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前作とまったく同じ失敗を繰り返すてんで学習しない続編 「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE(リライズ)」 〈レビュー・感想〉

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第一話(webアニメのため、2020年11月30日までは全話YouTubeで無料で視聴できます)

評価:70/100
作品情報
配信期間 1st Season:2019年10月~12月
2nd Season:2020年4月~8月
話数 1st Season:13話
2nd Season:13話 全26話
アニメ制作会社 SUNRISE BEYOND

短評

 
 前半はGBN(ガンプラバトル・ネクサスオンライン)内で出会ったそれまでなんら接点の無かった者たちが交流を深め、互いに心の傷を癒し、失った自信を取り戻していく青春ドラマ風味の話で新鮮な気持ちで楽しめる。
 
 しかし、謎を引っ張り続けるサスペンス重視な前半部とは打って変わり、後半になると前作の『ビルドダイバーズ』同様に次から次に脚本のずさんさが目立ち始め前作と似た駄作臭が漂い出す。
 
 結果、前半は誰が見てもそこそこ楽しめるが、後半は前作の『ビルドダイバーズ』が苦手だった人間にとってかなり苦痛を伴う内容へと変わり果て、ラストはぐっちゃぐちゃで見られたものではなく余韻はイマイチ。
 

「ガンダムのスケールってこのくらいだよね」という先入観を逆手に取った衝撃の展開を叩き付けられる前半パート

 
 この作品は、前作の『ガンダムビルドダイバーズ』の最終話から2年後の世界を描く完全な地続きの続編です。そのため、前作を見ていないと確実に理解に支障をきたします
 
 まず、大前提として今作は前作の『ビルドダイバーズ』とも他のガンダム作品とも一線を画する構造をしており、これまでのガンダム作品では通用した常識が一切通じないという特殊な作りです。
 
 それに、前半部を最後まで見通すことを前提としており、途中で視聴をやめてしまうとストーリーの意味も今作の意図もまったく理解できません。
 
 冒頭はジョン・ヒューズの青春映画である『ブレックファスト・クラブ』のような、普段ならまったく接点のない少年少女4人が偶然オンラインゲーム上の謎のミッションでチームを組むこととなり、最初は互いがどこの誰かも分からず戸惑っていたのが、次第に悩みを打ち明けあい心を通わせていくという青春ものをガンダムでやりたいのかと誤解しました。
 
 今作は青春ものっぽいとか、異世界ものっぽいとか、デスゲームものっぽいという分かりやすいジャンルを次から次にちらつかせて油断させてから、満を持してそれら全てを無に帰すような衝撃的な事態に発展するので、初見時にはその大胆さに呆気に取られました(コアガンダムのプラネッツシステムってそういう意味が込められていたんだと驚きます)。
 
 例えるなら、連邦軍とジオン公国が戦争している際に、コロニー落としでスペースコロニーを地球に落下させたら、その衝撃で深海や地球の内部で眠るクトゥルフ神話の旧支配者たちが目覚め、全人類vs邪神の戦争が勃発するみたいな、ジャンルがガンダムではありえない方向にねじ曲がり出すため、ガンダムを知っていればいるほど受けるショックが半端ではありません。
 
 しかも、前作でガンプラバトルをオンラインゲーム上で行う形式にしたのに、もう今作で「これは痛みのないバーチャルなゲームなんかじゃない、リアルだ!」と言いだし、「そっちが勝手にオンラインゲームにしたんだろ」とツッコミたくなる、清々しいほど開き直った態度で、初代の『ビルドファイターズ』の強引さを思い出しました。
 
 これまでやってきたことを全部ひっくり返すような衝撃は映画の『マトリックス リローデッド』にも通じるものがあり、わりと保守的なイメージのあるガンダムでここまでぶっ飛んだ体験が味わえるのは貴重です。
 

まぁ、良かったのは前半だけですけどね……

 

なぜか前作を神格化する謎のプロパガンダが始まる後半

 
 前半は4人が徐々に絆を深めチームとして成長していく過程と、謎のミッションの秘密に迫るサスペンス展開と、前作とはまるで異なる新鮮なストーリーを充分楽しんでいたのに、後半に入るとその様相が一変。前作の『ビルドダイバーズ』とほぼ同じ、大雑把で痛々しく薄っぺらいだけのセリフを大声で叫び合うお馴染みの展開が増えだし、辟易させられます。
 
 前作のそこが嫌いで、どちらかというと静かなドラマに徹し、コミカルさは本当の自分を偽り周りに本心を隠すための仮面として利用するリライズを評価していたのに、後半はまた痛々しいやり取りに戻るのかと落胆しました。
 
 しかも、やたら前作のリクたちビルドダイバーズのメンバーのことを美化し褒め称える場面を見せられ続けるため、前作が嫌いな人間からしたら勘弁してくれとしか思いません。
 
 後半でようやく今作の主人公であるヒロトと電子生命体であるELダイバーであるイヴとの想い出が回想として語られ、なぜヒロトがビルドダイバーズという伝説のフォースに複雑な感情を抱くのかという謎や、なぜヒロトはイヴを必死で探していたのかという真相が語られますが、ここもとにかく性急で雑。
 
 後に重要となる宇宙を連想させる満天の星空の下で出会うという舞台のセッティングこそきちんとしているのに、出会って即ヒロトとイヴがイチャイチャし出すので、結局イチャイチャしてお別れするだけの回想でしか無く、深みがまったくありません。
 
 ここは何よりも大事な場面なので1話丸々使ってでも二人の出会いと、どのように互いに距離を縮めていき、人とELダイバーが心を通わせるに至ったかをじっくり描くべきだったのに、ここが呆気なさ過ぎるせいでこんなに後半まで引っ張るほどの内容だったかという感想しか浮かびませんでした。
 
 前作でリクたちがELダイバーであるサラを助けるために取ったある行動に、ヒロトが自責の念をより強めてしまう、ビルドダイバーズへの逆恨みから取ったある行為を絡ませることで前作終盤をリクとヒロト、それぞれのELダイバーへの前向きな想いと後ろ向きな想いが交差する多層的な場面に変えてしまうというアイデアは非常に良いと思います。しかし、結局そこに至るまでのヒロトとイヴの関係性の積み上げが浅く一過性の衝撃のみで、終わって見ると大して印象にも残りませんでした。
 
 前半で最大の謎だったアルスの設定もアニメの『エルゴプラクシー』に似ており、種が分かればそんな程度のものかという内容。
 

『機動戦艦ナデシコ』の丸パクリの『ガンダムAGE』や、『太陽の牙ダグラム』っぽい『鉄血のオルフェンズ』、過去作のパーツの寄せ集めのような『ガンダムUC(ユニコーン)』や『ガンダムNT(ナラティブ)』と最近のガンダムは過去の色々な作品に似すぎですね

 
 終盤の前作『ビルドダイバーズ』化はさらに著しく、もはや準主役であるはずのエルドラの民など完全無視してみんなでガンプラバトルで遊び出すため、途方に暮れこんなアホらしい話を最後まで見たことを全力で後悔させられました。
 

最後までNPCっぽいままのエルドラの民

 
※ここからややネタバレを含みます
 
 
 この作品の構造上、前半はどうしてもエルドラの民がオンラインゲームのNPCっぽく見える必要があるので多少記号的な描かれ方をされるのも仕方がないと思いますが、後半はそれをひっくり返し、しっかり血の通った存在として描き直して欲しかったのにそれも叶わず。
 
 せっかく後半部の1話目にあたる14話をエルドラ側の視点から始めるのに、なぜかしょうもないコミカルなやり取りに終始するのみ。この回でエルドラの文明について説明することでしっかり文化的な背景を踏まえてこの惑星や住人たちを見られるようにして欲しかったのにそれがなされずガッカリでした。
 
 ガンダムはSFなのだから、せめてどういう星系なのか、他の惑星はどうなのか、エルドラの自転速度や公転速度、大気の組成や重力くらいは説明してくれないと話になりません。
 
 それにエルドラの民は『鋼の錬金術師』で言ったらイシュヴァール人くらい酷い扱いを受けているのに、スカーのような復讐鬼に変わり果てるキャラクターが一人もいないのも違和感しかありませんでした。どれだけ仲間が虐殺されても基本はのほほんとしているため、まともな知性を持っているようには到底思えません。
 
 前作から引き続き『ビルドダイバーズ』シリーズの特徴である脚本がゴミという問題の最大の被害者はエルドラの民なのではないかと思うほど扱いが酷く、ただのオンラインゲームのNPCという印象から一歩も前に進みませんでした。
 

ただの空気でしかないガンプラ

 
 今作は敵がほぼ無人機に近いAIのようなもので動くタイプだらけで、正直バトルで面白いと感じた箇所はありませんでした。アクション作画は相変わらず頑張っているほうだと思いますが、いかんせん戦闘にまったくドラマ性がないため、なんら印象に残りません。
 
 せめてシチュエーションに毎回凝って、毎度大量の物量で押されるとか、特殊な機能を持った敵を登場させチームプレイで撃破する必要に迫られるなどの工夫もそれほど無く、戦闘だけ見たらビルドシリーズでワーストの退屈さです。
 
 それに、エルドラと繋がるオンラインゲームがガンプラをモチーフにしたGBNである必要が特に感じられず、オンライン上のゲームだったら何でもいいため、だったらガンプラの民ではなくネトゲの民だろうとも思います。
 

最後に

 
 途中まではアルスが古き民を信仰し、新しき民を認めないのは昔のガンダムを神格化する古いファンと、新しいファンの喩えだよなぁとか、色々考えながら見ていましたが、ラストがあまりにバカバカしくて全部吹っ飛んでしまいました。
 
 『ビルドダイバーズ』シリーズはラストをぐちゃぐちゃにして終わらせないといけないルールでもあるのかと思うほど、重要なはずのエルドラの民なんて完全に無視してオンラインゲーム内のイベント感覚で行われる最終決戦は茶番に等しく見られたものではありません。
 
 前半はまだ何とか謎で誤魔化せていたのに、後半はそれが通用しなくなり、ただただ脚本の欠陥だけが露呈し続け余韻は最悪です。
 
 今作でビルドシリーズに対する興味は完全に消え失せました。
 

ガンダムビルドシリーズ