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【PS4】ゲリラゲームズの目覚ましい躍進! |『Horizon Zero Dawn(ホライゾン ゼロ ドーン)』| レビュー 感想 評価

トレーラー

評価:90/100
作品情報
ジャンル オープンワールド
TPS アクションRPG
発売日(日本国内) 2017年3月2日
開発(デベロッパー) Guerrilla Games(ゲリラ ゲームズ)
開発国 オランダ
ゲームエンジン DECIMA(デシマ)

ゲームの概要

 
このゲームは、文明が崩壊し機械で出来た獣が跋扈する未来の地球が舞台のオープンワールドアクションRPGです。
 
文明が崩壊した1000年後の地球で、機械獣たちはなぜ生まれたのか、地球の文明はどうして崩壊したのかという謎を解明していくというストーリーです。
 
雄大な自然の風景と機械の獣というヘタをするとミスマッチになりかねない素材を違和感なく調和させてみせるバランス感覚も冴えており、作品全体から滲み出る凄いものを作ってやるという気迫が溢れています
 
しかし、他を寄せ付けない技術力の高さや、気合いの入りように反して、ゲームに慣れるまでは敵の耐久力が高すぎて戦闘がいちいち長期化し面倒な点や、壮大に見えたストーリーが終盤失速していく点、ややゲームプレイが平板で起伏が乏しい点など、手放しで面白いとは言い切れない詰めが甘い部分もありました。
 

圧巻の美しさ、機械の獣が闊歩する迫力、そして単調さが同時に存在する世界

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本作の最大の見所は、空気が澄んでいるということを肌で感じさせてくれる清涼感のある風景や、古代の遺跡や巨大な機械の獣が闊歩する荒々しい光景が混じり合った圧巻のビジュアルです。
 
ここは、全編通してこだわり抜かれており、ゲーム開始からクリアするまで、絵的にしょぼいと感じさせる隙は微塵もありませんでした。
 
通常移動時や、リニア式の一本道のマップを進み続けるイベント時も多少の素材の使い回しはあっても、手抜きやコピペで作っているという素っ気なさを覚えることはありません。常にプレイヤーを飽きさせない繊細な配慮と、楽しませようとする温もりが感じられます。
 
機械獣が当たり前のように存在するという驚愕の光景も、初めてオープンワールドの広い世界で、ごく当たり前のように機械で出来た獣の群れと出会い、そのままシームレスに戦闘に移行するという体験をした際はゾクゾクするような興奮を覚えました。
 
ただ、どうしても機械獣との戦闘を軸にするアクションベースのオープンワールドなため、この世界に暮らす人々の営みや生活感表現は二の次で、やや単調さも覚えます。
 
景色も常に綺麗なものの、逆に平均的に綺麗すぎるきらいがあり、どこに行っても険しい山や草原が広がる美しい光景に、似たような外見の機械獣ばかりで、ややメリハリに欠けるところがあります。
 
今時のオープンワールドゲームでは珍しいほどゲーム内で出来ることが限られており、見所がほぼ機械獣との戦闘一択に絞られている点も単調さに拍車をかけています。自分の場合は似たり寄ったりなことを繰り返す展開に、中盤くらいで飽きが来て、ストーリーの先を見るためにやや惰性でプレイし続けました。
 
この世界の美しさそのものには何の不満もないですが、ゲームとしての手数が足りず、機械獣との戦闘に魅力を依存しすぎており、どうしても単調さが付いて回ります。
 

迫力満点なのに肝心の手応えはイマイチな戦闘

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巨大な機械獣と不意に遭遇し、そのまま広い場所で戦闘に突入した際は「これが本当にオープンワールドなのか!」と困惑するほど敵の巨体と重量感が凄まじく、通常のゲームのボス敵がそこら辺をうろついているかのような豪華さに感動を覚えました。
 
それに、グラフィックがハイレベルな割に、PS4スリムでもフレームレートがそこそこ高く、ほぼストレスない操作性を実現できているのも喜ばしい点でした。
 
戦闘は基本はステルス主体なものの、敵に発見されたら本格的なTPS式の戦闘に移行します。
 
使える武器は、威力は弱いものの使い勝手の良い弓や、取り回しがイマイチなものの威力が高い弓がメインです。
 
その他にもショットガンのような散弾を射出する近距離戦用の武器や、グレネードランチャーのような榴弾を撃ち出す広範囲攻撃用の武器、トラップを設置して敵を足止めしたり迎撃したりするテクニカルな武器など、複数の武器を装備し、戦闘中に瞬時に持ち替え可能です。
 
どの武器を使うかはプレイヤーの自由なため、敵に応じて使い分けてもいいし、好みの武器だけ使うことも可能になっています。
 
それに、戦闘周りで非常にユニークな要素が、銃でいうリロードのような弾薬の補充をクラフトで代用するという戦闘サイクルの作り方です。
 
 

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持てる矢や弾には上限があり、戦闘中使い切ったらクラフトでその都度補充する必要に迫られます。これが普通のシューターでいうリロードのような働きをし、矢や弾の残量に気を配りながらどのタイミングで補充するのか常に意識させられるため、戦闘中も集中力が途切れず非常に好印象でした。
 
アクションの操作性も良く、複数の武器から好みのものを選べる自由さもあり、戦闘中にクラフト要素を組み込むアイデアも面白いしと、戦闘面の完成度は非常に高く、これがオープンワールドで可能なことが最後まで信じられないほどの高みに達しています
 
しかし、本作には大きな落とし穴があります。それは、敵の耐久力の高さです。
 

機械だけに硬すぎる敵たち

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このゲームにおいて最も不満だったのが、機械獣の耐久力が高く、戦闘がいちいち長引いてしまうことです。
 
個人的に敵の攻撃力が強くてあっさりやられるようなゲームはそれほど苦にはならないものの、敵が硬くて倒すのに時間がかかるゲームは極端に苦手なため、このゲームとは相性が最悪でした。
 
一応どの機械獣にもパッと見で分かる、与えるダメージ量が大幅に増える弱点が設定されています。しかし、通常部位でも問題なく倒せるのに、弱点を攻撃すればより戦闘が有利に働くといった類のものではありません。弱点以外の部位への攻撃はダメージ量が少なく、ほとんど弱点への攻撃を強制されるようなバランスです。
 
しかも、弱点部位を攻撃して与えられるダメージ量というのが、普通のゲームの通常攻撃に比べやや高い程度なため、小さな部位を狙うという手間が掛かっているのにも関わらず、攻撃回数が増えがちで、あまり効率的にダメージを与えられているという手応えがありません。
 
中にはベロウバックのような背中のタンクを破壊すると周囲の機械獣を巻き込むほどの大爆発を起こす、攻撃することに快感を覚える敵もいるものの、本当に一部だけです。そのため、弱点を突くという本来快感として機能するはずの行為がほとんど作業にしか感じられず、戦闘はどうしても面倒さが先行してしまいます。
 

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ステルス状態や、一対一のシチュエーションでは的確に弱点を攻撃し、一方的に仕留めることも容易なものの、本作はやたら乱戦状態に持ち込まれるケースが多く、弱点部位を攻撃しようと弓で狙いを定めている隙をつかれて数の暴力でなぶり殺しにされるなど、戦闘する度にどっと疲労が溜まりキツイと感じることが多々ありました。
 
ただ、スキルツリーをあらかた解放すると、武器に装備する改造用のコイルというアイテムの着脱が可能となり強力なコイルを惜しむことなく装着し武器の攻撃力を大幅に強化できるようになるのと、弓を使用する際に一度に二本・三本の矢を同時に射ることも可能となり、序盤~中盤に登場する程度の敵の硬さはほとんど苦にならなくなります。
 
しかし、終盤はより耐久力が高い敵も増えるので、結局あまり楽になっているという実感はありません。
 
前述した通り、戦闘周りの完成度は高いのに、この敵が硬くて戦闘が長引くというバランス調整が極端に合わなく、中盤以降はフィールド上で機械獣と遭遇しても面倒で避けてばかりで、長引く戦闘に勝るほどの魅力を感じなくなりました。
 

右肩下がりなストーリー

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本作は、一応壮大なスケールの世界観設定や物語が用意されているため、序盤~中盤はそれを知ることが強いプレイ動機となります。
 
しかし、世界観設定そのものは面白いものの、ストーリーテリングのテクニックがぎこちなく、なぜ過去の文明が崩壊したのかという謎が明かされていく展開が徐々に説明臭くなり、終盤になると興味が失せました。
 
プレイヤーに想像させる余地を残すようなミステリアスな語り口でなく、「えっと、こういうことがあって、それでこういうトラブルが発生して、それでこう対処して、それで事態がこう変化して、結果今の世界はこうなったんですよ」というただ起こった出来事を順に並べていくだけの事務的な態度で、「はぁ、そうですか・・・・・・」と、途中からこちらの期待を上回るような展開が皆無となり、ただ黙って説明に耳を傾けるだけでした。
 
ストーリー部分は全体的に雑で、主人公アーロイの育ての親であるロストというキャラは、ノラ族から異端者として扱われているのにその説明がなく、てっきり後々この世界の謎の核心と絡むのかと思いきや、終盤にされる異端者になった理由がまったく主要な物語と関係なく、一体なぜこれほど引っ張ったのか意味が分かりません。
 
それに、心底落胆したのが、物語的に最重要なものとして登場する古代の遺跡の扉が開く際に、プレイヤーに操作させずムービーで処理する姿勢です。ここは何が何でも全ての始まりの場所への一歩をプレイヤーに操作させ、扉をくぐらせるべきなのに勝手にムービーで処理されるので、その安易さに呆れました。
 
このゲームはプレイヤーに操作させる箇所と勝手にムービーで処理する箇所の決め方がデタラメで、どんなに話にスケールがあろうとこんな初歩的な演出ミスをしでかすようでは興味を持てません。
 

最後に

 
クリアまで約25時間ほど。
 
オープンワールドアクションゲームとしてのポテンシャルは凄まじく高く、そこだけ見れば間違いなく大傑作です。
 
しかし、ゲームの単調さや敵の硬さ、物語の終盤の失速など細かい不満も数多く、トータルで見るとそこまで諸手を挙げて絶賛というほどのテンションには至らない作品でした。
 
それでも、この美し過ぎる世界と機械獣の絶妙な取り合わせ、そしてオープンワールドとしては破格なまでの戦闘の迫力は一見の価値はあります。
 
 

 
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