著者 | 山崎俊輔 |
出版日 | 2021年7月16日 |
難易度 | 普通 |
オススメ度 | ☆ |
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本の概要
この本は、FP(ファイナンシャル・プランナー)がFIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指すなら絶対に押さえておくべき注意点を解説します。
未来のインフレによる物価上昇に備えて計画的に資産形成をするべきというアドバイスや、早期リタイアをすると退職金や年金が減額されるためリタイアを急ぐほど老後の蓄えが心もとなくなるなど、どれも地味ながら重要な指摘が多く、単純にFIRE抜きのライフプランニングの本としても読めます。
読んでいてワクワクする成分はほぼなく、FIREが現実にはどれほど過酷で達成困難なものなのか突きつけられるため、FIREに対して一端冷静になれるという効能もあります。
ただ、FIREに対しては無理だから諦めろではなく、これほど困難だからしっかり備えろというスタンスで、FIREを実際に目指す場合もFIREが本当に達成可能なのか懐疑的な状態で読んでも両方学びが多く詰まっています。
地味ながら役立つ人生設計のコツ
この本が非常に有益な点は、平均的なサラリーマンの人生をお手本にしつつ、FIREを目指す場合どの工程をショートカットするのか、そしてショートカットした場合は、後々どのように収入に影響が出るのかを比較して解説する点です。
FIRE関連の本でありがちなのは、いきなりFIREの目指し方を解説してしまうことで、その点この本はまず普通のサラリーマンの出世や昇級、各種税金や健康保険、退職金、厚生年金の話をしつつ、FIREを目指す場合どの部分が犠牲になるのか、その結果どれほどの損失分を自前で用意しなければならないのか丁寧に説明してくれます。
なので、FIRE関係なしに本を一通り読むだけで基礎的なライフプランニングのおさらいにもなり、税や保険について知識が補強できます。
この普通のサラリーマンが得られる収入や各種手当を100%として、FIREを目指す場合はこれが80や70、ヘタをすると60にまで下がることとなり、それがどれほどの金銭的な負担としてのしかかるのかという話は非常に勉強になりました。
この本は、FIREとは結局のところ普通の人が歩む道のりを強引にショートカットする手段であり、この強引なショートカットによってその後の人生にこれほど歪みが生じますよと警告を発してくれるため、FIREに対して浮かれた気分を静めてくれる作用もあります。
FIREの達成にはこれほどの障害が山のように立ちはだかるということを把握でき、FIREを目指す場合も諦める場合も両方ともに学びが多く、読んで損はありません。
あくまで一歩引いたFPのアドバイス
この本は、タイトルに“FIRE超入門”とありますが良くも悪くもFIREを目指している当事者ではなく、あくまで一歩引いたFP(ファイナンシャル・プランナー)がFIREを目指す人に対してアドバイスをするというスタンスなため、実体験が乏しくFIREに対する熱量も極めて低いです。
どちらかというとこの本を読んでFIREを目指す人より無理だと諦める人のほうが多そうです
なので、FIREの理念に賛同して積極的に勧めるというよりは、あくまでライフプランニングの一環としてこのような極端な生き方もあるよと紹介する感じで、読んだからといってFIREに対する意識の変化は起こりません。
あくまでFIREの良い面だけ強調する本に対して、現実的なFIREの厳しさを知るために読む一冊であり、FIREの考えを深く理解するために読む本では決してありません。
FIRE達成者の具体的な実体験が知りたい場合は読んでもムダです
最後に
この本を読むと「どこが“普通の会社員でもできる”んだよ」とツッコミたくなるほど過酷な現実を突きつけられるため、FIREの幻想に対する酔いを醒ます効果は絶大でした。
正直、読んでいて楽しい類の本ではありませんが、金銭面の問題はFIRE達成を目指す上では絶対に避けて通れない問題であり、どこかの段階で目を通す必要がある一冊です。
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