トレーラー
評価:90/100
放送期間 | 2019年4月~5月 |
話数 | 全6話 |
国 | アメリカ |
ネットワーク | HBO |
ドラマの概要
この作品は、ジョージ・R・R・マーティンのファンタジー小説『氷と炎の歌』を原作とするドラマのシーズン8(最終シーズン)です。
前半部分はゲームオブスローンズの名に恥じない、壮絶な戦闘シーンを大胆な映像表現で描いて見せる挑戦的な姿勢でその度胸に圧倒されました。
しかし、終盤はあまりにも展開を急ぎすぎたせいでこれまでシリーズが積み上げてきた大切なものを崩壊させるような終わり方をする残念な幕引きで後味はイマイチです。
この一作でシリーズが達成してきた偉業に泥を塗るような出来ではないものの、到底期待していた壮大なラストにはほど遠い興ざめなオチで、これを見るとシリーズへの熱がやや冷めてしまいます。
あらすじ
ジョン・スノウは、夜の王が率いる死者の軍団との決戦に備え、援軍としてデナーリス・ターガリエンとその配下の軍勢を引き連れ北部に帰還する。
ジョンは三つ目の鴉となったブラン・スタークと再会し、ついに己の出生の秘密を知るも、そのせいで愛し合うデナーリスとの関係に亀裂が生じてしまう。
北部では勝ち目の薄い死者との戦いが迫る中、ウェスタロスの危機など意に介さないサーセイ・ラニスターは、鉄の玉座を巡るデナーリス軍との戦いに備え軍備の増強に邁進する。
決戦シーンをホラーとして見せる鳥肌ものの三話
今シーズンは前半は大満足で後半は失望という前半・後半で評価がぱっくり別れる内容で、おおよそ望んでいたラストとはほど遠いものでした。
まず前半部分。こちらは文句なしの完成度で、自分的にはこれまでのシリーズの中で、大軍同士がぶつかりあう合戦シーンの中では最も手に汗握り興奮しました。
普通、大軍同士がぶつかる合戦シーンは『ロード・オブ・ザ・リング』や『アベンジャーズ』のように、ロングショットを多用して両軍が向かい合うようなスペクタクルを売りにしそうなものなのに、三話の場合は完全なホラーとして極限まで視野を絞って見せるため、敵の軍勢の規模が図れず恐ろしさで身が竦 むほどでした。
一話、二話と決戦が差し迫っているのにも関わらず敵の姿を一切映さないまま話が進むという気味の悪い雰囲気の中で三話に突入し、その演出の意図が明らかになった瞬間「これがやりたかったのか!?」と、予想の遙か上を行く大胆さとセンスの良さに鳥肌が立ちました。
広い空間に敵を大量に並べて見せるというありきたりな表現を避けつつ、その場面で生じさせなければならないこの世の終わりのような絶望をこの上なく完璧に表現して見せる三話は圧巻です。
普通、思いついてもこのぶっ飛んだアイデアよりも無難で分かりやすいスペクタクルを選びそうなものなのに、この手法を選択した作り手の度胸には感服します。
間違いなく三話はここ数年見たあらゆるホラーシーンの中でも最高の恐怖でした。フィクションであることなど完全に忘れ、絶対に何が何でもこの場所にいたくないと思うほど没入させられた恐怖シーンは本当に久しぶりです。
ただ、初見時のインパクトを完全重視するホラー表現なため繰り返しの視聴にはやや向かないのが難点だと思います。
終盤まで見るとそちらは王道スペクタクル&ドキュメンタリー風の見せ場なためそれと差別化するためにこれほど極端なまでにホラーに突っ走ったのか(もしくは単に画面を暗くして予算を抑えるためか)という見方もできますが、それでもこの三話のホラー表現は今シーズンでも最も印象に残りました。
突如主要人物がアナキン化して作品がぶっ壊れ出す終盤
今シーズンは、前半で興奮が最高潮に達したかと思うと、後半のあまりの性急な展開に冷や水を浴びせられます。
複数原因があるものの、まずシーズン1からずっと存在する、死者たちが南下してくるという問題と、鉄の玉座を争う話が実はあまり関係ないということ。
この平行して語られる、北部にある壁の向こうの問題と鉄の玉座を巡る王位争奪戦の問題は一つ前のシーズン7で一度合流したのに、今シーズンでまた分離してしまいそれぞれ別件として処理されるため、山場が二回連続して続くような歪な展開となり、それぞれの良さを殺し合っており、これは完全な構成ミスだと思います。
このせいで「えっと、こっちの件が片付いたので次はこっちの件に移ります」と、やっつけのような段取り臭さが生じており、このシーズンを死者の軍勢との戦いに全て使い、次のシーズンで鉄の玉座の話をしたらまだ尺的に余裕がありました。
次に、登場人物を大事に大事に描いてきたことの弊害で、ある人物の豹変がまるで納得できないこと。
視聴前に海外で最終シーズンの作り直しを求める署名運動が起こったという話も、この酷いラストを見たら納得しました。
なぜゲームオブスローンズを見ていたと思ったら突然スターウォーズのプリクエルになって話がぶっ壊れて終わるのかという虚しい余韻が残るだけでした。
過去シーズンでも衝撃展開は幾度も描かれましたが、成功しているケースは全てかなり手前から周到な用意をし、視聴者の感情を完璧にコントロールしてからその場面に突入するものだけで、この最終シーズンはそれらに比べ完全に準備不足だと思います。
最後に
『指輪物語』の世界最高に品の良い余韻とか、そこまでのものを求めていたわけではありませんが、さすがにこれは酷すぎます。
こんなに素晴らしいドラマが、有終の美を飾れず、ダークサイドに墜ちて暴れるとかバカみたいなオチで悔しい限りです。
ゲーム・オブ・スローンズ 各シーズン
GOTシリーズ
|
話数
|
---|---|
シーズン1 | 10 |
シーズン2 | 10 |
シーズン3 | 10 |
シーズン4 | 10 |
シーズン5 | 10 |
シーズン6 | 10 |
シーズン7 | 7 |
リンク
リンク