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【スーファミ】デカダンを追求したFF |『ファイナルファンタジー6 / FF6』| レビュー 感想 評価

プレイ動画

評価:90/100
作品情報
ジャンル RPG
発売日(日本国内) 1994年10月11日
開発(デベロッパー) スクウェア

ゲームの概要

 
このゲームは、スーパーファミコン世代のFFシリーズとしては4、5に次ぐ3作目(スーファミ最後のFF)です。
 
6は、パーティが常に固定で完全な一本道である4、5と比べ、世界崩壊後(ゲーム後半)は、ほぼプレイヤーが自由に行動可能な作りになっており、FFシリーズの中でも自由度が高めなのが特徴です。
 

その分、メインストーリーはほぼ前半のみに集中しており後半は各キャラのサイドストーリーを拾う程度でラストの盛り上がりは控え目です

 
戦闘バランスは非常に大味で作業感が強く難易度も低いため、ジョブやアビリティといった尖った特徴を持つ5に比べバトルは大幅に見劣りします。
 
ただ、スーファミ世代のFFとしては最高の音楽・美術の美しさを誇り、キャラクターの魅力もスーファミ世代のFFの中ではダントツ。セリスのオペラや世界崩壊とイベント演出のセンスの良さもスーファミのRPGの中でも群を抜いて印象的と、全体のゲーム性が優れているというより一部のイベントが強烈に記憶に残る作品です。
 

悲恋、絶望、死、破滅、世界崩壊・・・デカダンの美を追い求めしFF

 
6の最大の魅力はなんと言っても全編に渡り徹底されているデカダン(退廃的)な美意識です。
 
人造魔導士に改造され心が壊れ虚無に落ちるケフカや、人間と幻獣の禁断の愛の結果誕生した人と幻獣の混血児であるティナ。戦争から帰還せぬ想い人への愛を胸に仕舞い込んだまま望まぬ相手と結婚する女性の心情を登場人物の一人であるセリスに重ねる哀しきオペラ。無情にも大地を引き裂き死と絶望が蔓延し人々が希望を失う世界崩壊のイベントと、これでもかと死、悲恋、絶望がゲーム全体に散りばめられており、デカダンな美を好む人間には最良のRPGの一つです。
 
6はゲームの中盤で世界が崩壊し、緑豊かだったワールドマップは大地が死に灰色の物悲しい景色へと変貌しますが、BGMの荘厳さ相まって退廃的な美しさなら他のRPGなど軽く凌駕する強烈な存在感を放っています。
 

これに匹敵するのは『ヴァルキリープロファイル』(の一作目のみ)や『ベイグラントストーリー』など数えるほどしかありません

 
これら退廃的な美は、たとえ人類が絶滅寸前まで追い込まれても決して諦めずそこから希望を求めて再び立ち上がっていくというゲーム終盤の展開への布石でもあり、物語的にもきちんと意味があります。
 

絶望を極限まで描き抜くことで最後の希望を一段と輝かせるという役目があります

 
この世界崩壊のイベントによって見知った世界が一瞬にして死の大地と化すという衝撃は、地底や月といった未知の場所を探検する4や、第1世界、第2世界、第3世界と次から次に世界が移り変わる5と比べても遙かにインパクトがあり、スーファミ世代最後のFFに相応しい圧巻の出来でした。
 

このゲームに子供の頃に出会った結果、死や退廃、破滅といったデカダン的なものに強く惹かれる感性が養われました

薄味のメインストーリー

 
今作はメインストーリーが薄味で、ラスボス周りの盛り上がりは4や5に劣ります。
 
なぜかと言うと、世界崩壊の後(ゲームの後半部)は、プレイヤーが自由に攻略可能な作りになっており、メインストーリー自体は前半で終わっているためです。
 
ゲーム後半部はバラバラになった仲間たちを求めて荒廃した世界を探し歩きますが、少し進め飛空艇を入手さえしてしまえば、仲間を全員集めなくても早々にラスボスがいるダンジョンに挑むことが可能となります。
 
この、仲間を集めて回るのも良し、世界中を飛空艇で飛び回り強力な武器や魔石(幻獣)を求めるもよし、早々にラスボスに挑むのも良しというプレイの自由さを確保するため、ストーリーは前半のみで終わっており、後半部はそれ以上話が深まりません。
 
ただ、物語的にはやや不満が残るものの、ゲームとしては自由行動が可能なためただの一本道の前半より後半のほうが圧倒的に楽しさは勝ります。
 

スーファミの3作の中でもゲーム後半の自由度の高さなら6が最も優れており、4や5より伸び伸びプレイ可能です

 
前作の5も、終盤は封印された武器を解放しても良し、強力な魔法や召喚獣を探しても良し、ラスボスのエクスデスに挑んでも良しという行動の自由がありましたが、6は5よりさらに早い段階で自由行動が可能となり、より束縛がありません。
 
そのため、多少ストーリーはあっさりしているものの、ゲームとしての面白さを優先した結果なので致し方ないと理解はできます。
 
それでも、ラスボスであるケフカの過去を世界崩壊後の各地に散りばめ、それをプレイヤーに発見させることでケフカがどうして神になろうとしたのかその背景を語るくらいの工夫は欲しかったというのが正直な感想です。
 
久しぶりに6をクリアすると、やはり7のラスボスであるセフィロスの描き方は6をより洗練させたものであり、セフィロスくらい行動の動機が強固なほうがラストバトルがより盛り上がるため、6はラスボスの扱いがまだまだ発展途上で弱いなと感じてしまいます。
 

星を滅ぼす存在であると同時に実は被害者でもあるという点がケフカとセフィロスは共通しており、セフィロスのほうがラスボスとしての存在感が圧倒的に上です

 
それと、悲劇の元凶であるガストラ皇帝がなぜそこまで幻獣の力を求めるのかという動機の描かれ方が極端に弱く、こちらのほうが問題な気もします。
 

前半の終わりにガストラがいかにも己の悪行を改心したように見えるのに実は改心していなかったという流れが非常に不自然で、ガストラ関連の話はモヤモヤが残ります

 
ただ、7のセフィロス→ケフカの発展型、神羅しんらカンパニー→ガストラ帝国の発展型と、実は7は6で弱かった箇所を大幅に補強するような作りとなっており、6の中途半端さが7の傑作シナリオを生み出したのだと考えるとこれはこれで良かったのかなとも思えます。
 
今回再プレイして改めて気付いたのは、実は7って6とストーリーや設定がほぼ同じということです。
 
主人公は過去の記憶が失われた強力な元兵士(6のティナは元ガストラ帝国の魔導士、7のクラウドは元神羅の兵士)、過去に最愛の人を失ったヒロイン(6は主役がティナなのでロック、7はエアリス)、未知の生命体を研究し生み出された人造兵士(6は幻獣から生み出された魔導士、7はジェノバ細胞から生み出されたソルジャー)、世界征服を目論む組織に立ち向かうレジスタンス(6はガストラ帝国と闘うリターナー、7は神羅カンパニーと闘うアバランチ)、などなど、どれもこれも似た設定ばかりで、7は6を土台として再構築したものなのだと分かります。
 

各キャラクターの個性を強化する専用コマンド

 
6のバトルで良かった点は、各キャラクターの専用コマンドの一部がRPG以外のジャンルの操作を取り入れていることです。
 
武闘家であるマッシュの“ひっさつわざ”は格闘ゲームのように素早く正確にコマンドを入力する練習が必要なことや、ギャンブラーであるセッツァーのスロットはルーレットの目押しのテクニックを求められるなど、バトルにRPG以外のゲームジャンル要素を加える工夫がされている点は非常に好印象でした。
 

 
特に、マッシュの“ひっさつわざ”は、RPGなのに一人だけ戦闘中に格ゲーのコマンド入力を求められることで武闘家としてのキャラをより立たせることに成功しており、これのおかげでマッシュはFFシリーズの中でも屈指の存在感があります。
 

子供の頃は“ばくれつけん”のコマンドをゆっくり入力するというルールが分からず高速で入力していたためイベント戦闘がクリアできず、序盤で詰んだ経験があります。今ではそれも良い思い出です

 
このように、あえてRPGの中に格ゲーのようなコマンド入力を混ぜることで、格ゲーというジャンルの特性を借りそのキャラの個性をより伸ばすという工夫は今プレイしても新鮮でした。
 

大味すぎる戦闘のバランス調整

 
バトルは専用コマンドに特殊な操作を混ぜることでキャラの個性をより強化しているという長所もありますが、実際にプレイしているとテンポの悪さやバランス調整が大味といった短所が目立ちます。
 
まず、6のバトルで最初に気になるのはテンポの悪さです。各キャラクターの専用コマンドの演出が長いとか、魔法の発動ごとに長いアニメーションを見させられるなど、明らかに4や5に比べバトルのテンポが著しく悪化しています。
 
特に魔法のエフェクトアニメーションが長ったらしく、フレアやホーリー、メテオなどは一発撃つ事に時間がかかり過ぎて使用することそのものがストレスです。
 

FFシリーズの、リアルタイム戦闘の割にバトルテンポが悪いというイメージは6から始まっていると思います

 
さらにバトルテンポの悪さより深刻なのは、バランス調整が大味という問題です。これのせいで後半はほぼ“たたかう”コマンドを連打するだけの作業にしかならないという以外にも、バトルだけでなく成長システムである幻獣(召喚獣)の存在感も薄れています。
 
今作の成長要素は、幻獣を装備すると幻獣に付随する魔法を覚えられることと、キャラがレベルアップする際に装備する幻獣によってステータス上昇にボーナスが加算されるという二つです。
 

例えば、雷属性の幻獣を装備しているとサンダー系の魔法が覚えられるといった感じです

 
しかし、戦闘のバランス調整があまりに雑なせいで魔法の約6~7割は1回たりとも使用しないようなあってもなくても大差ないものが大半です。そのせいで、魔法を覚えるという行為が喜びというよりただ空いている魔法の枠を埋めるだけの作業でしかなく、新しい魔法を覚える行為に感動も達成感も何もありません。
 
レベルアップ時に幻獣に応じてステータス上昇ボーナスが加算される点は目に見えて攻撃力や魔法の威力、HP・MPが上昇していくため確かに快感ではあります。
 
ただし、今作は4、5と比べると非常に低難易度なため、今度はあまりステータスを上げすぎるとボスがザコと化してしまうという問題が生じます。
 
過去作の4、5は常に固定メンバーなので経験値は常に一定でレベルを上げようとすると膨大な時間がかかります。しかし、6はパーティの人数を少なくすると一人当たりの経験値を増やせるためレベル上げが非常に簡単に行える調整です。
 

一人に経験値を集中させ極端にレベルを上げてしまうとそれだけで戦闘バランスが崩れるほど強くなります

 
そのため、レベル上げに夢中になるとあっという間にボスの強さを超えてしまいゲームバランスがいとも簡単に崩壊します。
 
6には、バニシュという姿を隠し物理攻撃を回避する魔法をあえて敵に使いその後にデスを使うとどんな強敵でも一撃で倒せるという裏技もありますが、そんなものを使わずとも楽々にクリアできます。
 

今作を最後までギリギリの難易度で楽しみたい場合はレベルアップの誘惑を断ち切りプレイヤーが自分でレベルをコントロールしないとあっけなくバランス崩壊を起こします

 
そのため、高難易度で非常に歯応えがあった4や5に比べ6はバトルが“たたかう”コマンドの連打になりやすく、戦闘の作業感はスーファミの3作の中でもトップでした。
 
逆に言うと、レベルアップもステータス上昇も簡単でラスボスも楽に倒せてしまうため苦労もせずラクチンにクリア可能です。
 

高難易度が苦手な人には優しいゲームになっています

 
幻獣を装備することで得られるステータス上昇ボーナスを狙うため、常にキャラクターがあとどれくらいの経験値でレベルが上がるのかチェックし続ける必要があり、これのおかげで緊張感が持続し退屈に感じることはありませんが、戦闘のバランス調整はもう少しどうにかならなかったのかという不満は残ります。
 

あまりにも仲間の数を増やしすぎて繊細な調整を放棄した印象を受けます

最強の武器がただの通路に放置

 
今作は前述した通り、ゲームの後半部のかなり早い段階から飛空艇で世界中どこへでも自由に移動が可能で、はぐれてしまった仲間集めもダンジョン攻略も強力な武器や魔石(幻獣)探しも好きな順番で行えます。
 

レベルが簡単に上がるため、現状難しいダンジョンであっても即レベルを上げて挑めてしまいます

 
これは前作の5ではラスボスの手前からようやく可能となるため、6のほうが自由度が圧倒的に高く、そこも今作の魅力の一つです。
 
ただ、5は世界各地に存在する石版を集めることで封印された武器や魔法、召喚獣を解放するという流れだったのに、6は割とそこらのダンジョンに最強の武器や強力な魔石(幻獣)が雑に配置されており、仲間集めをしていると勝手に集まっていく感じで5に比べると適当だなという印象を受けます。
 
特に、ダンジョン内のただの通路に設置されている宝箱に最強の武器が入っているケースが多く、これはもう少しどうにかならなかったのかと不満でした。せめてダンジョンの最深部にあるとか、イベント戦闘の後で入手できるといった形にしてくれたほうが手に入れた際の達成感があり、これだと気付いたら最強の武器を所持しており、どこで入手したのかは忘れたという事態が頻発します。
 
飛空艇さえ入手すればその後は全てプレイヤーの判断に委ねるという今作の自由度の高さは非常に魅力的ですが、世界中を探索する際の動機付けのアイデアは5のほうが圧倒的に優れており、そこはもう少し工夫が欲しかったという不満がありました。
 

5はまず封印されたバハムートが復活するというイベントを見せてからバハムートに挑ませるような丁寧な作りですが、今作は最初からあちこちのダンジョンに適当に武器や魔石(幻獣)が分散・配置されているだけで手に入れた際の感動がありません

おわりに

 
クリアまで約28時間ほど。これは全ての仲間を集め、ダンジョンも一通り回った際のクリア時間です。ゲーム後半からは完全な自由行動となりいつでもラスボスに挑める上に、難易度が非常に低いため早くクリアしようと思えばいくらでもプレイ時間の短縮が可能なため、今作に限ってはあまりクリア時間に意味はありません。
 
バトルは、テンポが悪い上にバランス調整があまりに大味で5より魅力が後退しています。それに、プレイの自由度を優先した結果メインストーリーが薄くラストバトルの盛り上がりが欠けるなど、数々の問題を抱え手放しで褒められるような出来ではありません。
 
しかし、それら不満を遙かに上回るほどオペラや世界崩壊と言った一部のイベントから受ける感動や衝撃が圧巻で、かつデカダンな美を追求するスタンスを心地良いと思えばFFシリーズの中でも最高傑作になり得るポテンシャルを持った一作です。
 
ゲーム性は正直凡庸でそれほど特筆するものはありませんが、植松伸夫のFFシリーズ最高といっても過言ではない絶望と希望を表現する物悲しくも荘厳な音楽と、スーファミの全RPGの中でも頭一つ飛び抜けたセリスのオペライベントの美しさ、世界が崩壊し一面が死の大地と化すという忘れられない衝撃展開、そして大切な人との別れを経験しどこか影があるキャラクターたちが織りなす壮大な物語と、好きな人はとことん好きになれるそんな名作中の名作です。
 

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