プレイ動画
評価:90/100
ジャンル
|
RPG
|
発売日
|
1997年10月10日
|
開発(デベロッパー)
|
Interplay Productions
|
開発国
|
アメリカ
|
メモ
・日本語化し、ハイレゾパッチで解像度800×600へ変更(これ以上解像度を上げると自分の視力では文字が小くて読み辛くなるため)
ゲームの概要
このゲームは、『フォールアウト』シリーズの一作目です。
ベセスダの開発となり『ジ・エルダースクロールズⅣ:オブリビオン(以下オブリビオン)』のゲームエンジンを採用しオープンワールド化した3以降とは違い、固定の見下ろし型視点のシンプルなRPGです。
AP(アクションポイント)をやりくりするターン制バトルなど一部古臭い部分もあるものの、現代でも通じる洗練されたゲームデザインや、ゲーム冒頭からどこに行って何をしてもいいという自由度とリプレイ性を重視したゲーム体験は現代のゲームと比べてもなんら遜色のない高い完成度で、『フォールアウト』シリーズの魅力がこれでもかと詰まっています。
ベセスダという混ぜ物が混入していない高純度のフォールアウト

『フォールアウト』シリーズに初めて触れたのはPS3版の3でした。そのため、3がシリーズの基準であり、それを疑うこともありませんでした。
しかし、今作をプレイすると、フォールアウトシリーズの特徴だと勘違いしていた要素(オープンワールドの広大な世界はもちろん、膨大なプレイ時間を伴うボリューム満点のサブクエスト、丁寧なナビゲーションシステム、など)が実はゲームエンジン初め3の元となった『オビリビオン』(ベセスダ)側からもたらされたものだと分かり、シリーズへの認識が大幅に修正されます。
『フォールアウト』シリーズから『オブリビオン』要素をごっそり抜くと、そこには膨大なボリュームによってセーブデータ(旅の思い出やキャラビルド)を蓄積していくタイプのRPGではなく、どちらかというとボリュームよりもリプレイ性に重点を置き、冒険よりもローグライクゲームの様なプレイヤーの成長やシステムへの適応こそを柱とする硬派なゲーム性が出現します。
ゲーム開始直後にいきなり物語的にもシステム的にもボルト(シリーズお馴染みの地下シェルター)の外の世界に放り出され途方に暮れさせ、そこから外の世界の現状やシステムを把握していくプロセスは徹頭徹尾がプレイヤーの手探り任せ。当初の目的となる“ウォーターチップを見つける”という期限付きのメインミッション以外は、序盤からどこに行って何をやっても自由。
そのため、普通なら次に何をすればいいか分からず混乱しそうなものですが、ワールドマップがかなり狭めなため、あちこちの村や街に聞き込みをして歩き回るのにナビゲーションが特に必要なく、終始自分のペースでゲームに馴染んでいけるのが特徴です。
序盤にどちらの方向に進むべきか軽く示唆され、その通りの方向に進むと村があり、さらにその村で聞き込みをすると次に進むべき方向を教えて貰えと、システムレベルでは親切なナビゲーションシステムなどなくとも、小まめにNPCに話しかけて情報を収集しながらプレイすれば迷わず目的地まで辿り付けるように配慮されています。
露骨にプレイヤーを甘やかさず、しかし不親切に彷徨わせるという突き放し方も避け、これ見よがしにならない程度の親切さがそっと寄り添う作りは好感触でした。
このゲームプレイに付いて回る徹底した“プレイヤーの手探り感”というものが3以降のシリーズではほぼ消失してしまっている重要な要素です。
オープンワールドの冒険しがいのある広大なマップと引き換えに、手探りで進める喜びを損なわせるナビゲーションシステムも必須となり、そのせいで常にプレイヤーが足を使って聞き込みをし情報を仕入れていくという大事なプロセスを失ってしまいました。
本作はサブクエスト以外はフラグ管理というものを徹底して排除し序盤からいきなりラストダンジョン的な場所に直行できたり、ゲーム開始直後に最強クラスの装備を入手できたりとプレイに制約がなく自由で伸びやかです。
ストーリーも過度な説明は排され、シリーズお馴染みの敵の死体から入手できるアイテムが物語性を帯びているなど、最小限の演出だけでゲームプレイを一切停滞させないまま世界観に深みを持たせており、シリーズ一作目にして怪物級のバランス感覚を誇っています。
中でも圧巻だったのは、あるカルト教団施設の地下にある生理的嫌悪感を催す狂気的な空間です。教団の団員が着ているローブと同じものを入手し装備すると敵に気付かれずに潜入でき、この状態で延々と狂った空間を敵にバレないか怯えながら進むというシチュエーションは上質なホラーゲームの様でした。
この極上のゲーム体験をプレイヤーに丸投げする(変装してビクビク怯えながら隠れ進んでもいいし、別段敵を全滅させながら進んでもいい)ため、強制的にやらされているという押しつけがましさがありません。これを優秀なゲームエンジンの馬力抜きで、見下ろし型の2Dドット絵と、ただただアイデアと工夫だけで表現し切っており、作り手のセンスに感嘆させられるばかりでした。
シリーズ一作目からして芸術的と言いたくなるほど美しいゲーム思想が貫かれており、なるほど今作を下敷きにしている『フォールアウト』シリーズが傑作な理由がよく分かりました。
強制性を徹底的に排除し、全てをプレイヤーの判断に一任してしまう放任主義なバランスは3以降では明確なドラマ性や広大なオープンワールドのマップ、それを補助するためのナビゲーションシステム、膨大なボリュームなどに取って代わられ、残念ながら薄まってしまっています。
老朽化して魅力を失ったバトル

本作の根幹であるゲーム性は現代でも難なく通じるほど突出して完成度が高く、不満は特にありません。しかし、それ以外はどうしても古臭く、特に戦闘周りは不便な部分が多かったり、自由度の高さを反映してかバランスが大味だったりでイマイチでした。
移動はPCのゲームでは一般的なマウスでクリックした場所目掛けて自キャラが移動するタイプです。そして、敵がこちら側に気付いたり、こちら側から相手に先制攻撃しようとするとターン制バトルに移行する作りとなっています。
通常移動状態からシームレスにターン制バトルに移行するのはいいとしても、バトル自体は凡庸に毛が生えた程度でした。3以降のV.A.T.S.システムの原型ともなる、毎ターン回復するAP(アクションポイント)をやりくりするという、似たようなゲームを挙げると『フロントミッション』シリーズの2以降のようなバトルは、手持ち武器の射程は数値だけで視覚的に範囲が表示されなかったり、移動のやり直しが効かないのに銃火器の射線が表示されなかったり、クリティカルを一発喰らえば体力の数倍のダメージで即死したり、そもそも序盤から強力な装備を入手してしまえばザコ敵戦はほぼ楽勝で作業化しやすかったり、お世辞にもバランスが良いとは言えません。
それにシミュレーションRPGでは必須と言ってもいいZOC がないため敵の脇をすり抜け放題で、ある程度APに余裕があれば、ひたすら遮蔽物や壁の角に張り付いて射線を避け、飛び出す・隠れるを繰り返せば無傷で敵を倒せてしまうなど、雑な部分が多く見受けられます。
戦闘中もセーブ可能なため『スーパーロボット大戦』の様に毎ターンひたすらセーブ&ロードを繰り返して都合のいい結果が出るまで粘ることも出来てしまいます。
コチラに気付いていない敵に長射程の武器を用いて先制攻撃を仕掛けられるなど、凡庸なシミュレーションRPGなどに比べたら最低限戦略を練る楽しみはあるものの、あまり好みではありませんでした。
この部分は、3以降にリアルタイムアクション化+V.A.T.S.システムを搭載してくれて心底良かったと思います。
最後に
ゲームとしては若干古くさいものの、その自由度とリプレイ性を重視するゲームデザインの美しさは現代のゲームに一切引けを取らず、最新の『フォールアウト』シリーズと比べても何ら遜色のない大傑作です。