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一国を支配する巨大麻薬カルテルに挑む 『ゴーストリコン ワイルドランズ』 〈レビュー・感想〉

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トレーラー

評価:80/100
作品情報
ジャンル オープンワールドステルスTPS
発売日(日本国内) 2017年3月9日
開発(デベロッパー) Ubisoft Paris
開発国 フランス
ゲームエンジン AnvilNext 2.0

ゲームの概要

 
 このゲームは、南米のボリビアを実質支配下に置く巨大麻薬カルテルサンタブランカ”を壊滅させるべく、アメリカが送り込んだ特殊部隊ゴーストの隊員となるオープンワールドステルスTPSです。
 
 ボリビアを手中に収める麻薬カルテルの存在感や、カルテルの個性豊かな幹部メンバーの描き方など、現代社会の風刺を舞台設定に込めるUBIらしいセンスが光り、UBIのオープンワールドゲームの中でも完成度が高い一作です。
 
 しかし、結局いつものUBIらしく、設定は良くても肝心のストーリー性が極端に薄かったり、ステルスゲームとしても今一つパッとしなかったりと、全体的に粗も目立ち諸手を挙げて傑作とは言えない出来でした。
 

あらすじ

 
 ボリビア政府と不可侵の密約を交わし、警察・判事・政治家を買収し国内に一大麻薬帝国を築くメキシコ由来の麻薬カルテル“サンタ・ブランカ”
 
 そんなボリビアで在アメリカ大使館に対する爆弾テロと、コカイン取引の潜入捜査をしていたアメリカのDEA(麻薬取締局)捜査官が拷問の末殺害される事件が続け様に発生。この件を受けアメリカはサンタ・ブランカをただの南米のいち麻薬カルテルから麻薬テロリストへと脅威度を改め、特殊部隊ゴーストをボリビア国内に送り込むことを決定。
 
 強大な組織であるサンタ・ブランカを内部から壊滅させ、カルテルを率いるカリスマ的リーダーエル・スエーニョを捕らえることを目的としたキングスレイヤー作戦が実行される。
 

ゲームそのものが巨大麻薬カルテルという圧巻のセンス

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 本作の魅力はなんといってもオープンワールドの舞台設定を麻薬カルテルの組織構造と完璧に連動させてしまうというセンス良すぎなアイデアです。
 
 ゲームのアプローチとしては『アサシンクリード シンジケート』と似ており、大まかな敵組織の状況や背景となる舞台設定だけが用意され、ストーリーの推進力はほぼありません。
 
 広大なボリビアのマップにカルテルの幹部が支配するエリアが20近くも用意され(幹部が設定されていない地域もあります)、プレイヤーがどのエリアをどんな順番で攻めるのか自由に選択できます。
 
 ゲームとしてやることは単純で、片っ端からエリアごとのメインミッションをこなして幹部を排除し、カルテルの勢力を削いでいくというただそれだけです。
 
 各地域を支配する幹部やさらにその上にいるボスなどは全員4つの部隊のどれかに属しており、
 
プロパガンダ部隊・・・・・・カルテルを美化するブログを書くブロガーや、カルテルの素晴らしさを語るラジオDJ、カルテルを賛美する歌を歌うナルコ・コリード歌手、カルテルのために戦えば魂が救済されると説く司祭など、カルテルの犯罪組織としての側面を隠蔽し、世間的なイメージ向上を図る集団
 
密輸部隊・・・・・・陸・海・空のブラジル、アメリカ、ヨーロッパなどへの麻薬の輸送ルートを取り仕切る密輸や資金洗浄のプロ集団
 
護衛部隊・・・・・・新兵を訓練する元アメリカ陸軍レンジャーの教官・元医者の拷問大好き夫婦、カルテルが殺害した死体を水酸化ナトリウムでドロドロに溶かして消し去る死体処理担当など、兵士の育成、殺し、拷問、死体処理など、カルテルのウェットワーク全般を受け持つ集団
 
生産部隊・・・・・・大量のコカインを作るための大規模なコカ畑を運営する地元の農家や、高品質のコカインを作るためのレシピを考える天才化学者など、カルテルが販売する高品質な麻薬製品の原料を作ったり、最新設備で麻薬製品を大量生産したりする集団
 
 この4つです。
 
 これらの部隊のどれかを好きな順で潰していき、2つの部門まで潰し終わるとリーダーであるエル・スエーニョのミッションに挑めるようになるという作りです。
 
 エンディングは二つあり、全ての部門を潰してミッション達成率を100%にすると二つ目のエンディングがオープンします。
 
 ストーリーはあってないようなもので極端に薄めですが、非常にバラエティに富んだ特異な経歴や役職の幹部メンバーが大変魅力的で、組織としてキャラがメチャクチャ立っています
 
 この麻薬カルテルを構成する4つの部隊ゲーム性を連動させるというアイデアはセンス良すぎで痺れました。
 
 同じUBIの『アサシンクリード オリジンズ』も結社(テンプル騎士団の前身)がエジプト中で暗躍しており、これの幹部メンバーを暗殺していくという似たようなアプローチをしていますが、これは組織とゲーム性を連動させておらず失敗しています。
 
 それに比べ『ゴーストリコン ワイルドランズ』は4つの部隊にカルテルの役割を担わせてしまうことで全体像が整理され、組織の中でどのような役割を持つ部隊と戦っているのか明解となり、センスの良さが段違いです。
 
 このように、ゲーム全体の構造が麻薬カルテルという組織の巨大さを表現することに徹しているため、オープンワールドの広さがそのままサンタブランカという組織の支配地域の広さに繋がり無駄がありません。
 

UBIのオープンワールドゲームが全部このゲーム並みのセンスなら最高です

メインミッション軽量化の功罪

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 本作の大きな特徴は、Co-opであることが反映されてかメインミッションの一つ一つが非常に細かく区切られていることです。
 
 長くても10分程度短いとほんの2~3分で一つのメインミッションが終わり、メインミッションなのにも関わらずサブミッションをこなしている様な感覚でした。
 
 この小刻みなメインミッションは長所・短所がはっきり別れ、悪い部分はボリュームが全てサブミッション程度なため、各幹部メンバーの掘り下げが浅く感じることです。そして良い部分はテンポよくサクサク進むため、リズミカルでゲームプレイが停滞しないことです。
 
 個人的にオープンワールドのゲームは、メインミッションで長時間拘束されるのが億劫に感じられ、そこらに散らばっているアイテムを探して回ったりサブミッションをこなしたりと束縛が無く楽しいフリープレイに逃避しがちです。
 
 しかし、このようなほとんど数分で終わるメインミッションだらけだとまったくと言っていいほど拘束される不自由さを覚えず、次のミッション開始エリアに向かうことが苦になることもなく新鮮でした。
 
 このフリープレイをする際の肩の力が抜けた状態のままメインミッションに挑めるような作りは、長年オープンワールドゲームをやる際に感じていた次のメインミッション開始場所に向かう際の重い足取りを幾分軽くしてくれます。
 
 それに、一応ステルスゲームなのにも関わらずステルスを強制してくる様なミッションは稀で、あまり窮屈さを感じませんでした。
 
 ほとんどのミッションはドローンで敵情視察してからターゲットを順にサイレントキルしながら進もうが、いきなり撃ち合いを始めてゴリ押ししようが自由なため、メインミッションの強制性や束縛感をうまく緩和してくれます。
 
 オープンワールドゲームにおけるメインミッションとはそれ自体が軽い登山の様なものだと思います。標高が高ければ高いほど達成感も強まる反面負担も増し、強い負担を感じ出すと次第に山に登ることそのものへの飽きや躊躇が生まれ、メインミッション開始場所に行くことそのものが苦痛に感じられます
 
 それが本作では、ほぼ全てが標高の低い山だけに限定されているので、達成感は全体的に控え目ですが、負担が最低限しかなく、メインミッション開始場所に行く際にストレスがありません。
 
 このオープンワールドのメインミッションを軽量化してしまうという試みは、毎回オープンワールドゲームをやる際に生じる苦痛が無く、個人的にはアリだなと感じました。
 

ロードが長い&再スタート場所が異常なほど遠いというストレス

 
 本作の不満は多数ありますが、特に気になったのはミッション失敗から再スタートまでの手間の掛かり具合です。
 
 一応ステルスゲームなので普通のシューターに比べたら体力が低くて死にやすく、かつ完全ステルスで敵に見つかった瞬間ゲームオーバーになるものや、ターゲットに逃亡されたらゲームオーバー、護衛対象が殺害されたらゲームオーバーになるなど、初回時は高確率で失敗する様なミッションもそこそこ多くあります
 
 ですが、失敗してチェックポイントから再開となる地点が、なんとミッション開始場所から数百メートル(遠いと800~900メートル)離れた場所からということがほとんどでした。
 
 オマケにオープンワールドなので、そもそもロード自体が長く毎回失敗したミッションを再開するまで長いロードと十数秒程度の移動を余儀なくされ続け、ストレス量が半端ではありません。
 
基本はステルスなのでゲームオーバーになりやすい→ゲームオーバー時にチェックポイントから再開できるまでのロードが長い→ロードが終わって再開するとミッション開始エリアから数百メートル離れた場所から再スタート→ミッション開始エリアまでひたすらダッシュ移動→(最初に戻る)
 
 ミッション内容によっては、このサイクルを一つのミッション中何度も繰り返すため、出来れば再スタート地点だけでもミッション開始エリアにもう少し寄せて欲しかったです。
 

ただロードを待つよりも何度も同じ場所をダッシュ移動させられる作業プレイのほうが精神的に辛いです

最後に

 
 カルテルの4つの部門を全て壊滅させてミッション達成率を100%にし、2つ目のエンディングを見るまで約40時間ほど。
 
 メインミッションがあっさりなため、カロリーが高いゲーム体験は皆無です。
 
 しかし、国家を支配するほど巨大化した麻薬カルテルと戦うという、相変わらずUBIの舞台設定のセンスは最高で、UBIのオープンワールドゲームの中でも上位の魅力を備えるゲームでした。
 
 
 
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