評価:60/100
放送期間 | 2018年4月~9月 |
話数 | 全25話 |
アニメ制作会社 | サンライズ |
アニメの概要
この作品は『ガンダム ビルド』シリーズの一作です。しかし、ファイターズシリーズとは設定上の繋がりはありません。
過去のビルドシリーズと異なり、ガンプラバトルがオンラインゲーム上で行われるスタイルになったことが最大の特徴です。
『ガンダムビルドファイターズ トライ』の欠点である熱血頼りで勢いだけのバトルや、キャラの数を増やしすぎて一人一人の描き込みが浅いという問題がより悪化するなど、シリーズ構成や脚本は完全に崩壊しており、コメディとしては微塵も笑えず。
キャラクターは(アヤメ以外は)全員もれなく記号的で何の魅力もなく、VR-MMO化したガンプラバトルもオンラインゲームの設定自体がパッとしません。バトル時の作画にキレがない回も多く、ガンプラバトルの楽しさも過去最低でした。
互いに自分が正しいと思う信念同士がぶつかり合い望まない争いが生じてしまうというガンダム的なテーマ性や、オンラインゲーム上で世界中のガンプラ好きと出会い様々なガンプラとの向き合い方を学んでいくという設定自体は悪くないのに、あまりにも欠点だらけで一本のアニメ作品としては見続けるのが苦痛なほどの退屈さでした。
あらすじ
自分の手で作り上げたガンプラを世界中のプレイヤーと戦わせることが出来る大人気VR(バーチャル・リアリティ)オンラインゲーム、GBN(ガンプラバトル・ネクサスオンライン)。
主人公リクは、GBN内のチャンピンであるクジョウ・キョウヤの華麗なガンプラバトルに魅了されGBNの世界に足を踏み入れる。
GBNではフォース(小隊)というフレンド同士が集まり結成されるチームが多数存在し、互いにフォースランキング上位を目指してしのぎを削っていた。
数々の個性的なフォースに刺激を受けたリクは、GBNで出会ったフレンドたちと共にオリジナルフォース、ビルドダイバーズを結成し、ライバルたちとのフォース戦に挑んでいく。
可能性が詰まったオンラインゲームという設定を生かしきれない詰めの甘い脚本
本作で最も過去シリーズと異なるのが、自分が作ったガンプラをプラフスキー粒子によって実際に動かし対面で戦う形式だったガンプラバトルから、ガンプラをスキャンし、そのデータだけ使ってオンラインゲーム上でバーチャルで戦うという形式に変化したことです(厳密に言うと『模型戦士ガンプラビルダーズ ビギニングG』の設定に戻ったとも言えます)。
それに伴い、バトルで受けたダメージによってガンプラが実際に壊れるという今までは当たり前だったペナルティも無くなりました。
ガンプラが壊れないという仕様自体は、トライでも機体へのダメージレベルを下げるというモードがあったのでそこまで気にはなりません。問題は壊れたガンプラを修理するという大切な描写がなくなったせいで、主人公たちがガンプラに触れている時間が極端に削られたこと。
このため、ガンプラを作る楽しさを描くアニメなのに、もはやオンラインゲームが主役で、ガンプラ制作はオマケにしか見えません。これがGBNというゲームが実際に作られ、それとのクロスメディア展開という流れだったら何の違和感もありませんでした。
しかも、GBNというオンラインゲームは、規模こそ地球から宇宙までシームレスに移動できるという途方もない広大さなのに、『ソードアートオンライン』に出てくるVR-MMOや、『オーバーロード』のユグドラシルなどに比べると、設定の作り込みが二流、三流の出来損ないで、ほとんど大人気オンラインゲームとしての説得力がありません。
ガンプラバトル時に周りのガンプラを所有していないプレイヤーに流れ弾が当たらないようにフィールドに対してどのような処理が行われるのか(サテライトキャノンなど強力な武器を使う場合とか)、ゲーム内で普通にアバターが飲食しているのはどういうことなのかとか、上位のフォースにだけ与えられる特別なフォースネスト(各フォース専用のルーム)はランキングが下がると没収されるのかとか(もしくはル・シャノアールのネストはGBNの土地が有限なのにずっとあの場所に放置されたままでいいのか)など、見る側が疑問に思うようなルール設定に対する説明がなく、なんとなくの雰囲気オンラインゲームにしか見えませんでした。
その結果、設定がペラペラで何の魅力もないキャラクターたちが、見るからに突貫で考えたような底の浅いオンラインゲームを楽しげにプレイする様を延々見せられるだけで、退屈極まりなく何度も睡魔に襲われました。
トライも熱血頼みなワンパターン展開が多くそこまで完成度が高いとは思いませんでしたが、見ていて退屈なんて瞬間はほぼ無かったので、トライとのあまりにも激しすぎる落差に軽くショックを受けます。
ガンプラバトルをMMO化してオンラインゲーム上で大人数が同時に戦うというアイデアや、これまでのひたすら強さや勝利を求めるスポ根路線をやめて、世界中のガンプラ好きと出会いフレンド登録し、友達の輪を広げていくという、ガンプラをコミュニケーションの手段にする今風のコンセプトにしたのは別段悪いとは思いません。
ただ、一つ一つの設定の作り込みが浅く、ガンプラを触るシーンが極端に減ったためプラモデルを自分で作るという楽しさは全く伝わってこず、黒田洋介さんがメインライターから外れたことでシリーズ構成と脚本が壊滅的なまでにぶっ壊れと、まともに見られる出来ではありませんでした。
唯一輝くアヤメという名の救世主
主人公含め、登場キャラクターがほぼ全員記号的で味気ない中、しっかりしたドラマが用意され存在感を発揮するのが罪の意識を抱え、孤独にGBNをプレイし続けるアヤメでした。正直アヤメがいなかったらこの作品に対しては、もっと評価が下がっていたと思います。
やっていることは『オーバーロード』の主人公と似ており、かつてソロプレイヤーだったアヤメを温かくフォースに招いてくれたフレンドたちとの楽しかった過去の記憶に縛られ、みんなゲームを引退しているのにいつまでもGBNにしがみつき、全員で楽しくゲームをしていたあの頃に戻りたいという歪んだ願望を叶えるため悪事にも手を染め出しと、一人だけキャラクターとして血が通っており、アヤメが主人公でもいいんじゃないのかと思うほどです。
仲が良かったフォースのメンバーが、いつしか勝つことにこだわるか、楽しくゲームをするかで意見が割れ険悪なムードが流れ出し、フォースが人間関係でぐちゃぐちゃに崩壊していく過程をやたら生々しく描くため、GBNのドロドロした側面が垣間見え、このアヤメのエピソードだけ見応えがありました。
本作を見ていたら、このオンラインゲームを仲の良いフレンドとプレイするという楽しいモラトリアムがいつまでも続いて欲しいと思う願望は、『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』の現代版で、ループして終わらない楽しい学園祭の準備が、いつの間にか永遠にログアウトできないオンラインゲームになったのかなと考えさせられます。
最後に
お行儀が良いだけで魅力が皆無な主人公やヒロインと、またもやGガンダム風の熱血頼りなだけの知性の欠片もないバトルは滑りまくりで退屈そのもの。作画レベルは低く、場面によっては作画崩壊ギリギリの箇所が多数あり、映像演出全般もセンスがなく見るべきところはほぼないほどボロボロで、完成度はビルドシリーズでもぶっちぎりのワースト。
シリーズものとしては一番虚しい、最初の一作目が当たり前のように達成していた優れた部分が徐々に失われていき、もう全盛期の勢いを取り戻しそうな気配はなく、衰弱の果てに静かに息を引き取るのをただ見守ることしか出来ないような、そんな悲しい気分にさせられる一作でした。
ガンダムビルドシリーズ
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