵が遠距離や死角に配置されていることが多く、気を抜いているといきなり視界の外から銃撃され死亡するというケースが多発。しかも、照明が暗いステージは敵が見え辛く、犬なんて毛が黒いため、黒い床と保護色のような関係になってしまい、目の前にいても姿が視認できないことすらある始末です。

今作はこの敵の姿がパッと見で確認できないという部分が強化されたせいで、ゲームとしての軸がアクションやシューティングという反射神経を要求してくるものから、敵の動きを逐一観察して行動を先読みしながら立ち回るステルス寄りに大きくシフトしたような印象を受けます。
全ステージ何十回、何百回と視点移動を駆使して遠くの敵の場所を確認し安全を確保しながら前進しても視界の外にまだ大量に敵が潜んでいるため、どれだけ念入りに調べても高確率で敵を見落とし、奇襲を受けます。
敵はありえないほど数を増し、しかも配置がより陰湿になったのにも関わらず、主人公は相変わらず攻撃一発で死ぬ脆さ。さらに前作にはあった被るマスクにより好みのボーナス能力を得られる要素が一部ステージ以外は撤廃され主人公がより弱体化し、さらにさらにステージごとにプレイアブルキャラクターが変わり、中には敵が落とした装備を拾えないキャラや、敵を殺すことが不可能で攻撃は気絶のみ限定という使い勝手の悪すぎる設定のキャラも混じるなど、細かい不便さやストレスが増大しました。
それ以外も、特定の武器を使わないと倒せない敵が大量に配置されているせいで武器選びなどの自由度が減ったり、ステージ選択画面などがややもたつきゲームのテンポも悪くなったりと、前作の持ち味が大きく陰ってしまいました。
ただ、ゲームをクリアする頃になるとこの極悪難易度に自然と体が慣れてしまい、あれほど四苦八苦した前作や序盤のステージはただのチュートリアル程度のぬるさに感じられるほど感覚が研ぎ澄まされます。そのため、高難易度ゲームとしてはそこそこの充実感が味わえるのがせめてもの救いです。
しかし、難易度の上げ方がとにかく数の暴力頼みや、敵をわざと視認し辛くするなど、まるでゲームクリア後の高難易度エンドコンテンツばかりやらされているような、到底スマートと呼べるような高難易度ゲームの作りには思えず、好感はイマイチ持てません。
次にストーリー面に関しては、説明臭さが増し、ミステリアスな雰囲気が後退しました。
1はテンポを損なう説明は二の次三の次で、キレの良い演出の力技でぽんぽんと進み続ける作りのおかげでスーファミレベルのグラフィックは別段気になりませんでした。しかし、今作は説明臭いパートが増え、テンポが悪化した分、このグラフィックのチープさがやや浮き上がってしまった感があります。
前作は徐々に主人公の理性が崩壊する様を最小限の描写だけで見せ、何か取り返しが付かない深刻な事態に陥っていく恐怖をドット絵だけで表現するという高度なことをやってのけていました。なのに、今作は余計な説明パートを増やした分、明示されない余白を読み取ろうという気が起きず、むしろ話の謎やトリックが押しつけがましくなり、最後までまったく興味が湧きませんでした。
改めて1のバランス感覚がいかにズバ抜けていたのかが分かり、むしろ前作の評価が上がります。
最後に
1はクリアまで数時間、2は約6時間ほどです。
1は文句なしの大傑作で不満は特にありません。
しかし2は、うんざりするほど余計な手間を足し、ストーリー部分はベラベラこれ見よがしに謎を説明し続けるという下品な語りとなり、一本の作品としては芸術的に美しかった前作の完成度に比べ、数段劣って見えます。
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