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【PS4】中毒度200%の超傑作メトロイドヴァニア! |『Hollow Knight(ホロウナイト)』| レビュー 感想 評価

トレーラー
評価:95/100
作品情報
ジャンル メトロイドヴァニア
発売日(日本国内) 2017年2月24日(PC版)
2018年9月26日(PS4版)
開発(デベロッパー) Team Cherry
開発国 オーストラリア
ゲームエンジン Unity

ゲームの概要

 
この作品は、名も無き虫となり多くの謎が瓦礫と共に眠るいにしえの王国ハロウネストを探索していくメトロイドヴァニアです。
 
メトロイドヴァニアにソウルライクの要素が加えられており、やや高難易度なのが特徴です。
 
大作ゲーム並みのボリュームで、アクションも完成度が高いと、メトロイドヴァニアというジャンルの中では突出した出来でした。
 
そして、何よりもアニメーションやSEなど、ボタン入力に対しゲーム側が返してくれる反応のきめ細かさが細部まで徹底して行き届いており、一度触れると虜になります。
 
しかし、マップの広大さをカバーするファストトラベル的な要素が貧弱でゲームの大半が移動時間に費やされるという大きな不満はあります。
 
それでも、短所よりも長所が大幅に勝る大傑作でした。
 

100年後にプレイしても傑作であり続けているであろう破格の完成度

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本作をプレイしてまず思うのは「なぜこのゲームに体験版がないんだろう?」ということです。
 
実際自分がそうでしたが、このゲームはPVやスクリーンショットなどから受ける事前の印象と実際にゲームを操作して得られる感動が別物です。
 
動画や静止画でもデザインが秀逸なことや、背景やライティングが美しいこと、操作の快適性などはなんとなく伝わってくるものの、実際に自分で動かしてみると、それら見た目の印象は本作のバケモノさのほんの一端でしかないことを思い知らされます。
 
とにかく心を奪われるのが、コントローラのボタンを入力するという些細な行為に対し、ゲーム側が返してくれる反応のきめ細かさです。
 
敵を倒した際のアニメーションや、攻撃の確かな手応えを感じさせるやけに生々しいSE。高所からの着地の際に草が舞ったり土煙が上がったりというエフェクトのこだわりと、ゲーム内に手を抜いている箇所が微塵も存在しないため冷める瞬間がありません。
 
行動に対し常にゲーム側が何かしら繊細な反応を返してくれるという、アクションゲームとして基本中の基本部分が強固なため、その上に歯応えのある高難易度のボス戦を乗っけようが、メトロイドヴァニアとしての探索要素を乗っけようが、さも当たり前のように馴染み中毒性がありえないほど高いです。
 

厳かなハロウネストと脱力感のある虫たちの奏でるハーモニー

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本作はハロウネストというかつて栄華を極めた国が滅び、その威光の名残である荒れ果てた廃墟を進んでいくという構造や全体のトーンは『ダークソウル』にやや似ています。
 
しかし、ダークソウルは建造物と人物のデザインの調和が取れているのに対し、コチラは背景美術の精緻な描き込みに対し虫たちのシンプル極まりないキャラクターデザインのリアリティがどこかチグハグに感じる箇所もあり、良い意味で深刻になり過ぎず見ていて癒されます。
 
 

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虫といっても、成虫ではなく幼虫のまん丸くてぷにぷにとした可愛げを残したままサイズだけ大きくしたようなデザインが多く、時には可愛く見えたり、時には気色悪く感じたりと、印象が固定化されず見ていて飽きません。
 
 

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虫だけでなく植物やキノコなど菌類の敵もいる
一部ジメジメした地下を探索するといきなり生理的嫌悪感を覚えるほどおぞましい虫が出現するなど、ホラー要素を加えることでメリハリを出そうとする手法はフロム・ソフトウェアっぽいなと感じました。ただ、全体の4分の1とか、下手をすると3分の1は薄暗い気味の悪い地下を探索させるのはやり過ぎだと思います。
 
こだわりが貫かれたアクションにしろ、虫の体の模様を至るものと融合させたような美術全般にしろ、虫たちの掴みどころのない飽き辛いデザインの魅力にしろ、このゲームを作っている人たちはどれだけセンスの良いアーティストの集まりなのかと畏敬の念すら抱いてしまいます。
 

メトロイドヴァニアとしての長所

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基本のゲーム部分は本当に優秀で、このゲームを始めてからはクリアするまで四六時中続きをやることしか考えられなくなり、日常生活に支障をきたすほどドハマりしました。
 
ただ、非常に優れた部分と不親切に感じる部分の両方が極端に目立つため不満を覚えることも多めです。
 
アクション以外に優れている点は戦闘や探索時の音の使い方がうまいことです。
 
背景に溶け込みカモフラージュ状態で姿を隠している敵が音で自分の位置を事前に知らせてくれるため不意打ちばかり喰らって過度なストレスにならない配慮や、探索時にどこからともなく声が聞こえNPCの居場所や、隠し部屋・隠し通路の存在をそれとなく示唆してくれるなど、音の使い方は本当にセンスが良すぎて惚れ惚れします。
 
それに、インディーズゲームとは思えないほど大量のボス戦も一部異常な強さの敵を除けば基本はユーモラスな動きを観察し攻撃や回避タイミングを覚える過程は楽しいためいい刺激でした。
 

 

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チャームという装備を付け替えることで近距離戦・遠距離戦・回復特化型など戦術を変えられる

メトロイドヴァニアとしての短所

 
本作最大の問題は通常移動時間の長さです。
 
一つ一つのエリアが広大なのにも関わらず、ファストトラベルのような働きをする駅が本当にポツポツとしか点在せず、広さをまったくカバー出来ていません。そのため、ゲームの大半は一度通った場所を何度も繰り返し移動させられる手間に費やされます。
 
スーパーダッシュという超高速移動能力を獲得すると多少は改善されるものの、それでも根本の不満は解決されません。
 
 

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けれん味のある加速表現が気持ち良すぎるスーパーダッシュ!
その他にも細かい不満がテンコ盛りでした。
 
まず、移動時間の長さに関連する不満がリトライポイントからボスのいるエリアまでの短くない移動距離です。これはフロム・ソフトウェアのゲームでも感じる不満ですが、ボスにやられた際に再びボスのいるエリアまで移動するのに毎回けっこうな時間を喰うため繰り返し移動させられるとただただしんどいです。
 
『ダークソウル』も長くて気が滅入ることが多々あるのに、本作はダークソウルの中の割と長めの区間が標準のような不親切さでした。さすがにフロムのゲームのボス戦ほど高難易度ではないため、リトライ回数は控え目ですが苦痛を伴うことに変わりはありません。
 
次は、『ダークソウル』と同じように死亡すると死亡した場所に所持金と一緒に自分の影が残り、それを倒さないとお金を失ってしまうというシステムがイマイチ機能していないことです。
 
単にボスにやられた際にボスの手前に影が残るだけとか、たまに回復し忘れるという不注意でパラパラと死ぬ程度で、ダークソウルのように即死トラップが大量にあるとか、強敵が配置されていて戦う際に緊張感を生じさせるなどといった目的がほとんど存在しません。
 
なので、所持金を失うかもしれないという適度な緊張よりも、単に落としたお金を回収しなければならないという煩わしさだけが際立ちます。
 
最後に、これは長所と短所両方併せ持つため、どちらとも言い切れないのが、初めて訪れるエリアの地図をその都度そのエリア内にいる特定のNPCから入手しなければならない点です。
 
ただでさえメトロイドヴァニアというジャンル特有の癖である次にどこに行って何をしていいのか分からないという手探り状態に置かれているにも関わらず、さらに今現在探索することに意味があるのか不明な場所の地図をいちいち探さないといけないという、目的の不明瞭さが二倍になるため地図探しをしている最中はかなりストレスが溜まります。
 
 

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発見するとそこのエリアの地図を売ってくれるコーニファー

 

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L1ボタンではなくメニューボタンから地図を開けば、任意の怪しい場所にマーカーを設置できることに中盤で気付いた。これは序盤の段階で丁寧に説明して欲しかった
このようにゲーム内の至るところに細かい不満が存在し、終始快適というワケではありません。それでも本作の魅力はこれくらいの不満で陰る程度の軟弱なものではないため、最終的には楽しさが圧倒的に勝ります。

 

最後に

 
クリアまで約26時間ほど。
 
このゲームの究極のもどかしさは、完成度が凄まじすぎて、この一作をやってしまうと他の似たようなジャンルのインディーズゲームがことごとく物足りなく感じてしまうことです。
 
間違いなくこれまで自分がプレイしたメトロイドヴァニアの中ではダントツの傑作でした。
 
 
 
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