プレイ動画
評価:80/100
ジャンル | RPG |
発売日 | 1992年11月20日 |
開発(デベロッパー) | ウィンキーソフト |
ゲームの概要
このゲームは、アニメの『機動戦士ガンダム』シリーズ、特撮の『仮面ライダー』、『ウルトラマン』シリーズのキャラクターや設定をクロスオーバーさせたRPGです。
ロボット工学が発達したガンダム大陸、サイボーグ技術や遺伝子工学が発達したライダー大陸、超能力者が多数存在するウルトラ大陸という三つの大陸が存在する惑星エルピスが舞台となります。
世界規模で頻発する紛争やテロ対策のため各大陸の主要国が協力して結成された“ゼウス機関”のメンバーとなり、世界各地の紛争やテロを解決していく過程で、テロリストたちを統率するアポロンという謎の人物の真相に迫るというストーリーです。
ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマンという素材の混ぜ方は各作品の持ち味を損なうことなく生かせており、一つでも好きなシリーズがあれば入り込みやすいと思います。
ターン制のバトルはシンプルながら様々な工夫がテンコ盛りで、スーファミのRPGの中でも良く出来た部類です。
残念なのはストーリーが続編を匂わせながら中途半端に終わってしまうことや、終盤のボス戦がやたら高難易度すぎて嫌気が差すくらいで、子供の頃以来のプレイでしたが今現在遊んでも十分通用する面白さでした。
ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマンの見事な共演
このゲームに登場する三作品の中では、ガンダムシリーズはほぼ全作品見ており、元ネタを完璧に理解できる知識はありますが、仮面ライダーやウルトラマンは一部作品しか知らず、原作の雰囲気をどれくらい再現できているのかは分かりません。
ガンダムに関して言うと、用語を無理矢理当てはめているだけで、ガンダムが詳しい人間が見て納得出来るほどの域には達していませんが、作風がコミカルでかつノリがゆるいので許せてしまえる程度の違和感です。
地球連邦がないのに反地球連邦組織であるエゥーゴという名前の国が登場したり、国家であるジオンとただのジオンの宇宙基地の一つであるアクシズが同格の国として扱われていたり、主人公の一人がアムロなのになぜかガンダム系の最後のボスはシャアではなくシロッコなど、ツッコミどころは多数ありますが、それでも元のガンダムの世界観設定を理解していれば楽しさは倍増します。
ハマーン・カーンがただのお人好しとして登場したり、叔父であるガルマ・ザビと姪のミネバ・ザビがニアミスする場面があったりと、原作を知っていると笑えたりドキッとしたりする箇所がいくつかあります
ここら辺は『スーパーロボット大戦』シリーズが戦争を題材にしたロボットアニメだらけなため設定を硬派でシリアス寄りにバランス調整するのに対し、SD作品らしくゆるくコミカルな作風で統一しており、分からなければわからなくて雰囲気だけでOKという気軽さが魅力です。
TPを管理するターン制バトルの魅力
このゲーム最大の魅力といっても過言ではないのがTP(テクニカル・ポイント)管理を主軸としたターン制バトルです。
本作のバトルで最重要となる数値がTPという必殺技を使用する際に消耗するMP(マジックポイント)のようなもので、このTPは敵を攻撃した際に少量回復するか、敵にトドメを刺すと大きく回復するか、もしくは貴重なアイテムを消費するのみしか回復手段が存在しません。
そのため、毎回バトルの度にTPを回復させたいキャラでうまく敵にトドメを刺せるように攻撃のタイミングを調整する必要に迫られ、これが適度に思考を促 し、バトルが作業化し辛くなっています。
しかも、攻撃するとTPが回復するだけでなく、ぼうぎょコマンドを選ぶと被ダメージ量が減ると同時にHPも回復する嬉しいボーナスがあるとか、にげるコマンドを選ぶと100%逃走が成功する代償として“こんじょう”というステータスが減少しバトルにマイナスな影響を及ぼす(町の病院に行くと回復できる)など、バトル中の全ての行動にプラスのご褒美かマイナスのペナルティが細かく設定されており、インセンティブのデザインが秀逸です。
例えば、ぼうぎょ時にHPが回復するというボーナスがないと、特定のキャラのTPを回復させるためわざとぼうぎょすることが面倒に感じますが、HPの回復というプラスの効果があるせいでぼうぎょがHPの回復の役割も担いストレスが軽減されます。
しかもこのゲームは被ダメージ量がかなり多めに設定されており、常にダメージを受けた状態になりやすく、少量のHPが回復するだけも得した気分になれます。
ただ、終盤はHP量に対して回復量が少なすぎてこの点はほぼ無意味になるのが残念でした
バトル中の全行動にプラス・マイナス効果が設定されているという気配 り以外で優れているのが、敵を倒すと爆発し小気味よい効果音が鳴り響くという演出です。
この、ガンダムのモビルスーツの爆発、仮面ライダーの怪人の爆発、ウルトラマンの怪獣の爆発と、ロボットアニメやヒーロー特撮でお馴染みの爆発の演出をRPGに持ち込んだことが本作独自の魅力として機能しており、敵を倒した際の快感が強化されています。
RPGで倒した敵が景気よく爆発するだけで快感なのは意外な発見でした
それ以外でも、敵のHP残量によって攻撃時の手応えが変わり敵に与えたダメージ量を感覚的に把握できる工夫や、与えた(受けた)ダメージ量が表示される際に数字がバウンドするような動きで表示されるのが気持ちいいとか、ひっさつでトドメを刺すと決め台詞が挿入されるなど、大小様々なこだわりが施されており、バトル自体はシンプルなのに決して飽きません。
手抜きにも程がある町とダンジョン
ターン制バトルには目を見張るものがありますが、町やダンジョンの作りはチープで褒める部分は特にありません。
RPGツクールで作ったようなコピペテクスチャの町やダンジョンには個性と呼べるものが一切存在せず、ガンダム大陸なら美術をスペースコロニー風のデザインにするとか、ライダー大陸ならダンジョンが秘密結社のアジト風でおどろおどろしいなどのこだわりが感じられません。
そのため、ガンダム大陸、ライダー大陸、ウルトラ大陸間を移動しているのに同じような街並みやダンジョンしかなく、今自分がどの大陸にいるのか町の名前でしか判断できませんでした。
町と町とを移動する際はスーファミの拡大・縮小機能を応用したムービーのようなものが挿入されるものの、町を移動しても何も見た目が変わらないため拍子抜けでしかありません。
こんな大仰なものは各大陸間を移動する時だけ挿入すればそれで十分だと思います
おわりに
クリアまで約20時間ほど。終盤いきなり難易度が跳ね上がるためそこまで楽しかったのに、クリアする頃にはボス戦で疲れ果てヘトヘトになりました。
シンプルながらこだわりが散りばめられたバトルは非常に好感が持て、それ以外の部分は手抜きだらけと、長所と短所がハッキリ別れます。
ただ、バトルの魅力だけなら同時代(スーファミ世代)の『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』にも匹敵するほどの完成度で、ガンダム、仮面ライダー、ウルトラマンの世界観をクロスオーバーさせることが目的の版権ものとしては素晴らしい出来でした。
今回再プレイしてF91以外にもサイバスターとグランゾンを仲間にできる方法があると初めて知りました
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