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Fairy gone(フェアリー ゴーン)(前半)〈レビュー・感想〉 準備不足の迷走アニメ

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PV

 
評価:65/100
 
作品情報
放送期間 前半:2019年4月~2019年6月
話数 前半:全12話
アニメ制作会社 P.A.WORKS

短評

 
 中途半端に終戦を迎えてしまったことで戦時中のうやむやが戦後徐々に再燃し始める話や、新しい時代に馴染めず未だ過去の戦争に囚われて生きる者たちの葛藤を描くという題材はそこそこ魅力的。
 
 しかし、絶望的なほどボロボロな脚本とシリーズ構成のせいで、ただでさえ複雑な設定が余計把握しづらくなっており、一度通して見ただけだと何が何だか理解できない、視聴者に優しくない作品になっている。
 
 脚本はガタガタ、キャラクターも薄っぺらくて魅力が乏しく、肝心の政治劇も出来の悪い脚本に引っ張られグダグダとあまり褒める要素のない残念な完成度。
 

あらすじ ※アニメを見る前にこれを読んでも意味不明です

 
 統歴481年、サイダルが隣国ティムーンへ攻め込むことで勃発した統一戦争はその後14年間続いた。統一戦争中、各国は妖精を兵器に転用した妖精兵を戦場に投入し、イースタルド全土に戦乱の火の粉を撒き散らす。
 
 統一戦争の覇者であるサイダルの王ゴルバーン・ヘルワイズはゼスキア皇帝を擁し自らは統一ゼスキアの首相となる。統一戦争でゴルバーンと共に重要な働きをした5人は五公と呼ばれ、皇帝よりそれぞれ領地を賜った。
 
 終戦から時は流れ統歴505年。五公の内の3人は皇帝に対する謀反の罪でこの世を去り、残る五公はハイブランツ公シュヴァルツ・ディーゼと、カルオー公レイ・ドーンの2人だけとなる。
 
 統一戦争中に現カルオー公レイ・ドーンの手で故郷を焼かれたマーリヤは、その際に離れ離れになった同郷の友人を捜索していた。やっと友人と再会を果たすマーリヤだったが、そのゴタゴタの際に違法とされる妖精を体に宿してしまい、統一ゼスキアの違法妖精取締機関ドロテアに入隊を余儀なくされる。
 
 マーリヤの同郷の友人ヴェロニカは自分たちの故郷を滅ぼした憎き仇であるレイ・ドーンの命を狙う復讐鬼と化しており、マーリヤは凶行を止めようとドロテアの一員として再びヴェロニカを追う。
 
 そんなマーリヤとヴェロニカをよそに、五公の生き残りの2人が不穏な動きを見せ、終戦によってもたらされた仮初かりそめの平和が揺らぎ始める。
 

書きかけのように未整理な脚本

 
 本作は過去に起こった大きな戦争で心に傷を負った者たちが、互いを支え合いながら、完全には決着が付いていない過去の戦争が残した課題と向き合っていくという内容です。
 
 祖国を守るためと称して戦争の道具である妖精兵に改造されるも、戦後は危険な存在としてまっとうな生き方が許されない者。故郷を戦火に焼かれ大切な人を多く失ったのに、加害者は英雄と祭り上げられるのが許せず復讐鬼と化す者など、戦争に人生を狂わされた者たちが偽りの平和に馴染めず、戦争体験を引きずり続けながら生きる様を描くという内容はかなり惹かれるものがありました。
 
 しかし、本作はあまりにも脚本とシリーズ構成がずさん過ぎて、ただ一回通して見ただけだと設定もストーリーも何も頭に入ってこないほどとっ散らかっています。
 
 パッと見、妖精兵たちが妖精を使って戦うジョジョのスタンド戦のようなものを売りにするアニメなのかと思いきや、どちらかというとスケールの大きい政治劇が主役で主人公たちはそれに翻弄されていくという話です。
 
 似た作品だと、一年戦争で残されたスペースノイドとアースノイドのより深刻化した確執という課題を突きつけられる『機動戦士Ζガンダム』や、イシュヴァール殲滅戦で兵器として戦わされ心に傷を負った国家錬金術師たちのみを抜き出して描く『鋼の錬金術師』のような地味な内容です。
 
 このような複雑な情勢で各陣営の思惑が交錯する重々しい政治劇は大好きなので別段方向性として文句はないものの、やりたいことの焦点をうまく絞れていません。
 
 作風としては90年代や00年代サンライズのハードボイルドを狙った硬派寄りのアニメのような感触で、古くさく見え特に目新しさはありませんでした。
 
 アニメ製作会社がP.A.WORKSで、そこまでアクション作画が得意な印象もないためアクション部分がイマイチなのは仕方がないにしても、問題はどこからどう見ても出来損ないの脚本とシリーズ構成です。
 
 最初から最後まで主人公たちの言動がツッコミどころだらけで、ほとんど作りかけの状態のまま映像にしてしまったような違和感すら覚えます。
 
 6話でドロテアの任務としてマーリヤとクラーラがある人物を追跡している最中、対象が列車に乗りこむと見失ってしまうというくだりも、てっきり相手は巧妙に変装して乗客に紛れているのかと思いきや、単に帽子を被り服をちょこっと変え普通に座席に座っているだけ。これを見失うのは二人が乗客の顔をしっかり確認しない職務怠慢にしか見えません。
 
 しかも、対象者を見失ったらいきなり捜索を諦め、ターゲットの近くで身の上話をし始めるなど、ドロテアって無能なバカの集まりなのかと思うほどプロフェッショナルさの欠片もなく、見ていて白けます(しかもターゲットもその後あっさり捕らえるのでこの分のやり取りがほぼ全て無駄)。
 
 犯罪組織の殺し屋風の人間に襲撃されるというシーンも、襲撃者がどこの犯罪組織に所属しなんという名前なのか画面にテロップで表示されるという、マヌケこの上ない見せ方でいちじるしく場面の緊迫感を削ぎ、ダサすぎて見るに堪えません。
 
 統一戦争時代のそれぞれのキャラの過去の出来事が、回を重ねるごとに徐々に明らかになっていくという回想シーンのはさみ方も、時系列はメチャクチャで、別にその回のエピソードとキレイに話がリンクする作りでもないと、何をしたいのか意図がよく分かりません。
 
 このような回想シーンを頻繁に挟んでキャラに厚みを出しつつ、その回のエピソードと過去のエピソードをリンクさせ話にも深みを持たせるという手法は海外ドラマが多用するので、そのテクニックを見慣れているとぎこちなさしか感じません。
 
 さすがに『さよならの朝に約束の花をかざろう』(これも見た目はキレイでも中身はトンデモ作品)を作ったP.A.WORKSだけに、背景はじめ美術周りは美しく、作画も平均レベルには仕上げています。
 
 なのに、まともに作ったら絶対こうはならないだろうという歪な出来になっており、これは作り手の実力不足というよりも、何か制作上のトラブルのほうを疑わせます(単に実力不足ならもっと自然と酷くなるはず)。
 

最後に

 
 まだ前半なのでこれから巻き返しも可能なものの、12話かけてこの程度の下準備しか出来ないとなると後半はやや厳しいものがあります。
 
 
第1話『灰かぶりの少女』

第1話『灰かぶりの少女』

 

 

Fairy gone フェアリーゴーンBlu-ray Vol.1

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